8月3日には高校野球の組み合わせ抽選会がおこなわれた(写真・時事通信)

 8月6日に、甲子園球場で開幕する高校野球の全国大会。球児たちの熱い夏がまもなく始まるが、かねてから問題視されてきたのが、母校を応援するチアリーダーをめぐる撮影行為だ。香川県代表として12年ぶり3回めの出場を決めた英明も、予選大会では、チアリーディング部の生徒が無断撮影への戸惑いの声をあげていた。

 7月24日に高松市でおこなわれた、香川県予選準決勝の英明‐四国学院大香川西戦では、英明のチアリーディング部約20人が、スタンドで選手たちにエールを送っていた。試合の中盤、1年生の女子生徒が、通路近くの席に座る中年男性のスマホのカメラの向きを見て「撮られているのでは?」と不安を感じ、教員に相談したという。

 これを受けた学校側は対策を講じ、26日の決勝では、複数の教員が部員らの周りを囲み、不審者に注意したという。女子生徒は読売新聞の取材に、「大会に向けて練習をしてきたので周囲を気にせず、応援に集中したかった」と話し、チアリーディング部の顧問教師は、過去に無断撮影されたチアの動画がネットにあげられたことがあるとして「生徒が安心して活動できるよう守っていきたい」と語った。

 県高野連によると、香川県予選では、英明を含め、生徒への無断撮影の疑いの報告が、学校から少なくとも7件あったという。うち4件は、警察官や県高野連が、撮影者に口頭で注意をおこなった。撮影データを消去させたケースもあるようだ。

 この報道に対して、SNSでは、

《野球やってる選手達はチアいてもいなくても変わらないから、チアは無くて良いと思う。吹奏楽の音があれば充分》

チアリーダーを撮影する行為が盗撮なら、チアリーダーはなくした方がいいと思う。着替え中やチアリーディング中以外を撮影してるのならアウトだろうけど》

と、いっそチアリーダー自体をなくせばいい、との意見も見られた。

 無断撮影に頭を悩ませているのは、高校野球だけではない。北海道を中心に開かれている全国高校総体(インターハイ)でも、大会関係者たちが女子選手への撮影行為の防止に苦心している。

 8月3日、札幌市で開催されている陸上競技・走り高跳び女子では、全国高等学校体育連盟(高体連)の職員が観客席で不審な動きをする男性を発見。職員が身元を尋ねても、男性は何も答えなかったため、職員が男性の同意を得てカメラの画像を確認したところ、女子選手が写った画像が複数点あったという。男性は大会本部まで同行させられ、警察に引き渡された。

 陸上競技を取材するスポーツ紙記者が語る。

「高体連は今大会、各競技会場で『撮影・録画および録音の禁止』、『会場内の音声・映像のインターネットなどでの配信の禁止』の張り紙を掲示しているほか、観客席の一部には、撮影禁止エリアも設けて、保護者や学校関係者も含めて、すべての撮影を禁止としました。

 また対策として、職員が1日3回、スタンドの見回りをおこない、カメラやスマホを構える観客を見かけると、関係者かどうかなどを確認しています。観客が不審者を通報するシステムも導入しました。これは、観客席の貼り紙に提示されたQRコードからフォームに状況を入力すると、職員が不審者とされる人のところへ出向き、何を撮ったのかを確認するというものです」

 ここで、SNSなどで指摘されているのが、はたしてすべての無断撮影が「迷惑行為」なのか、という問題だ。チアに関しては、以下のような意見もあった。

《いや、これは明らかに「公の場でしているパフォーマンス」 それを撮影してダメだと言うなら、特に警察官が撮影者を規制するようなことがあれば、明らかな人権侵害にあたる。規制と自由のバランスは適切なものでなければならない》

 一部の不届き者のせいで、スポーツ観戦がどんどん窮屈になっていることは間違いない。報道関係者以外はカメラやスマホの持ち込み禁止、という時代など、やってきてほしくないが……。