Jリーグ・ガンバ大阪は、サポーターがナチスを想起させるデザインのフラッグを掲出したということで、公式戦での政治的・宗教的思想を含むもしくは想起させるフラッグ等の掲出を禁止することを発表しました。

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ガンバ大阪のサポーターがナチスに似た旗で応援 NHK NEWS WEB

それにしても不思議なのは、そのデザインがナチスを想起させるかどうか以前に、何故ガンバ大阪とはまったく関係のないデザインのフラッグがスタジアムで掲出されたのかという点です。

そもそもサポーターというくらいですから、クラブを応援するためにスタジアムに着ているはず。ならば当然のこととして、ガンバ大阪のエンブレムなり、ガンバ大阪を想起させる図柄・言葉などを掲出しようとするのが普通の発想のはず。しかし、実際に掲出され問題となったのはサポーターグループの名前を記したフラッグだったといいます。

サポーター側では「アレはナチスを意味するものではなく、SHという文字でサポーターグループ名の略称だ」という主張もあったようですが、「SH」はまったくガンバ大阪を想起させる文字ではありません。「GO」なら「GAMBA OSAKA」の略だという主張も可能でしょうが。

同じように不思議なのが、サポーターのなかでも中心的な存在である通称「コアサポーター」と呼ばれる人々や、応援を先導する「コールリーダー」と呼ばれる人々は、応援するチームのユニフォームではなく、チームカラーなどをモチーフとしたオリジナルデザインの揃いのシャツを着ているケースが多いこと。

これもサポーターというくらいですから、クラブを応援するため当然の姿勢として、クラブが販売する公式グッズを身につけるのが普通の発想のはず。着用し、街を歩くことでクラブのピーアールになり、スポンサーのブランドを広めることにもなるのですから、「サポーター」ならば公式グッズを着用するのが当たり前。

ましてや「コア」サポーターと呼ばれるくらいの人であれば、365日チームのグッズを身につけていてもおかしくはないはずです。しかし、実際はコアな人ほど、むしろクラブのグッズではなくオリジナルのデザインを愛用している。もしかしてクラブの応援よりも自分たちの威力を誇示しようとか、自分たちの存在をアピールしようとでもしているのでしょうか。

あるいはクラブ愛を利用して商売でもしているのでしょうか。クラブによっては主導的立場にあるサポーターがアパレル関係のショップを経営しており、そのショップで制作したオリジナルデザインのシャツを、サポーターグループが集団で着ているようすも見られます。そして、シーズン開幕前には「今シーズンのシャツが出来ました!」などと告知をし、販売促進をするようすも。

これは仮に「政治的・宗教的思想」をまったく含まないものだとしても、クラブにとっては大きな問題がある行為でしょう。本来なら「クラブへの愛」によって見込めたはずの公式グッズの売り上げが、そのクラブ愛にフリーライドする形で無関係のブランドに奪われているのですから。

各クラブはガンバ大阪の一件を機会に自分たちの商売をもっとしっかりと実践していくべきではないでしょうか。サポーターを自認する人にこそ、厳しくクラブ公式グッズの着用を「ドレスコード」として義務付け、オリジナルデザインを排除していくこと。掲出するフラッグ等は事前に確認をし、クラブを応援する内容であるかをチェックすること。クラブとサポーターが互いに認め、協力して生まれたデザインでスタジアムを満たしていくこと。それが問題の再発防止にもつながるはずです。

すべての「ファン」に対してそこまで目を配ることは無理でしょうが、何か起きればクラブも一蓮托生となる「サポーター」については、そうした目配りがあってもいいでしょう。サポーター側も、むしろ望んで受け入れるはずです。その目配りは、自分たちがクラブにとって特別な存在であるという喜びでありますし、自分たちを厳しく律することもまたサポーターとしての矜持となるものなのですから。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)