1月にオランダへ渡った本田圭佑<br>【photo by B.O.S.】

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■小さな町の小さなクラブ

 この1月、名古屋グランパスから、オランダリーグのVVVフェンロに移籍した本田圭祐。移籍直後から試合出場を重ねて、3月15日のフェイエノールト戦で、移籍後初ゴールも決めている。五輪代表はもちろん、フル代表候補のレフティーの試合を観にいくためにフェンロへと向かった。

 フェンロはオランダの首都アムステルダムからは列車で3時間あまりだが、ドイツのデュッセルドルフから列車で1時間あまりのドイツ国境近くにある小さな町だ。収容人数約6000人の小さなホームスタジアムまでは、駅から徒歩20分あまり。山間にある小さなスタジアムは、町の規模に似合ったかわいいスタジアムである。

 3月22日、NEC戦に先発出場した本田のポジションはセンターハーフ。日本的な言い方だとボランチということになるが、そのプレー範囲は驚くほど広い。ゲーム展開にあわせてDFラインに入ることもあれば、逆サイドへ走り、攻撃の起点になろうとするシーンもある。そして、コーナーキックなどのプレスキックも彼の仕事となる。

 フェンロは現在、下位に甘んじており、本田加入時から降格圏内を行ったりきたりで、脱出までには至っていない。欧州主要リーグの下位クラブの多くが、ロングボールを多様した“蹴る”サッカーが主体となることが多く、平山相太が在籍したヘラクレスも前線に平山一人を残し、DFラインからどっかんと平山目掛けてボールを蹴っていた。平山はたった一人で、相手DFと対峙し、ゴールを求めたれていたのだ。

 しかし、フェンロのサッカーは違っていた。

 「一応オランダなんで、それほど蹴るサッカーではなくて、繋ぐ意識もあるんですよ」と本田は話す。

 ただし意識は高くても精度は低い。この日も前線でボールを受けた選手が、パスで崩そうとする場面は多く見られたが、誰もいないスペースへパスを出したり、“敢えて”と思えるほど、密集地域でパスを通そうとしては、簡単にボールを失ってしまう場面は多い。シュート精度も低く、シュートを打っても枠を捉えるシーンは驚くほど少ない。シュートシーンでは観客は沸くけれど、ことごとくゴールを外し続けていた。

 前半は本田がボールを触るシーンも少なく、本田が1、2で抜け出そうとパス&ゴーを試みるが、パスはなかなか戻っては来ず、密集地へ出されたり、無謀なシュートで終わってしまう。

 11位のNECは、16位のフェンロに比べると組織で崩そうとしている意図が感じられるが、フェンロの攻撃は連動性が生まれるシーンは少ない。

 そんなフェンロに待望の先制ゴールが34分に生まれる。リンセンが放ったシュートが枠に飛び、GKが弾いたボールをフリーで受けた本田が押さえ気味のシュートでゴールネットを揺らす。前節の同点ゴールに続いての2戦連続ゴール。観客が日本人を見つけて、私に親指を立てて、笑顔を見せてくれた。