提供:週刊実話

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 3月20日、IT業界の巨人・米グーグルが、本格的なゲーミングPC以上のクオリティーのゲームを、インターネット経由で楽しめるストリーミング型ゲームサービス「Stadia(スタディア)」を、今年度中に開始することを発表した。

「ゲーム業界ではこの『スタディア』が、業界に“地殻変動を起こすのではないか”と、話題になっています」(ゲーム業界記者)

 提供エリアは米国、カナダ、イギリス、ヨーロッパエリアとなっており、日本を含むアジア地域で提供されるかは未定だ。しかし、日本でもスタディアが与えた影響はすさまじく、世界のゲーム市場をけん引してきた「ソニー」や「任天堂」の株価が、この発表以降に急落している。

 そもそもストリーミング型ゲームとは、従来の据え置き型ゲーム機が担っていた負荷の高い処理を大きなサーバーに任せ、プレイ画面だけを映し出してするゲームのこと。つまり、ストリーミング型ゲームであれば、ユーザーは高価なゲーム機やパソコンを買わずともインターネットにさえ繋がっていれば、低スペックのパソコンやスマートフォンでも、高性能なゲームを楽しめることになる。

 ただ、ストリーミング型ゲーム自体は特別に新しいサービスではなく、グーグル以外の企業がすでに提供している。例えば、ソニーは人気ゲーム機『PlayStation(プレイステーション)4(以下、PS4)』を補完するものとして、2014年にストリーミング型ゲームサービス『PlayStation Now(以下、PS Now)』を開始している。任天堂のゲーム機『Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)』では、ストリーミング型ゲームとして『バイオハザード7』、『アサシンクリード オデッセイ』がある。

 既に存在しているサービスであれば、スタディアが“地殻変動を起こす”とまで騒がれる理由は、一体、どこにあるのか。

 「『スタディア』がこれまでのサービスと一線を画すのは、スペックがPS4といった既存の据え置き型ゲーム機をサービス開始時点で大きく上回っていることです。さらに、世界中にデータセンターを持つグーグルは、ストリーミング型ゲームを提供する企業としてはうってつけで、世界中の人がプレイできる環境がすでにあります。また、『PS Now』はタイトルが旧作ばかりですし、月額料金が2500円と高く、評判はよくありません。『スタディア』では、フランスの『Ubisoft(ユービーアイソフト)』、米の『id Softwar(イド・ソフトウェア)』といった、ゲームソフトメーカーの参入が決まり、意欲的なソフトが続々と開発される予定です」(ゲーム業界関係者)

 据え置き型ゲームの場合、最新のゲームを遊ぶためには数年ごとにゲーム機を買い換える必要がある。スタディアではその必要もない。

 「スタディアの利用料金は、まだ未公表ですが、本体を買わなくてもいい分、従来よりも高性能なゲームを、今までより安価にプレイできることになることが確実です。スタディアはゲーム業界のすべてを塗り替えるほどのポテンシャルを秘めているといっても、大げさではないでしょう。また、今後は高速、低遅延、大容量の通信サービスである5Gの普及もあり、通信回線はますます高速化します。ストリーミング型ゲームも、より快適にプレイできるインフラ環境が整っていくでしょう」(同)

 アメリカの音楽業界では、2008年頃は買い切り型のダウンロードサービスが主流だったが、2010年には定額料金で聴き放題のストリーミング型サービスに変わった。ゲーム業界も、据え置き型ゲーム機は廃れ、ストリーミング型ゲームが主流になる流れが同じように起きようとしているのだ。

 前述したソニーはもちろん、「マイクロソフト」もストリーミング型ゲームサービスを提供することを公表している。

 「グーグルが今回ゲーム業界への参入を宣言したことで、もうひとつ世界を動かすIT企業『アマゾン』が、2020年にクラウドゲームに参入する情報が駆け巡っています。ソニーや任天堂など、従来の据え置き型ゲーム機が強かった企業も、本腰を入れてストリーミング型ゲームに力を入れていくのは間違いありません。今後のゲーム業界は、ストリーミング型ゲームのプラットフォームになれた企業が次世代で覇権を得ることになるでしょう」(同)

 現状、欧米のみとみられるスタディアだが、「日本では、2020年頃にサービスが開始されるのではないか」と前出のゲーム業界関係者は予想している。スタディアによって起きる地殻変動に、現在、トップを走っている任天堂とソニーが戦々恐々しているに違いない。