3.11、東京に大量発生した“帰宅難民”。首都圏直下地震では、新たな“難民”が出現する

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 7月22日、内閣府が更新した「避難所生活者・避難所の推移」によると、震災発生から4ヶ月経過した時点での避難所生活者は約5万9千人。40万人近かった発生1週間後のピーク時からみれば約7分の1まで減少したものの、いまだ多くの人たちが不自由な生活を強いられている。

 加えて、去る7月11日には政府の地震調査委員会が、東日本大震災の影響により神奈川県の三浦半島北部の「三浦半島断層群」で地震発生率が高まったと発表。大震災後の地殻変動で活断層帯に新たな力が加わったためであり、これにより首都直下地震の発生の可能性が上昇したと考えられる。

 もし今、首都直下地震が発生したら東京はどうなってしまうのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は、首都直下地震と東日本大震災ではまるで状況が違うとしてこう話す。

「これだけ人口が密集している首都は世界的に見ても珍しい。そんな東京で大地震が起きれば最も大きな被害をもたらすことになるのは建物倒壊ではなく火災です」

 内閣府の中央防災会議が平成17年に発表した「首都直下地震対策専門調査会報告」でも、想定される死者1万1千人のうち、6200人が火災によるものとしている。和田氏は続ける。

「環6(山手通り)、環7の周辺はドーナツ状に木造住宅が密集していて、火災も集中的に起きるエリア。これは“炎の壁”ができるのではないでしょうか。東の荒川周辺も同様です。関東大震災のとき、上昇気流が発生して、炎がくっつき、どんどん大きくなっていくという、いわゆる“火災合流”と呼ばれる現象が起きた」

 さらに、高層ビルが立ち並ぶ首都圏では、東日本大震災では見られない避難民が発生する可能性があると指摘するのは、『高層難民』の著者で、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏だ。

「東京都の被害想定では、電力の復旧まで1週間とされています。当然、エレベーターも動かない。地震発生直後の、行政の水や食料の配給はすべて地上で行なわれるわけです。高層の住人に物資を届けることはない。そうすると住人は自ら1階におりなければならないが、地上で配給を受け取り、また階段で高層まで上がるというのは現実的に無理でしょう。そういう状況下で高層マンションに住む人は行き場を失う」

 耐震・免震構造により大きな被害は無くとも、部屋に戻れず避難所生活に。そんな“高層難民”の数は「数十万人という単位になるはずです」(渡辺氏)という。

(取材/頓所直人、鈴木英介、撮影/井上賀津也)