殿堂入りを果たしたジェフ・バグウェル【写真:Getty Images】

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ボンズとクレメンスは選外となるも、バグウェルとロドリゲスが選出

 先日、2017年度の米野球殿堂入り選手が発表され、ティム・レインズ(エクスポズ他)、ジェフ・バグウェル(アストロズ他)、イバン・ロドリゲス(レンジャーズ他)の選出が決まった。だが、栄誉あるクーパーズタウン行きを決めた3人のうちの2人が禁止薬物に手を染めていたという“告発”が物議を醸している。米FOXスポーツ電子版が報じている。

 名物コラムニストのケン・ローゼンタール記者は「殿堂投票者のステロイドを巡る戦いはボロボロに」というタイトルで、“ステロイド時代”にプレーした選手が候補者となり始めた近年の選考を振り返っている。

 そもそも同記者が記事を書くきっかけになったのは、今年の選考結果発表後にあった元メジャーリーガーとのショートメールのやりとりだという。元選手は「3人のうち2人がステロイドに手を染めていた。私にはこの選考プロセスが理解できない」と疑問を呈するメッセージを送ってきたそうだ。記事では「ステロイドに手を染めていた」と“告発”された2人について、バグウェルとロドリゲスだと指摘。「確定していないが(禁止薬物の)使用に関して疑問を抱く人は多い」とレポートされている。

 ローゼンタール氏は、同じく禁止薬物使用疑惑がつきまとっていたマイク・ピアザ(ドジャーズ他)が昨年殿堂入りを果たしたことで、「そういう(疑惑の)選手を排除することがより難しくなった」と返信。すると「OK、それではボンズとクレメンスはなぜ選出されなかったんだ? パッジ(ロドリゲスの愛称)が有資格1年目で選出? 狂ってないか?」と畳みかけてきたそうだ。

 メジャー史に残る名捕手と称されるロドリゲスだが、MVPと7度サイ・ヤング賞に輝いた名投手ロジャー・クレメンス、さらに史上最多本塁打を誇るバリー・ボンズよりも早く、有資格1年目で殿堂入りを決めたことに異議を唱える人も少なくないようだ。

“疑惑”選手の候補者入りが増え、揺れる個々の選考基準

 クレメンスとボンズはステロイド使用疑惑に関する問題で、裁判に出廷した経験を持つ。一方、ステロイド使用を公言しているホセ・カンセコから禁止薬物使用を告発されたことのあるロドリゲスは、2004年に使用疑惑リストに名前が挙がった際、「神のみぞ知る」と語り、否定しなかった過去がある。

 殿堂入り候補者として“ステロイド時代”を代表するボンズやクレメンス、サミー・ソーサらが対象になった2014年から、禁止薬物使用疑惑のある選手の“取り扱い”を巡り、さまざまな議論がなされてきた。当初は、ステロイド疑惑のある選手は選考対象から除外すべき、という声が多かった。だが、年々“疑惑”を持つ候補者が増えてきたため、投票者でもある全米野球記者協会(BBWAA)に10年以上連続で在籍する記者は、それぞれに判断基準が変化しているようだ。

 今回75パーセントの得票に到達せず殿堂入りを果たせなかったボンズとクレメンスだが、得票率は昨年度の40パーセント台からクレメンスは54.1パーセント、ボンズは53.8パーセントとアップ。この事実もまた、判断基準の変化を象徴しているのかもしれない。投票権を持つローゼンタール記者は、ここ数年で自身の判断基準が変わってきたことを認めつつ、「明確なことは1つ。PED(禁止薬物)の壁は崩れ落ちている」と指摘している。

 昨年のピアザ、今年のバグウェルとロドリゲスと、禁止薬物使用に関するグレーゾーンの選手が、クーパーズタウン行きの切符を手にする流れが生まれたのは事実だ。この流れを受け、ボンズやクレメンス、メジャー歴代15位の通算555本塁打を誇る、独立リーグ・四国アイランドリーグ(IL)plus高知のマニー・ラミレスらも、いつの日か晴れ舞台を踏むことができるのだろうか。