菅政権が発足し、世論調査では日経が68%、毎日が66%、読売が64%、朝日が60%と、満遍なく高い支持率が出ました。脱小沢の体制が評価されたのでしょうが、どうも違和感を感じざるを得ません。発足早々の菅総理の発言から、経済財政政策については非常に危ういと言わざるを得ないからです。

 菅総理は、“財政再建のための消費税増税”に前向きな発言を繰り返していますが、これを額面どおりに受け取ってはいけません。

 確かに日本の国と地方を合わせた累積債務は、GDP比約200%と先進国の中で最高水準、財政破綻したギリシャよりも悪い状態にあります。麻生・鳩山の大盤振る舞いの前ならば増税なしでの財政再建は可能でしたが、今や増税が不可避な状態にあるのは事実です。

 菅総理は、G7などの場を通じてギリシャの財政問題の深刻さを実感し、財政再建とそのための消費税増税に前向きになったようです。それが純粋に財政再建のためだけならば良いのですが、今の政府にはまだムダが山ほど残っていて、かつ民主党のバラマキ政策が修正されていないことを忘れてはいけないのではないでしょうか。それを放置したままでの安易な消費税増税は危険です。

 民主党がマニフェストに掲げたように、行政にはまだかなり多くのムダが残されています。政権は事業仕分けでそれを削減しようとしましたが、過去2 回の成果からも明らかなように、そうしたアプローチでは時間がかかるし成果も限定されると言わざるを得ません。マニフェストで約束した“行政のムダ削減による新規政策の財源捻出”は、初年度から実現できなかったのです。

 かつ、政権は密かに行政のムダを温存しようともしています。その典型例が公務員制度改革の関連で策定された公務員の「退職管理基本方針」です。これによると、役所の幹部クラスの年次の人で幹部ポストに就けなかった人のために“高級スタッフ職”的な専門職ポストを新設するようです。要は、今の政府は民間企業で言えば破綻状態なのに、民間では当たり前のリストラは行なわず、仕事がない人にも高い給料を払い続けようとしているのです。

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