特急や快速などは途中の駅を通過することで所要時間を短くしていますが、各駅停車の列車に乗るつもりがうっかり特急に乗ってしまい、目的地の駅を通り過ぎるどころか、かなり遠いところまで降りられなくなる場合があります。このような乗り間違いを防ぐにはどうしたらいいでしょうか。

小田原に行くつもりが名古屋へ

 鉄道路線を走る列車は、普通列車など途中の全ての駅に停車する「各停列車」と、快速や急行、特急など一部の駅を通過する「速達列車」というように、停車駅の違いによってさまざまな種別があります。普通列車に乗るつもりが間違って快速に乗ってしまい、自分が降りるはずの駅を通過してしまったという経験のある人もいるでしょう。


東海道新幹線で「こだま」と「のぞみ」を乗り間違えると、神奈川の小田原で降りるはずが静岡の富士川を渡ってしまう羽目になる(画像:photolibrary)。

 これが数km程度ならいいのですが、乗り間違えるとかなり遠いところまで連れて行かれ、時間を大幅にロスしてしまうこともあります。

 JRの場合、東海道新幹線の新横浜〜名古屋間は要注意です。東京駅から小田原駅に行こうと各停列車の「こだま」に乗ったつもりが、その列車は小田原駅を通過する速達列車の「のぞみ」。品川駅と新横浜駅の停車で間違いに気づかなければ、小田原から265.3km(実キロ)先の名古屋駅まで連れて行かれてしまいます。名古屋駅から小田原駅まで「ひかり」で戻るとすれば、少なくとも2時間程度のロスは避けられません。名古屋駅での乗り換え待ちも含めれば、到着時間がもっと遅くなることもあります。

 在来線も新幹線ほどではありませんが、乗り間違えて目的地より遠いところまで運ばれてしまうケースがあります。

 京都から日本海側の都市・敦賀に行く用事があり、京都駅を10時40分に発車する和倉温泉行き特急「サンダーバード15号」に乗ることに。余裕を持って10時過ぎに京都駅に到着したところ、ちょうど「15号」より一本前の「サンダーバード13号」がやってきました。これなら早めに着けると「13号」に乗り込みましたが、京都駅の次の停車駅は福井駅で、敦賀駅には停車しません。

 敦賀駅のホームが流れていく姿を窓から指をくわえて見るほかなく、福井駅で特急「しらさぎ8号」に乗り換えて敦賀駅に着いたのは、「15号」の敦賀着より38分遅い12時9分。距離にして片道54.0km、往復108.0kmも無駄に移動したことになります。

乗り間違えて「山越え」してしまうことも

 乗り間違いで遠くに連れて行かれるケースは私鉄にも多数あります。大阪市内の鶴橋駅から近鉄奈良線の河内永和駅に行く場合、間違って快速急行に乗ってしまうと、河内永和駅から府県境の山を超えて、13.4km先の生駒駅(奈良県生駒市)まで運ばれてしまいます。こちらも戻るのに約40分はかかります。


近鉄奈良線の快速急行は大阪市内の鶴橋駅から奈良県内の生駒までノンストップで走る(2017年3月、草町義和撮影)。

 西武新宿線の高田馬場駅からひとつ隣の下落合駅に向かう場合も、間違って急行に乗ってしまえば、次の停車駅は下落合駅から5.3km先の鷺ノ宮駅。距離としては短いですが、下落合〜鷺ノ宮間は途中5駅あり、往復で11駅分のロスです。

 このような乗り間違いは、本来乗るはずだった列車と乗り間違えた列車が同じタイプの車両のときに起きやすいといえます。見た目がそっくりなため、どれが各停列車でどれが速達列車なのか、分かりにくいためです。逆に車両の種類が多くても、特急用車両と各停用車両というように列車の種別ごとに分けて使われていなければ、やはり間違えやすくなります。

 このような乗り間違いを防ぐためには、駅や車両に設置されている案内表示を見て、その列車が各停列車なのか、それとも通過駅のある速達列車なのか、よく確認してから乗った方がいいでしょう。とくに車両の案内表示器は基本的にその列車の行き先や種別しか表示しませんから、乗り間違えの防止に大きな効果があるのです。列車によっては途中の停車駅も表示されます。

 なお、乗り間違えて目的地より遠い駅まで乗り過ごした場合、車掌や駅員に乗り間違えたことを申し出ましょう。鉄道会社やそのときの状況などによって扱いは異なりますが、基本的には乗り間違いと認定されれば、無賃で本来の目的地の駅まで戻ることができます。申告せずに戻った場合は不正乗車とみなされる場合がありますから注意しましょう。

【写真】寝台特急「サンライズ」は約390km無停車!


寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」の下り列車は浜松〜姫路間387.2kmの途中駅を全て通過(業務上は停車する駅を除く)。ただ専用の車両を使っていることもあり、乗り間違うことはまずない(2017年6月、草町義和撮影)。