家電王者ヤマダが犯した「戦略ミス」の謎

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■4年ぶりの「経常減益」の原因とは

家電量販店最大手のヤマダ電機は、2017年4〜12月期の経常利益が前年同期比11.4%減の479億円だった。同期間で経常減益となるのは4年ぶりだ。

経営の足を引っ張っているのは、郊外店、そして住宅事業。この構図自体は数年前から変わっていない。

家電量販店は、ここ数年都心店の売上比率が上がり続けている。人口減少で郊外店の客数が減少していることに加え、訪日外国人によるインバウンド需要も都心店に集中。ヤマダも数年前から採算の合わない郊外店の閉鎖を進めているものの、同業他社のビックカメラやヨドバシカメラに比べるとまだまだ郊外店舗の割合が多い。

それよりも問題なのが住宅事業だ。

経営の多角化は、基幹事業となるべく近い分野、たとえば家電であれば生活雑貨などと同時展開するのであればやる価値はあるが、関わりの薄い分野に新規参入するのは有用な戦略とはいえない。ヤマダは住宅に関しては門外漢。

さらに住宅、建築は、深い見識と技術がなければ造ることも売ることも難しい。付け焼き刃で参入しても、圧倒的な実績を持つ積水ハウスや大和ハウスに勝てる見込みがあるとは思えない。あえてやるならスマートハウスだろうが、既にパナホームが先を行っている。

■家電以外の事業に参入する必然性は薄いのに

そもそも、ヤマダが家電以外の事業に参入する必然性も薄い。

家電業界は人口減少などで先細りすると見られていたが、ここ数年は技術革新が進み、白物家電中心に優れた商品が多く出てきている。そのことが買い替え需要を呼び込み、家電販売は非常に好調だ。AIスピーカーなどの新たな商品も開発されており、家電量販店は都心でしっかり家電を売れば、利益が出る時代になっている。

まずは郊外店の戦略見直し、住宅事業の縮小、そして本業である家電販売によりリソースを振り向けていくのがヤマダ復活の第一歩だろう。

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窪田 真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジスト
1961年生まれ。84年、慶応義塾大学経済学部卒業。住友銀行、住銀投資顧問を経て、99年から大和住銀投信投資顧問。2004年11月に日本証券アナリスト協会の企業会計研究会委員に就任。07年には企業会計基準委員会の専門委員を務めた。14年2月から現職。

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(楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジスト 窪田 真之 構成=衣谷 康 撮影=宇佐美 利明)