犬の登録と狂犬病予防注射済みを証明する鑑札(撮影:佐藤学)

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厚生労働省は16日、京都市の60歳代の男性がフィリピンで犬にかまれ、帰国後に狂犬病を発症し、意識不明の重体であることを発表した。国外で狂犬病に感染して国内で発症した事例は36年ぶり。

 WTOの推計によると、2004年に世界で約5万5000人が狂犬病で死亡している。日本では、関東大震災や太平洋戦争終戦後に大規模な流行があり、1950年に狂犬病予防法が施行され、犬の登録、狂犬病予防注射、輸入検疫、野犬の捕獲などによって、狂犬病は激減した。国内での人への感染は54年の1人を最後に報告されていない。

 この病気は、狂犬病ウィルスを持つ動物にかまれたり、引っかかれたりしてできた傷口から感染し、発症すると死亡率は極めて高いといわれている。潜伏期間は一般的に1−3カ月で、発熱、頭痛、倦怠感など風邪のような症状で始まり、知覚障害などを起こし、錯乱したり幻覚症状に陥り、最終的には死に至る。狂犬病を発症した男性は、約2カ月前にフィリピンで犬にかまれたが、帰国後ワクチン接種を受けていなかったという。

 日本と同じく狂犬病を根絶したといわれる英国では、94年にユーロトンネルが開通して以来、フランスからの狂犬病の侵入を危惧。96年にコウモリから狂犬病ウィルスに類似した菌が発見され、02年に同ウィルス感染の死亡例が報告された。日本にも世界各地から様々な動物が輸入されているため、特に狂犬病に感染する可能性が高い犬、猫、アライグマ、キツネなどについて、輸入検疫を実施している。

 生後91日以上の犬を飼う場合は、飼い始めた日から30日以内に区市町村に登録し、毎年1回狂犬病の予防注射を受けさせることが犬の飼い主に義務付けられている。登録を済ませると「鑑札」が、予防注射をすると「注射済票」がそれぞれ発行されるが、「登録を済ませていない飼い主が多く、登録と予防注射を済ませていても鑑札と注射済票が首輪など付けられていないため、狂犬病の予防注射を受けたかどうかわからない犬が見受けられます」と、東京都動物愛護相談センターでは飼い主の注意を喚起している。【了】