写真/舩越園子(AT&Tのロゴ入りバッグは、もう見られない)

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日本の元旦に米ゴルフ界から飛び込んできたニュースは淋しいものだった。一連のスキャンダル騒動の渦中にいるタイガー・ウッズとのスポンサー契約を解消するとAT&Tが現地時間の12月31日に発表したのである。

思えば、09年の夏、タイガーはAT&Tナショナルで大会ホストでありながら優勝。表彰式では「優勝者にインタビューを行うホスト」役と「ホストからインタビューされる優勝者」役の両方を1人で担い、表彰台の前で忙しそうに文字通りの「1人2役」を演じてみせた。ちょっぴりおどけながらのタイガーのあのときの姿が懐かしい。

タイガーとの契約は解消したが、AT&Tは同大会へのスポンサードは少なくとも米PGAツアーとの契約期間である2014年までは引き続き行なうとのこと。しかし、タイガーは大会ホスト役からは降りることになり、同大会が「タイガーのトーナメント」と呼ばれることもなくなってしまった。

AT&Tはタイガーが毎年、ラスベガスで開催していた「タイガー・ジャム」という名のチャリティコンサートもスポンサードしていたが、AT&Tのスポークスマンによれば、こちらの契約は「ちょうど」切れたとのことで、このコンサートも今年からは姿を消す。

タイガーの黒いゴルフバッグに付されているロゴマークは08年までは「Buick」だった。しかし、08年終盤、GM社ビュイック部門が不況による業績不振でタイガーとの契約を期間満了を待たずして解消。それゆえ、タイガーのバッグのログは09年からは「AT&T」になっていた。今年、タイガーがどのタイミングでツアーへ復帰するのかは不明だが、復帰戦に臨む際、彼のゴルフバッグがノースポンサー状態の黒無地バッグになるであろうことは、ほぼ間違いない。

だが、スポンサー企業には申し訳ないが、王者タイガー・ウッズの存亡と米ゴルフ界の繁栄・存続を考えるとき、タイガーとスポンサー企業との契約問題はあくまでも二の次。たとえ、ノースポンサー状態であっても、ツアーに戻ってくることができれば、タイガーは復活できる。勝って勝って、最強ぶりを再び披露することができれば、賞金で稼げるし、スポンサードのオファーは再び起こる。

今は、スキャンダル騒動を冷却させ、必要な「けじめ」をつけて、再生への道を一刻も早く見出すことが先決。そういう意味では、これまでの既存の大手スポンサー企業とのある程度の決別は「けじめ」になり、そして再生への「方向転換」としてワークするとも言える。だから、またまたスポンサーが減ったと嘆くのではなく、これで出直しへの道を歩めるぐらいに眺めてもよいのではないだろうか。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)