■ 第4節

セリエAの第4節。55年ぶりにセリエAに復帰したノヴァラがホームでインテルと対戦。ともに1敗1分けのスタートで今シーズン初勝利を目指す。ノヴァラは、2節、3節はアウェーゲームだったので、ホーム開幕戦となる。

ノヴァラは「4-3-2-1」。GKウイカニ。DFデラフィオーレ、リズッツォ、パチ、ジェミティ。MFラドヴァノヴィッチ、ポルカリ、リゴーニ。FW森本貴幸、マッツァラーニ、マッジョーニ。FW森本は2試合連続スタメン。FWマッジョーニが復帰して、FWジェダはベンチスタートとなった。

一方のインテルは「3-4-3」。GKジュリオ・セザル。DFルシオ、ラノッキア、キヴ。MFスナイデル、カンビアッソ、サネッティ、長友佑都。FWカステグノス、ミリート、フォルラン。昨シーズンまでフェイエノールトでプレーしていたオランダ人のFWカステグノスが初スタメン。イタリア代表のFWパッツィーニはベンチスタートとなった。

■ 歴史的な勝利!!!

試合は、大方の予想に反して、ホームのノヴァラが優勢となる。立ち上がりから動きの鈍いインテルに対して、立て続けにビッグチャンスを作る。インテルはGKジュリオ・セザルの体を張ったプレーに救われるが、攻撃ではなかなか糸口を見つけられない。

すると、前半38分にホームのノヴァラが先制に成功する。バイタルエリアでFW森本がボールを受けてドリブルで仕掛けようとするが、MFカンビアッソにブロックされてしまう。しかし、味方がうまくフォローして、左サイドに待っていたFWマッツァラーニにボールが渡ると、FWマッツァラーニがファーサイドのFW森本の動きを見ながら、中に入ってきたFWマッジョーニにラストパス。これをFWマッジョーニが左足で決めて先制。1対0とノヴァラがリードして前半を折り返す。

後半開始から、インテルはFWフォルランとFWカステグノスを下げて、FWパッツィーニとMFオビを投入。MF長友のポジションを左サイドから右サイドに変更になる。すると、少しリズムが出てきて、後半の立ち上がりはインテルが攻め込んでいく。

しかし、インテルは、後半15分あたりを過ぎると、また攻撃が停滞してくる。試合は1対0でノヴァラがリードしたままで進んでいくが、後半40分にFW森本がビッグプレーを見せる。DFパチのミドルパスを半身の体制で受けると、DFラノッキアを体でブロックしながらペナルティエリアに侵入。シュート体勢を作ると、DFラノッキアが後ろからFW森本を倒してPK獲得。このプレーでDFラノッキアは退場となってインテルは10人になるとともに、そのPKをノヴァラのMFリゴーニが決めて、2対0とリードを広げる。

インテルは後半44分に右サイドのMF長友のクロスが、ノヴァラのDFジョルジのクリアミスを誘って、最後は、フリーになっていたMFカンビアッソが左足で決めて1点差に追い上げるが、後半のロスタイムにノヴァラがダメ押しゴールを奪う。

右サイドでボール受けたFW森本が、右サイドでキープして時間を稼ぐと見せかけて、鮮やかなステップからMFオビをかわして、DFジョルジにラストパスを送る。DFジョルジのシュートはGKジュリオ・セザルが防ぐが、ゴール正面にこぼれたところをMFリゴーニが押し込んで、ノヴァラは決定的な3点目を挙げる。結局、FW森本はノヴァラの3ゴール全てに絡む大活躍を見せて、ノヴァラが3対1で勝利。実に55年ぶりとなるセリエAでの勝利となった。

■ FW森本 55年ぶりの勝利に大貢献

ノヴァラは、前節、アウェーでカリアリに1対2で敗れたが、後半の内容は悪くなかったので、期待感を持たせたままでホーム開幕戦を迎えたが、まさか、まさかで世界王者のインテルを下して、55年ぶりのセリエAでの勝利を飾った。2シーズン前までは「3部リーグ」に所属していたスモールクラブにとって、歴史的な試合となった。

先制ゴールを挙げたエースのFWマッジョーニ、2ゴールを挙げたMFリゴーニの活躍も見事だったが、この試合は、何といっても、FW森本の活躍が光った。前半は「4-3-2-1」の「2」の部分でプレーし、フォワードとも、中盤ともいえるポジションを任されて、先制ゴールのきっかけを作ると、後半17分にトップのFWマッジョーニが下がってからは、最前線でプレー。確実なポストプレーで前線の起点になるとともに、2つのゴールを生み出した。

ゴールシーン以外でも、アイディア溢れるポストワークで、たびたび、シュートチャンスを作っており、この試合のMOMに選ばれても不思議ではない大活躍だった。初戦でアシスト、2戦目でゴールをマークし、順調なスタートを切ったFW森本にとっては、周囲に大きなインパクトを残す試合であり、セリエAでは自身6シーズン目となるが、「セリエAでのベストゲームの1つ」といえるだろう。

■ 最高の滑り出しとなったFW森本

FW森本はカターニャで5シーズンプレーし、それなりの実績を残していたが、最後の方は、チーム内にアルゼンチン人が多くなりすぎたこともあって、冷遇された。試合で起用されたときのFW森本のパフォーマンスも、あまりすぐれたものではなかったので仕方がないが、ちょっと気の毒な状況だった。したがって、心機一転で昇格クラブのノヴァラに移籍してきたが、ここまでは最高のスタートになっている。

この試合限りで、インテルのガスペリーニ監督は解任されると思われるが、このことは、イタリア国内でも、大きく報道されるだろう。そして、同時に、ガスペリーニ監督を追いやったFW森本の活躍も大きく報道されるはずで、イタリア中に「MORIMOTO」の名前をアピールすることができるだろう。昇格チームのフォワードで結果を残すことは簡単なことではないが、今年こそ期待に応えてくれそうな感じはする。

■ MF長友はゴールに絡むも・・・

意外にも、セリエAでは、2004年の「中田英寿 vs 柳沢敦の対決」以来だったということで、実に7年ぶりとなる「日本人ダービー」となったが、FW森本が試合の主役となって、MF長友は脇役にとどまった。

ただ、MF長友の出来は決して悪いものではなかった。前半は左サイドでプレーし、後半は右サイドでプレーしたが、後半開始早々にはドリブルから切れ込んで惜しいシュートを放ち、後半44分のMFカンビアッソのゴールの起点にもなった。完全に崩壊してしまったチームの中では「光るプレー」を見せた選手の一人といえるが、さすがにMF長友だけの力では、どうしようもなかった。

仮に、次の試合からインテルの指揮官が変わった場合、ガスペリーニ監督の下では、MF長友は怪我から戻ってきてからは、ずっとスタメンで出場していたので、「ガスペリーニ・カラー」を一掃するために、スタメンから外れる可能性も否定できない。ただ、4バックに戻った場合、DFマイコンを除くと、インテルにDF長友以上のサイドバックはいないので、出場機会が減ることは考えにくい。

■ ガスペリーニ監督は解任か?

これで、インテルは3試合を終えて0勝2敗1分け。CLの初戦でもホームで格下のトラブゾンスポルに敗れている。アウェーゲームとはいえ、昇格してきたばかりのノヴァラに1対3で完敗となっては、ガスペリーニ監督が解任されても仕方がない。

レオナルド監督に代わって、今シーズンからインテルを率いているガスペリーニ監督は、新たに「3-4-3」を採用し、チームを大きく変えようとしたが、ここまで結果を出ないとは、ちょっと想像できなかった。「3-4-3」という機能させるには簡単ではないシステムを採用したのであれば、じっくりと腰を据えて、「これだ。」と思ったイレブンで、数試合程度は固定して戦ってもよかったが、4バックにしたり、「3-5-2」にしたりと、試合ごとにいじってしまって、チームはさらに混乱した。

一番の問題は、前線の「3枚」のところである。中央は、秘蔵っ子のFWミリートで固定し、FWフォルラン、FWスナイデル、FWサラテ、FWカステグノスらを「左右」で起用してきたが、誰一人として、しっくりこなかった。プレースタイルを考えると、FWサラテがベターだと思うが、典型的なストライカーであるFWフォルランやFWパッツィーニに対して、どういう役割を与えていたのかもはっきりせず、FWスナイデルは「3」の位置で起用されたときは、自由に動き回っていたので、「3トップ」ではなくなっていた。

FWフォルラン、FWパッツィーニ、MFスナイデルと、得点源になるべき選手にふさわしいポジションを与えることができず、攻撃も守備も機能しておらず、結果も最悪となると、監督交代も仕方がないだろう。