すでに、前出の藤永氏は、堺市が誘致したシャープの工場に、府と堺市が一般会計から約730億円の補助金を支出しているのは違法支出だとして、大阪府知事や橋下氏の府知事時代の元部下で、堺市長に転じた竹山修身現市長を相手取り、住民訴訟を起こし、高裁で審理継続中だという。

 いずれにせよ、「WTC問題」は、“橋下府政”ひいては、橋下的政治手法の暗部をも示すことになりそうだ。

 政治部記者が言う。

「WTC問題がもたらしたものは、橋下・大阪府が防災拠点として、まったくふさわしからぬ幽霊ビルに85億円を投じたというムダ金のみではない。橋下氏と議会の軋轢を生んだ発端でもあり、また、WTCへの府庁舎移転に賛成する一部府議が、自民党を離れて現在の『大阪維新の会』結成にもつながった。つまり、先日のW選挙で誕生した、橋下独裁による『維新大阪政権』誕生のきっかけとなったわけです」

 藤永氏とともに監査請求の呼びかけ人となっている在阪のジャーナリスト、西谷文和氏も厳しい意見だ。

「府議会で2回も否決されたにもかかわらず、橋下さんはWTCの移転にこだわった。普通の知事さんだったら、継続審議にしていたはず。そうであれば、3・11の震災で使い物にならないことが判明して、こんなムダ金を使う結果になっていなかったはず。府と市の2重行政解消なんて言って選挙に勝ちましたが、2重庁舎でムダ金をタレ流しているんですから、ヘタなシャレにもならないですよ」

 橋下府政最大の失敗と称されるWTC問題。「都構想」で“夢”を語るのはいいが、現実世界での問題処理は、得意の“橋下話術”のはぐらかしでは済まされそうもない‥‥。