京王電鉄が「座席指定列車の概要およびダイヤ改正に伴う社長記者発表会」を実施。社長、専務による愛称「京王ライナー」の決定経緯やダイヤ改正概要の説明、記者との質疑応答などが行われました。

「京王ライナー」導入に至った3つの背景

 京王電鉄が2018年1月24日(水)、「座席指定列車の概要およびダイヤ改正に伴う社長記者発表会」を実施。前半では、同社の紅村 康 代表取締役社長が、新たに導入する座席指定列車の愛称や運行概要などを発表しました。

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【紅村 康 代表取締役社長】
 このたび、座席指定列車を導入しますが、これはお客さまの要望にお応えしてサービスの向上を図るのが目的であり、また併せて、鉄道事業の収益力の向上にもつなげたいと考えています。まず、導入するに至った背景は大きく3つございます。


座席指定列車「京王ライナー」にも使用される新型車両の5000系電車(2017年7月、恵 知仁撮影)。

 ひとつ目は、通勤列車における「客席ニーズの高まり」が挙げられます。同時に、鉄道車両の座席設計において、ロングシートとクロスシートの転換機能を備えられるようになったことなど、当社が同様のサービスを導入する機が熟したと考えております。

 ふたつ目は、当社の地盤である東京都の人口が減少すると予測されるなかで、お客さまの年代構成が大きく変化し、事業環境も大きく変化してきております。

 3つ目は、当社はこれまで安全対策、輸送力増強を重点的に進めてまいりましたが、社内では長年、有料特急導入の議論を続けてまいりました。京王線に有料特急が走るということは、当社の社員にとっても長年の思いが込められています。


京王プラザホテル新宿で「2018年 春 座席指定列車の導入 ダイヤ改正 記者発表会」が行われた(2018年1月24日、恵 知仁撮影)。

 これらの条件と環境が整って誕生した京王の座席指定列車ですが、従来の京王のイメージを変える新型車両であり、今回のダイヤ改正における、ひとつの大きな目玉と考えております。まずはお仕事やお出掛けからのお帰りのとき、座ってゆっくり帰りたいというお客さまの思いにお答えしたいと思います。

愛称「京王ライナー」とロゴ、区間、料金などついて

【紅村 康 代表取締役社長】
 座席指定列車の愛称は「京王ライナー」です。昨年4月から5月にかけて実施した、お客さまによる愛称投票で当社の新サービスをシンプルに表現した「京王ライナー」が最多得票で決定しております。この名称で皆さまからご愛顧をいただきたいと考えております。


スピード感のあるデザインとされた「京王ライナー」のロゴ(2018年1月24日、恵 知仁撮影)。

 ロゴデザインは「京王ライナー(Keio Liner)」の頭文字の「K」と「L」を組み合わせて、5000系車両のフロント部分の丸みを帯びたデザインと、車体のカラーリングを表現しております。「京王ライナー」の書体については、スピード感と柔らかさをあわせ持つ書体で表現しております。京王線で新宿から終点までの所要時間が一番速い列車として、スピード感のあるデザインといたしました。

「京王ライナー」の行き先は、京王八王子と橋本の下り2系統です。京王八王子行きの停車駅は府中、分倍河原、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野です。橋本行きの停車駅は京王永山、京王多摩センター、南大沢、橋本です。最初の停車駅については、長距離利用のお客さまの着席ニーズと目的地への速達性の向上に応えるため、京王八王子行きは府中駅、橋本行きは京王永山駅といたしました。


「京王ライナー」の停車駅。新宿を出ると明大前や調布などは通過し、府中または京王永山に停車する(画像:京王電鉄)。

「京王ライナー」の座席指定料金は一律400円です。乗車区間の定期券をお持ちの場合は、座席指定券のご購入のみでご利用いただけます。購入方法ですが、新宿駅に設置する専用券売機か、ウェブサイトで購入できる「京王チケットレスサービス」になります。「京王パスポートカード」でチケットレスサービスにご登録いただくと、座席指定券の前日予約や京王グループ共通ポイントでのお支払いも可能となります。

「京王ライナー」に使用される5000系電車について

【紅村 康 代表取締役社長】
「京王ライナー」として運行する5000系車両についてですが、ロングシートとクロスシートの転換機能を備えており、無料公衆無線LAN、空気清浄機、電源コンセントなど当社の車両としては初めての設備が盛り込まれております。この車両は2017年9月からロングシートとしてすでに運行しており、駅で見掛けたりご乗車になったりした方から「いつから座席指定列車として走るのか」、そういったお問い合わせをたびたびいただいております。


クロスシート状態にした5000系電車の車内(2017年7月、恵 知仁撮影)。

 次にこの車両が「京王ライナー」として走り始める日となるダイヤ改正の日でございますが、2月22日、木曜日です。「京王ライナー」は1日10本の運行本数で、既存の特急に置き換えることはなく、すべて増発といたします。運転間隔は京王八王子行き、橋本行き、各方面に1時間に1本ずつ。平日は20時台から、土休日は17時台から運行いたします。京王八王子まで最速35分、京王多摩センターまでは最速24分で運転いたします。「京王ライナー」の平日の新宿駅最終出発時刻は、京王八王子行きは0時ちょうど、橋本行きは0時20分です。

 ダイヤ改正についての詳細は、この後説明させていただきます。当社はダイヤ改正後もお客さまのご意見やご利用状況の分析を行いまして、引き続き便利で快適な鉄道を目指したいと考えております。ぜひ多くのお客さまにご利用いただきたいと思います。

ダイヤ改正、3つのポイント

 紅村社長の発表に続き、鉄道事業本部長の高橋泰三 専務取締役(高の字ははしご高)によるダイヤ改正の概要説明が行われます。

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【高橋泰三 専務取締役】
 今回のダイヤ改正では、お客さまからニーズの高い速達性、利便性を高め、お客さまに満足していただくということを目指しております。そのため、実施する改正のポイントは3つでございます。

 1点目は、朝のラッシュ時間帯の上り準特急の増発。2点目は夕夜間時間帯の下り準特急の増発。3点目は終電時刻の延長です。ダイヤ改正は、平日が2月22日、土休日が2月24日に実施します。

 1点目、朝ラッシュ時間帯の上り準特急増発について。これまで新宿着7時30分から9時まで、急行、区間急行、各駅停車によるダイヤで運行を行ってまいりましたが、朝のラッシュピーク1時間前後で、具体的には新宿着7時30分から40分ごろ、それから8時50分から9時ごろの時間帯に他種別からの置き換えを含め、より速達性の高い準特急を6本増発いたします。この6本の内訳ですが、京王本線が2本、相模原線が4本です。

 京王本線では、京王八王子〜新宿の所要時間は最速50分であり、これまでの53分から3分短縮されます。相模原線では、増発する4本のうち2本は京王多摩センター始発の電車です。京王多摩センター〜新宿の所要時間は最速38分で、これまでの45分から7分ほど短縮いたします。朝ラッシュ時間帯に準特急を増発することにより、速達性を向上させ、より利便性を高めてまいります。朝活や時差通勤をされるお客さまにぜひご利用いただければと思います。

 続いて2点目の、夕夜間下り準特急の増発についてです。18時台から0時台における夕夜間の時間帯において、特急からの置き換えにより、準特急を19本増発します。都営新宿線方面からのお客さまが準特急の停車駅である笹塚で乗り換えることが可能になりますので、都心方面のお帰りのお客さまの利便性が向上いたします。また同時に、準特急の停車駅である千歳烏山や隣の仙川の利便性を向上いたします。

 3点目は、終電の延長です。高尾線方面は平日の新宿の終電時刻を8分延長いたします。井の頭線においても吉祥寺発明大前行きを新設することにより、明大前で最終の特急に乗り換えることができる時刻を7分延長いたします。これらの延長によりお客さまの利便性を向上させてまいります。

相模原線値下げで減収は?

 高橋専務の説明が終わると、質疑応答に。報道各社からさまざまな質問が出ました。回答は紅村社長、高橋専務、加藤慎司 鉄道事業本部鉄道営業部長、梁瀬哲夫 同本部車両電気部長が分担して行っています。

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――3つ教えてください。1点目、座席指定列車を朝に導入する可能性はあるのでしょうか。2点目、相模原線の加算運賃引き下げにより、業績にどう影響するとお考えでしょうか。3点目、相模原線の加算運賃は今後さらに下がる可能性や予定はあるのでしょうか。

 1点目は、朝や、あるいは高尾山方面など、いろいろなパターンが考えられますが、初めての導入は混乱がないようにと、まずは20時以降(平日)の通勤時間帯から始めてまいります。朝の早い時間帯でも可能と思いますので、その辺は状況を見極めて、今後検討していきたいと思います。

 2点目と3点目の相模原線の加算運賃引き下げについてですが、当然、運賃の値下げですので、その分の営業収益は減収となります。平年度ベースですと単純な計算で12億円です。当然、値下げによってお客さまが増えるかもしれませんが、それは計上していません。加算運賃は、時期は未定ですが、ルールに基づいて下げる予定はあります。


新宿駅、渋谷駅から主要駅までの大人普通運賃(ICカード)。京王多摩川〜橋本間に設定された加算運賃が引き下げられ、10〜20円安くなる(画像:京王電鉄)。

――現状の過密ダイヤで、さらに「京王ライナー」を増発するということですが、どのような工夫を行うのでしょうか。

 平日朝時間帯の上りは、一部増発もありますが、他種別からの置き換えもあります。2011年から早朝の準特急・特急を増発しており、いま11本が走っています。この効果で全体の輸送人員は伸びていますが、ラッシュピーク前後に分かれて平準化が進んでいるという実感を持っています。今回、ピークの1時間に特急・準特急は入っていなかったと思いますが、ここに準特急を入れます。これによりピークの平準化がさらに進むのではないかと考えています。


京王線新宿駅平日18時台の発車時刻表。特急3本が準特急に置き換わる(画像:京王電鉄)。

 平日夕時間帯の下りは、2本続行で走っている特急のうち1本を準特急に置き換えます。都心方面からお帰りの方は、笹塚で乗り換えていただければスーッと帰られると。また千歳烏山と隣の仙川の利便性が上がると考えております。

「対小田急」を京王、どう見ている?

――「京王ライナー」導入による乗車人員、売り上げの増加見込みをうかがいたいと思います。もうひとつは、小田急電鉄も輸送力増強を中心としたダイヤ改正を行いますが、競合する多摩センターなどを通る小田急多摩線の対策は、十分にできているといって良いのでしょうか。

「京王ライナー」は10本すべて増発ですので、座席指定料金分(1席400円)は増収を見込んでいます。輸送人員は、平日はかなり高い稼働率を、土休日は半分を超えるくらいを期待して収支には織り込みたいと考えています。

 小田急さんとの対抗についてですが、我々の一番の課題は多摩ニュータウンの活性化です。そのため当社も小田急さんもダイヤ改正をして利便性を向上させるわけですので、当社のダイヤ改正で、小田急さんに流れるお客さまが止まる、ということは考えておりません。

――多摩ニュータウンの活性化について、鉄道以外での取り組みを考えていらっしゃるのでしょうか。

 多摩ニュータウンは多くの方が同じ時期に入居されて、同じように高齢化している状況と思います。空き家なども増えておりますが、その有効活用などに着手できていません。現在始めていることは、買い物難民がだいぶ増えていることから、移動販売車を拡充したりしています。努力がまだまだ足りないと思いますので、通勤の利便性向上も含めていろいろな施策を打っていきたいと思います。

京王は2月に改正、その狙いは? 「京王ライナー」停車駅どう決めた?

――座席指定料金はなぜ400円なのでしょうか。500円であればワンコインという形でアピールできると思うのですが。

 料金設定はいろいろ検討しました。同様のサービスを提供している会社さんが300〜500円くらいのところで、やはり割高感があると乗っていただけませんので、その辺を考えながら400円という料金に設定しました。

――「京王ライナー」に導入される新型車両5000系はすでに走っていますが、いまの時点でどのような評価を受けていますか。もう1点は、ダイヤ改正日が2月22日で、JRや小田急(編注:いずれも3月17日にダイヤ改正を予定)と比べて約1か月早いですが、これは何か狙いがあるのでしょうか。

 5000系は9月から5編成が入っており「京王ライナー」の準備が整ったという段階ですが、いままでの京王のイメージとは違うシャープなイメージの車です。それから、いままでできなかった施策、先ほどもありましたように座席とか電源コンセントなどいろいろ盛り込んでいますが、こうしたことについて「斬新な車両」と評価をいただいております。概ね良い評価をいただいているかなと思っています。

 2点目の2月22日についてですが、当社は基本的に春のダイヤ改正は2月を予定していますので、従来の改正スケジュールに合わせたという状況です。単独で実施して注目度を上げようというのもありますし、22日は語呂合わせで覚えやすいので、この日にしました。

――「京王ライナー」の停車駅はどのように決められたのでしょうか。

 停車駅は基本的に特急を基本にしています。長距離ご利用のお客さまの利便を図るということで座席指定列車を入れますので、京王八王子も橋本も新宿から約40kmですから、その半分以上の20kmになりますと、はじめの停車駅が府中、京王永山ということになります。同じようなサービスを行っている各社さんを見ると、20〜30kmというところが多いですから、その辺かなぁというところで設定しました。

【時刻表】朝ラッシュ時に運転する6本の上り準特急


ダイヤ改正により、平日朝ラッシュ時に京王八王子、橋本、京王多摩センター〜新宿間で準特急6本の運転が始まる(画像:京王電鉄)。