著名人が選ぶ日本酒は?

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日本酒がおいしい地域に住んでいると、自分だけの「イチ押しの一本」ができるもの。すすめられた酒を味わいながら、「一本」にまつわる想い入れを聞くのもいいものです。

【写真を見る】歌手のさとう宗幸氏。幼少期を宮城県古川市(現在の大崎市)で過ごし、現在は仙台を拠点に活動

そんな想いを聞くために、宮城県ゆかりの著名人3人にインタビュー。日本酒を通して、それぞれの熱い郷土愛を感じることができました。(KADOKAWA刊『会いに行ける酒蔵ツーリズム 仙台・宮城』より)

■ さとう宗幸「応援したくなる蔵元ばかり。一本は選べません」

「私の一本」というテーマということですが、一本だけは選べません。ロケなどで、いろいろな蔵元さんと知り合う機会がありますが、どの蔵元さんも杜氏さんも、応援したくなる人ばかりです。

宮城には、伊達62万石の伝統を今に伝える酒蔵がたくさんあります。日本酒造りを文化として、誇りと自信を持ってやっていらっしゃいます。そういう誇りが、伝統の味をつくり出しているのでしょう。

酒造りに携わっている人のなかには、高校の後輩もいるんですよ。年齢はだいぶ離れていますが、親近感が湧きます。『OH!バンデス』(ミヤギテレビ、月〜金15:50〜)を一緒にやっている仲間にも、お酒に詳しい人がいて、そういう人に話を聞きながらのむと、お酒がよりおいしくなります。

宮城には、おいしい日本酒をつくるための素材がそろっています。全国に誇れる米どころがありますし、蔵王や栗駒山など奥羽山脈の伏流水が流れています。どこにも負けない素材で、自慢の日本酒が出来上がるんです。

お酒と一緒に食べる食材も多種多様です。海のものは言わずもがなです。三陸沖の豊かな漁場に揚がった魚介が新鮮なまま味わえます。山のものも負けてはいません。春の山菜料理は、素朴な味わいで日本酒にぴったりですよ。A5ランクの肉を使った仙台牛や、岩手だったら短角牛もあります。

観光に来た人にぜひ食べていただきたいのは、石巻などで養殖している『みやぎサーモン』。水揚げの時に鮮度を維持するための処理を施すので、刺身で味わえます。イワナ養殖に日本で初めて成功した栗原市のイワナも身が太っていて味わいが深くおいしいです。

年齢を重ねてくると、お酒も食事も「おいしいものを少しずつ」がよくなってきます。宮城は、おいしい食材もいい酒もそろっています。気の合う仲間たちとワイワイ楽しむには、ぴったりの場所ですよ。

それと、酒蔵めぐりに訪れたらぜひ立ち寄ってほしいのが農家や漁師さんのところです。最近、一次産業がぐっと身近になり、グリーン&ツーリズムや体験イベントが増え、収穫や漁を体験できるようになりました。

三陸には、イケメン漁師がいる『フィッシャーマンジャパン』という団体ができましたし、亘理(わたり)町や山元町のいちご農園では収穫体験が人気です。若手が努力しているのを、見て体験してほしい。酒も作物も、つくっているところを見て人の話を聞くと、応援したくなるのは同じですね。

■ 大久保剛志「タイの人も味わってほしい、のみやすい『すず音』」

好きな一本は一ノ蔵の『すず音』です。日本酒はキツイ、ハードというイメージがありましたが『すず音』は違います。のみやすくて、どんどんのめます。

ぼく、お酒はあまり強くないんです。でも、のむのは大好き。だから、アルコール度数が5%の『すず音』はたくさんのめてうれしいですね。日本酒に対して苦手意識を持っている人に「のみやすくておいしいから」とすすめています。

ぼくのサッカー人生は、宮城県岩沼市(いわぬまし)のスポーツ少年団からスタートしました。ベガルタ仙台にはユースチームから所属し、2005年にトップチームに昇格しました。

その後、ソニー仙台とモンテディオ山形でプレイし、14年からタイのプロサッカーチームでプレイしています。Jリーグ時代は、がむしゃらにもがいている時期が多かったように感じています。

勇気を出してタイに行き、もう5年目になります。今は結果を残せるようになりました。思い返せば、ターニングポイントでしたね。

日本にいた時もがんばっていたのですが、タイでプレイするようになって、がんばるということの本当の意味がわかったような気がします。タイのチームからすれば外国人枠ですので、半年ごとに切られるかどうか、という世界。中途半端なプレイはできない、集中しようという気持ちが強くなりました。自分はタイで変わったと思います。

実はぼく、今、禁酒中なんですよ。タイの11か月のシーズン中は、お酒を一切のまないことにしています。タイの蒸し暑いフィールドで集中してプレイするには、食事と睡眠が何より大事です。リズムを崩さないように、家でも外でもお酒はなし。今日はのんでもいいかなと思う時もあるんですが(笑)、周囲の理解もあって、サッカーの試合とトレーニングに合わせて毎日のリズムをつくっています。

だから、お酒がのめるオフシーズンの10月はとても幸せな時間です。家でゆっくり、外で友人と、好きなようにお酒がのめるって、幸福なことだなぁと思います。

タイでは今、日本酒がちょっとした「おしゃれアイテム」になっています。SNSに「日本酒のんでるよ」と書くと、おお、おしゃれ!という感じ。日本酒をリスペクトしている雰囲気があります。これからもっとタイに日本酒が浸透して、気軽に「日本を味わう」人が増えたらいいと思っています。

■ 山寺宏一「ぼくの体は宮城の酒と食べ物でできています」

出身は塩竈(しおがま)市。その後多賀城市、利府町に引っ越しましたが、最寄り駅がJR仙石線本塩釜駅だったので、自分の意識では「地元は塩竈」です。

22歳まで宮城で過ごしましたが、当時は日本酒には縁がありませんでした。でも不思議なもので、年齢を重ねると酒の魅力がわかるようになるんですよね。「あれ?すごくおいしいな」と思う瞬間がくる。若いころは、おいしい魚には白ワイン、なんて格好つけていましたが、今は断然日本酒ですね。

地元の魅力は、地元を離れるとわかるもので、今さらながら本当に宮城はいいところだなと実感しています。自分の細胞は宮城でできているんだと思います。宮城のものをのんだり食べたりすると、細胞が喜ぶんですよ。

お店では宮城県産の魚介や野菜があるとついつい注文しますし、お米も宮城県産を取り寄せて食べてます。お米がおいしい地域は日本酒もおいしいですね。間違いない!

私の一本というインタビューですが、やっぱり私も1本は選べなかった(笑)。

まず、塩竈の酒蔵は絶対外せないでしょう。夏にいつものんでいるのは、阿部勘酒造の『阿部勘純米吟醸夏酒』。昨日も番組の打ち上げに持っていきました。「山ちゃんの“金魚” 、きたー!」と喜んでくれました。これをのむと、普通のつまみが高級に感じるんですよ。

それにラベルがいい。裏から見ると、酒の中を金魚が泳いでいるように見えるんです。あるスタッフさんがいたく感動して、空き瓶を抱えて帰っていました(笑)。

もう1本は、はさまや酒造店がつくっている『阿佐緒』。杜氏が女性なのですが、ミュージシャンでぼくの友達なんです。「音楽をつくるのと同じような感覚でつくっている」と聞きました。

いいじゃないですか、こういう台詞! こういう想いを知ることで、酒を五感で楽しめるようになります。これ、今家でのんでるのでのみかけなのですが、紹介したくて持ってきました。

佐浦のお酒も、もちろんよくのみます。安定してなんでもおいしいですが、おすすめするなら『花は咲く 蔵の華 純米吟醸 浦霞』です。

東日本大震災の応援ソング『花は咲く』の趣旨に賛同した酒で、売り上げの一部が義援金になっています。ぼくの知り合いや友人も震災でたくさんの被害を受けました。応援する気持ちは忘れちゃいけないです。

それにしても、宮城の酒や食べ物は本当においしいから、食べて応援してね!ってすすめやすい(笑)。山ちゃんがすすめてたからのんでみようかなって、宮城のお酒を選ぶきっかけになれたらいいと思っています。(東京ウォーカー(全国版)・栗原祥光)