■ グループB

UEFAチャンピオンズリーグのグループリーグの第5節。ドイツのシャルケとフランスのリヨンの対戦。グループBは、シャルケ、リヨン、ベンフィカ、ハポエル・テルアビブの4チームが入っていて、シャルケは2勝1敗1分けで勝ち点「7」。第1節でリヨンと対戦した時は、アウェーで0対1で敗れている。リヨンは3勝1敗で勝ち点「9」で首位に立っている。

ホームのシャルケは<4-2-2-2>。GKノイアー。DF内田、メツェルダー、ヘヴェデス、シュミッツ。MFクルゲ、ジョーンズ、ファルファン、フラド。FWラウル・ゴンサレス、ヤン・フンテラール。FWラウルはブンデスリーガの第13節のブレーメン戦でハットトリックを記録している。

■ シャルケが快勝

試合は立ち上がりからシャルケペースで進むと、前半13分に右サイドでボールを奪って中央にクロス。FWラウルが受けてドリブルで突破しようと試みると、相手に止められるが、上手い具合にMFファルファンのところにこぼれてきて、MEファルファンが左足でゲット。シャルケが先制する。さらに前半20分にもカウンター。MFフラド→MFクルゲとつないでMFクルゲが中央へクロス。これをFWラウルがスルーして裏でフリーのFWフンテラールが決めて2対0とリードを広げる。前半はそのまま2対0で終了。

後半は両チームともにスローダウン。リヨンはフランス代表のMFグルキュフが負傷退場するアクシデントも発生し、リズムに乗り切れないまま試合が進んでいく。そして、後半44分にシャルケが右DF内田がスピードに乗ったドリブルから高精度のアーリークロスを入れると、ボールを受けたFWフンテラールが落ち着いてDFを外してからゴール。3対0とリードを広げる。DF内田はアシストを記録。

結局、3対0でシャルケが快勝。3勝1敗1分けとなってグループ2位以内が決定し、決勝トーナメント進出を決めた。一方のリヨンは3連勝のあと2連敗。ベンフィカと最後のイスをかけて最終節に臨むことになった。

■ シャルケがグループ突破

1位通過か、2位通過か決まっていないが、シャルケの2位以内が決定し、決勝トーナメント進出が決定した。大本命といえるチームが入っていないという組み合わせに恵まれた感もあるが、ブンデスリーガでは3勝6敗4分けで15位と低迷しているチームとは思えないほど、あっさりと最終節を待たずに突破を決めることができた。

ブンデスリーガでは開幕4連敗スタートと最悪の出足となったシャルケであるが、ここ最近は調子を上げてきており、11節でザンクトパウリに3対0で勝利し、12節はヴォルフスブルクと対戦して2対2のドローに終わったが、13節はブレーメンに4対0で勝利。そして、リヨンにも3対0で勝利と、攻守に充実してきた。

■ 調子を上げてきたラウル

中でもシャルケにとってはFWラウルの調子が上がってきたのが好材料で、この日はゴールこそなかったが、全盛期を思い出されるようなプレーを連発した。

シャルケは前線にFWフンテラールがいて、FWラウルが下がり目に位置する。中盤にはスペイン人のMFフラドがいて、彼が試合をコントロールできればいいが、この日もミスが多く、なかなか試合を落ちつけられなかった。ボランチにも展開力のある選手はおらず、ゲームを作れる選手がいないのが開幕からシャルケの悩みの種になっているが、FWラウルが調子を上げてきて、1.5列目的なポジションでFWラウルがボールを受けてキープしてくれるようになったので、FWラウルを起点にチャンスが出来るようになってきている。

FWフンテラールとのコンビも熟成されてきていて、2点目のコンビネーションは見事なものであり、FWラウルが味方を生かしつつ、自分も生きるようになってきた。

■ レギュラー定着の内田篤人

すっかりレギュラーポジションを確保したDF内田はこの試合も先発フル出場。ブラジル代表のMFミシェル・バストスとマッチアップするケースが多く、リヨンはDF内田のいるサイドから攻めてくるケースが多かったが、無難に対応していて、チャンスを作らせなかった。シャルケの右サイドのポジションはDF内田が怪我で出遅れていたこともあって鬼門のポジションになっていたが、完全にレギュラーポジションをつかんだといえる。

当初はセンターバックとの連携がまずくて、サイドを崩されるシーンも多く、安易にオーバーラップ出来ない状況であったが、この試合では裏のスペースもセンターバックがケアしてくれていたので、上がって行っても裏を突かれる心配はなかった。

■ スーパーアシスト

2対0で前半を終えて、後半はあまり攻め込む必要がなかったので、そのまま2対0で終えるかと思われた後半終了間際に右サイドを上がったDF内田が高速のクロスを入れて、FWフンテラールのゴールをアシスト。「ここしかない。」というコースに「これしかない。」というスピードのクロスボールで、最高級のクロスだった。

DF内田は鹿島時代からサイドバックとしては非常にテクニックのあるタイプであり、周りも見れる選手なので、アーリークロスが1つの武器である。同じ日本代表のDF駒野がいろいろな質のクロスを蹴れるのに対して、DF内田はクロスのパターンが少なくて、このあたりが今後の課題になると思われるが、この試合では、得意分野のアーリークロスでアシストを決めた。

右サイドはペルー代表のMFフォルランと組んでいるが、DF内田はビルドアップでミスが少ないので、かなり信頼関係も生まれており、簡単にDF内田を使って自らが走り出すというシーンも増えてきている。シャルケというチーム自体の調子も上がってきているので、今後もプレーが楽しみである。

■ 不思議な感じ

これでシャルケは決勝トーナメントに進出が決定したが、チャンピオンズリーグに出場しているクラブで日本人選手がレギュラーでプレーしているというのは、まだ不思議な感じもする。チャンピオンズリーグに出場しているクラブは、それこそ、世界中から有力選手を獲得できるだけの資金を持つが、その中でDF内田がプレーしているというのは、本当に凄いことである。

開幕当初は怪我もあって出場機会に恵まれず、ライバルクラブですぐにポジションをつかんだMF香川と比較されてしまったが、DF内田も予想以上に早くチームに馴染んできた。高校から鹿島に入団した時も、高卒ながらすぐにポジションを確保したが、かなり適応能力の高い選手のように思える。





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