山瀬、松井の共存は実現するか<br>【photo by Kiminori SAWADA】

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 9月10日、日本代表は公式練習をクラーゲンフルト近郊のフェルドキルヘンの地元チームのスタジアムで行なった。練習最後のメニューではフルコートを使っての10対10(GKを除く)を実施。

[Aチーム]
DF:加地、中澤、闘莉王、駒野
MF:稲本、遠藤、中村俊、山瀬、松井
FW:巻

[Bチーム]
DF:橋本、今野、坪井、山岸
MF:中村憲、鈴木、羽生、田中、佐藤
FW:矢野

 4−2−3−1という、過去にあまり試したことのないフォーメーションで、山瀬を真ん中にし、右に中村俊、左に松井と攻撃MFを配置している。遠藤のボランチ起用は練習でも初めてのことだ。

「最初ビブスをつけた(Bチーム)が決まって、それに合わせて自分たちで形を考えろって言われた。自然とこういう形になった。もしこの面子でスイス戦を戦うなら、相手が4−2−3−1だから、相手のトップ下をイナ(稲本)が見て、ボランチをヤット(遠藤)と山瀬が見るような4−3−3になるんだと思うよ。山瀬くんは、マリノスの試合を見ていても、ボランチっぽいこともできるし、そこから前で出ていけるタイプだからね。松井とは練習後に『左で縦にグイグイ行くんなら、センターリングで終わったほうがいい。そうすれば俺が中にいく。もしく松井が中に入ってきたら、サイドチェンジして、外で待っている俺が1対1をする』というような話をした。確かに、松井も山瀬とは練習中あまり一緒にはやってなかったけれど、問題はないはず」と中村俊。

 オーストリア戦後、「練習どおりボールを回すだけじゃなくて、思い切りの良いプレーも必要」と語っていた中村俊。そして、「ボールを回すというこのチームのやり方は徐々に理解している。でも、自分はいくときには勝負したい」と話している松井。山瀬も「サイドにもう1度パスを出すという選択肢が自分の中にあっても、シュートを打つほうがいいと判断したら、そのプレーを選ぶ。代表でプレーする中であっても、自分の判断は大事にしたい」と言っていただけに、松井、山瀬、中村俊の個の力が発揮されそうな顔ぶれである。

 しかし、中村俊は言う。「監督もスイスは過去に対戦した中で最も強い相手だと言っていた。そういう相手に対して、個人技で勝負しても勝つのは難しい。今は個人でどれだけやれたかっていうことに目が行っているけれど、選手としては、そればっかりに目が行き過ぎないようにしないといけない。やはりレベルの高い相手には、ポジションチェンジをしながら、連動する動きが大事。状況、相手DFの配置やタイプを見ながら、どういうプレーが効果的かということを判断しながらやっていきたい。前に攻めあがったときに、カウンターを食らうのは一番避けなくちゃいけないしね。それに攻撃がいいからと言って、守備をおろそかにはできない。スイスの右サイドは強力だから、松井くんが攻めあがって、戻れないんだったら、僕がカバーに行くとか。イナやヤットを生かすためにも、周囲の動きが必要だと思うからね。確かにボールを回しているだけじゃ、相手にとっては怖くはないから、ドリブルなどでつっかけることもしなくちゃいけないし。大事なのはタイミングと状況判断」

 指揮官が練習中から常に選手たちに求めてきた、“状況判断”という課題。欧州組を起用し、個人技が高いといわれる選手たちを選び、ともすると攻撃的な布陣と見られるこの10人で、難敵スイスに挑む可能性が生まれたわけだが、試合の行方を左右するのは、個々のバランス感覚であり判断力だろう。過去のトレーニングではやったことのない顔ぶれで、文字通りぶっつけ本番に近い形でテストすることになるのだから、求められる判断力は非常に高くなるはずだ。
 とは言え、スイス戦の先発メンバーは、試合当日までわからない。過去、何度も前日練習で先発組から漏れながらも、翌日には先発出場を重ねてきた鈴木。オシムジャパンの心臓とも言われる彼を外すのかどうか?というのも気にかかるが……。しかし、欧州組を招集する機会が限られていることを考えると今回のテストへの興味は俄然高まってくる。


―― text by Noriko TERANO from AUSTRIA ――

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