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有期雇用から無期雇用に転換する直前に、物流大手・日本通運から不当な雇い止めにあったとして、日本通運川崎支店で事務職として働いていた神奈川県在住の男性(38)が7月31日、日本通運を相手取り、従業員としての地位があることの確認を求める訴えを横浜地裁川崎支部に起こした。

●契約更新4回、働きぶり評価されるも

訴状によると、男性は2013年7月1日、日本通運川崎支店に事務を担当する契約社員(1年更新)として採用された。契約更新は4回され、通算した契約期間が5年となる前日の2018年6月30日で雇い止めにより、退職となった。(男性は2012年9月から派遣で川崎支店で働き、その後、2013年7月から日本通運による直接雇用に切り替わっていた)

労働契約法18条は、通算した契約期間が5年経過すれば、労働者側に「無期転換の申し込み権」が発生することを定めている。使用者側は、申し込みを拒むことはできない。このため、無期転換ルールを逸脱する雇い止めがいくつもの企業や大学で横行しているとして、同種の訴訟が各地で起こされている。「2018年問題」とも呼ばれ、厚労省も警戒している。

●「全社的な方針」が壁となり、雇い止めに

もともと、男性が当初結んだ有期雇用契約では、「当社における最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはできない(契約更新上限2018年6月30日)」と記された「不更新条項」が入っていた。ただ、そうであっても、実際に契約更新が重ねられ、契約更新への合理的な期待がある場合は、更新拒絶は無効だと主張している(労契法19条)。

男性の働きぶりは評価され、上司からこれまでに、「不更新条項の上限を超えて、事業所に残ってほしいと考え動いており、信じてほしい」や「不更新条項に関わらず長期間働けるように動いている」などの言葉をかけられたとしている。最終的には、「雇い続けたくても会社の全社的な方針により雇い止めせざるを得ない」という趣旨の説明を受けたという。

提訴後、東京・霞が関の厚労省クラブで開いた会見で、男性は「心中を察して娘は涙を流していた。このまま泣き寝入りはできない」。代理人を務める川岸卓哉弁護士は「方針ありきで、無期転換ルールの趣旨を真正面から否定するものだ。違法だという判断が出ると考えている」と述べた。

日本通運の広報担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に、「訴状が届いていないため、コメントできない」と答えた。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)