大法院入りした徴用被害者ら=30日、ソウル(聯合ニュース)

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【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代に強制徴用された韓国人被害者4人が新日本製鉄(現新日鉄住金)に損害賠償を求めた訴訟で、韓国の大法院(最高裁)は30日、原告を逆転勝訴させた差し戻し控訴審判決を支持し、新日鉄に原告1人当たり1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じた。

 

 大法院は被害賠償を否定した日本の判決は韓国の憲法に反するもので、1965年の韓日請求権協定によって強制徴用被害者の個人請求権問題が消滅したとみることはできないと判断した。

 また、新日鉄住金は加害者の旧新日本製鉄と法的に同一会社であるため、賠償責任があるとした上で、賠償請求権の消滅時効の主張は信義誠実の原則にも反すると判断した。 

 日本政府は強制徴用被害者の個人請求権問題は韓日間の請求権協定で解決済みとの立場を取っており、両国間の外交やビジネスへの影響は必至だ。

 原告は1997年に損害賠償を求めて日本で提訴。大阪地裁は損害賠償の責任がないとして、原告の訴えを退け、2003年10月に最高裁で原告敗訴が確定した。

 原告は05年に今度は韓国で訴訟を起こしたが、一審と二審は「日本の確定判決は韓国でも認められる」として原告敗訴の判決を下した。しかし大法院は12年5月に「日本の判決は日本植民地時代の強制動員そのものを違法と見なしている韓国の憲法の中核的な価値と真っ向から対立する。韓国の善良な風俗と社会秩序に反した判決であることは明らかだ」とした上で「個人の賠償請求権は有効」としてソウル高裁に審理を差し戻した。翌年7月の差し戻し控訴審で同高裁は「日本の核心軍需業者だった旧日本製鉄(新日鉄)は日本政府とともに侵略戦争のため人を動員するなど、反人道的な違法行為を犯した」とし、原告に1億ウォンずつ、計4億ウォンの支払いを命じた。

 新日鉄側は判決を不服として再上告。大法院は5年以上、判決を下さず、原告のうち3人は判決を前に死去し、遺族らが引き継いだ。同訴訟を巡っては、朴槿恵(パク・クネ)前政権が大法院に対日関係への配慮を求めた介入疑惑が取り沙汰され、検察が捜査を開始。そんな中、今年7月27日、大法院長と大法官12人全員による合議体での審理が始まった。重大な事案の場合、大法院は全員での審理を行う。

 日本企業に賠償を命じる判決が確定したことで、韓日間の外交摩擦は避けられない見通しだ。日本政府は自国企業に賠償を命じる判決が出れば、国家間の紛争を扱う国際司法裁判所(ICJ)への提訴などの強硬対応に出るとみられる。日本企業の韓国でのビジネスにも悪影響を与えかねず、対韓投資などが冷え込む可能性がある。