ACLグループリーグの第4週、北京国安対鹿島アントラーズを、現地、北京の羊台スタジアムで観戦した。

 試合は見て得をした気分になれる上々の内容だった。何より相手の北京国安が良かった。その攻撃的で美しいサッカーは、まさに僕好みのスタイルで、1−0の勝利は順当な結果だと言える。

 しかし、敗れたとはいえ、鹿島のサッカーもなかなかどうして、捨てたものではなかった。偉そうに言えば、こちらも僕の尺度に照らせば大合格。十分に攻撃的で、それなりに美しかった。相手チームのレベルの高さ。マルキーニョスを欠いたアウェー戦だったことを踏まえれば、悲しむ必要はない。上々の結果と言うべきだろう。つまりこの一戦は、両者がピッチ上に鮮やかなデザインを描いた好試合と言えた。

 美しいと感じさせた一番の原因は、ピッチの横幅を上手に活用してい た点にある。ボールの散り方にも、必然、アクセントが利いていた。

 ピッチの大きさは105m×68m。ゴール裏以外の場所からは、縦長の長方形に見えるが、そうした観客目線に照らせば、ボールは右から左、あるいは左から右へと、縦長を形作る長方形のフレーミングに従うように移動していくことになる。だが、ボールの移動があまりにもそれに素直に収まりすぎると、サッカーは面白く見えない。意外性のない単調なサッカーに映る。

 つまり長方形の横幅を、巧みに活用すればするほどサッカーは面白く見える。長方形の枠内に、縦と横をいかに対比させるか。サッカーは、その方法論を競い合う競技といっても良い。少なくとも僕はそう思っている。

 スタンドから俯瞰で眺めれば、その方法論はデザイン性という言葉に置き換えることもできる。横幅をいっぱいに使い、相手の妨害をかわしながら、いかに優れたデザインを描くか。鮮やかなデザインを描くか。僕にとって、良いサッカーの定義と、それとは比例の関係にある。

 いま、欧州を中心とする世界のサッカーが、総じて面白く見える理由もそこにある。かつてより、それは飛躍的に進歩している。現在、佳境を迎えているチャンピオンズリーグもしかり。上位に残るチームのほとんどは、デザイン性の高い、横幅の活用に拘りのあるサッカーを見せている。この事実は、その方が効率的だという証明でもある。

 北京国安対鹿島戦のピッチ上には、欧州のチャンピオンズリーグにもデザイン性を見ることができたというわけだ。サッカーの方向性は、とても似通っていた。これがACLのスタンダードになれば、その将来は明るい思わせる模範的な試合だったといえる。

 鹿島と北京国安が所属するF組は、クルンタイバンク(タイ)とナムディン(ベトナム)を加えた4チームで争われているが、すでに2強2弱の構図が鮮明になっている。2弱のレベルの低さは目にあまる。ナムディンは鹿島にアウェーで0−6、クルンタイバンクに至っては、ホームで同じく鹿島に1−9で敗れている。ACLの権威を失墜させかねないひどいスコアだ。

 来季から、大会のレギュレーションが改正され、強豪同士の対戦がより多く組まれることになるとの話だが、主管のAFCには、この大会にUEFAの方法論を全面的に取り入れて欲しいものである。欧州のチャンピオンズリーグを陰で支えているのは、UEFAリーグランキング、UEFAチームランキング等の膨大なデータベースだ。UEFAに所属する欧州各国は、そのフェアな競争原理を背景に切磋琢磨している。チャンピオンズリーグに、威厳と格式が生まれる理由でもある。

 また、欧州のレベルが他の大陸より高い理由でもある。叫ばれて久しい、アジアのレベルアップのカギはここにあると思う。Jリーグのレベルアップのカギもまたしかり。北京国安対鹿島の一戦を見て、改めてそう思った次第である。