スターバックス コーヒー ジャパンが導入する自社開発のコーヒーマシーン。今後5年で500カ所への導入を目指す(記者撮影)

「ずっとやってきたカフェのビジネスを超えて、これまでとは違う市場に入っていく」。スターバックス コーヒー ジャパンの水口貴文最高経営責任者(CEO)は力を込めてこう語った。

同社は2月15日、スタバのコーヒーをオフィスやレジャー施設、ホテルなどで楽しめるサービスを本格展開していくことを発表した。自社開発のコーヒーマシーンをオフィスなどに置き、店舗と同品質の豆を使用したコーヒーを提供する。

小規模商圏に入っていく

オフィス向けコーヒーについてはUCC上島珈琲やネスレ日本が先行しているが、スタバとしては1つのコーヒーマシーンでドリップコーヒーやカフェラテ、カプチーノなど20種類以上のコーヒーを提供することを差別化要素とするほか、日本に上陸して20年余りで培ったブランド力を生かしていく構えだ。


1996年8月に誕生した日本1号店の「銀座松屋通り店」(撮影:風間仁一郎)

目下、日本国内におけるスタバの出店は順調に推移している。2017年9月期は108店を出店し、期末時点の店舗数は1304店。過去5年間で約300店舗増加している。にもかかわらず、あえてオフィスやレジャー施設向けなど”店舗外”でコーヒーを提供するのはなぜか。

水口CEOは「既存の(店舗展開による)成長のポテンシャルはまだまだある」と述べる一方で、「これまで店舗として出られなかった小規模商圏に入っていける」と強調する。

発表当日には、長野県の白馬八方尾根スキー場でスタバのコーヒーを提供するカフェがオープンした。スキー場からのスタバの出店要請はこれまでも数多く、今回の白馬についても2013年からオファーが来ていたという。

白馬のカフェを運営するのは別の企業で、スタバはそこにコーヒーマシーンを納める。ライセンス&フードサービス部の遠藤和久部長は「人的な面なども考慮すると、スキー場への出店は厳しかった」と振り返る。こうした状況を打開しようと、マシーン導入の検討を進める中でようやくメドが立ったのが、今回のタイミングだった。

まずはオフィスやレジャー施設などを中心に、2018年中に20〜30カ所、今後5年間で500カ所への導入を目指す。

実はスタバの本社がある米国では20年ほど前からこのようなサービスを提供しており、現在、米国内の3万6000カ所にコーヒーマシーンが設置されている。欧州や中東でも30カ国で導入済みで、アジアでは日本が初めてとなる。

無人販売に向けた課題とは

日本では2016年10月から先行導入を進めていて、2018年1月までに東京や京都にある5つの企業が取り入れた。企業によっては1日200以上の杯数が出る日もあるなど、スタバ側としても手応えを感じているようだ。


スターバックス コーヒー ジャパンの水口貴文最高経営責任者(CEO)はオフィス向けコーヒー参入に自信を示す(記者撮影)

ただ、こうした先行導入箇所を含め、当面は有人でサービスを行う。ゆくゆくは無人販売にも対応していく予定だが、それにはいくつか課題もある。

たとえば、コーヒーの温度や分量の調整など、店頭で人が行う作業については、マシーンでは対応できない。「店舗のようにカスタマイズができない中で、お客様が好む商品提供の方法を考えていかなくてはいけない」(遠藤部長)。

現状のマシーンでは決済機能がついていないことから、今後は交通系ICカードやクレジットカードでの決済機能が付いたマシーンの開発も必要となりそうだ。

全日本コーヒー協会によると、コーヒーの国内消費量は2016年に47.2万トンと過去最高を記録。2017年も過去最高レベルを維持したという。「パイの取り合いではなく、コンビニエンスストアをはじめ、みんなでマーケットを盛り上げているフェーズだと感じている」(水口CEO)。スタバのオフィス向けコーヒーは消費者にどこまで受け入れられるか。