「あめちゃん」持つ大阪人はやっぱり半数以上

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 大阪のおばちゃんは、本当に「あめちゃん」を持っているのか−。

 こんな素朴な疑問に、子育て情報紙「お母さん業界新聞」大阪版編集部(大阪市平野区)が大阪在住の女性112人を対象にしたアンケートを実施。実に53%に当たる59人が「いつもあめを携帯している」と回答した。近所付き合いが希薄になり、子供にあめをあげる光景も過去のものになりつつあると思いきや、「出かける際には必ず専用ポーチを持っている」との答えも。その一方で、最近は「もらってもらえなくなった」という新たな“あめちゃん事情”も明らかになった。(上岡由美)

素朴な疑問から「お母さん記者」調査

 同紙は、子育て支援事業を展開する「トランタンネットワーク新聞社」が運営する月刊紙。同社のウェブサイト「お母さん大学」に登録する母親たちが記者となり、子育て情報などを発信している。

 今年7月末、本部にエリア編集長が集まった際の雑談から調査が始まった。「大阪の人は、みんなあめを持っている?」と聞かれた大阪版編集部の宇賀佐智子編集長(53)が「私らは持っていますよ。集まりとかで誰かが咳(せき)をすると、みんなカバンをゴソゴソしてあめを探しはじめます」と答えると、「大阪って面白いね」などと話が盛り上がったという。

 「あめを持ち歩くのは大阪独特の習慣かも。でも、実際にどれぐらいの人が携帯しているのか?」と疑問を持った宇賀編集長は、9月号の「大阪の食」コーナーで特集することに決めた。

 当初は街頭調査も考えたが、「まずは知り合いから意見を聞いた方がいい」との声もあり、大阪版編集部のお母さん記者14人が8月上旬、20〜90代の女性にラインやメールなどでアンケートを行った。

「断られた」体験談も

 まずは「いつもあめを携帯しているか」という質問に対して、59人(約53%)が「持っている」、53人(約47%)が「持っていない」と回答し、あめを持ち歩いている女性が過半数を占めていることがわかった。理由については「口さみしいから」「おなかがすいた時にこっそり食べられる」「眠いときに役立つ」などの声があがっていた。

 「知らない人にあめをあげたり、もらったりしたことはあるか」という問いには、さまざまな意見が寄せられた。

 あめちゃん文化に肯定的な意見としては、「子供をおとなしくさせるため」「ちょっと席を替わったり、道を教えたりしたときによくポケットに入れられた」「コミュニケーションツールになる」などの声があった。

 最初から人にあげることを前提に携帯している人もおり、「自分用と他人用に分けてバッグに入れている」との回答もかなりあった。なかには「お出かけする際にはあめちゃんポーチを必ず持参している」と話す“あめちゃん歴”30年のおばちゃんもいた。

 高校時代の同級生に調査をしたという大阪府八尾市の主婦、谷睦美さん(56)は「もらったことがあるという人が意外に多かった。咳をしたら知らない人から3回くらいもらったという人もいたし、あめちゃんをくれるのは少し年配の人かな」と笑う。

 一方で、「不審者と思われる」「子供がアトピーなので、あめをもらったらうれしいけど、食べさせられず困った」「電車の中で泣いている子供にあめをあげようとしたら、母親から『食べさせないで!』と止められた」などと、あめをあげるのを躊躇(ちゅうちょ)する人も少なくなかった。

 ママ友達10人にアンケートを取ったという大阪府豊中市の野菜ソムリエプロ、中川佳子さん(40)は「アレルギーの子もいますし、『歯に悪い』と神経質になっているお母さんもいます。うかつに子供にあめをあげられないというのが本音」と話す。

 他府県から転居してきた女性からは「渡すタイミングがわからない」「気恥ずかしい」との回答があった。大阪府高槻市の60代女性は「大阪育ちの友人はいつもバッグにあめを入れていて、電車に乗ったらすぐにくれる。そのたびに『まだ私は大阪のおばちゃんになれていないな』と実感します」と話していた。

あめちゃん文化は江戸時代から…

 なぜ、このような“あめちゃん”文化が大阪に根づいているのだろうか。

 手がかりを探ると、江戸時代までさかのぼる。「天下の台所」と呼ばれた当時の大坂には、あめの原料である砂糖や水あめが集まり、あめ作りが盛んだった。江戸中期の「日本山海名物図会」では、現在の大阪市平野区でつくられた「摂州平野飴」が大坂名物として、「風味よし小児に用ひて毒なし」などと挿し絵付きで紹介されている。

 現在でも、大阪市内にはパインアメで知られる「パイン」(天王寺区)や明治5年創業の「豊下製菓」(阿倍野区)、「UHA味覚糖」(中央区)、「扇雀飴本舗」(同区)などあめの専業メーカーが多く、レジの横にあめを置いている飲食店や美容室もある。業界関係者は「大阪人はサービス精神が旺盛で、昔からのお裾分け文化も影響しているのでは」と分析している。

 一方で「非常食としてのあめちゃん」にも注目が集まっていることがわかった。

 今年は大阪北部地震の発生や台風の関西襲来などの災害によく見舞われたこともあって「電車内で缶詰状態になったときにあめを持っていると安心」「夏は塩あめ。熱中症予防に黒砂糖あめを携帯していた」などと緊急時に役立つと考えている声も。今後は、帰宅困難者になった場合などを想定して、あめを持ち歩く人が増えるかもしれない。

 宇賀編集長は「他人への気遣いを伝える手段があめちゃん。これって地域の子育て文化だと思いますし、あめをもらって素直に『ありがとう』と言える社会が住みやすい街なのでは」と強調した。