近畿大学アンチエイジングセンター副センター長の山田秀和氏

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シワ、たるみ、薄毛、体形......、年をとると大きく変化する「見た目」は、外見だけの問題なのか、内面の反映として病気のリスクや予兆を知ることができるのか。医師や専門家らが、科学と臨床の現場の両方から「見た目」をひとつの指標として考え、研究する「第10回 見た目のアンチエイジング研究会」に出席した。

世界中の研究論文からピックアップ

研究会は、2016年7月17日に東京大学伊藤国際学術研究センターで行われた。

最初に、近畿大学アンチエイジングセンター副センター長の山田秀和氏が講演した。「見た目のアンチエイジング」を考える際に大切なのは、運動や食事、精神面での対策のほか、感染症や腸内細菌、夜間のブルーライト、日光など「環境」に関する対策だと述べた。

そのうえで、「見た目のアンチエイジングアップデート2016」と題し、近年発表された研究論文の中から山田氏が注目したものを紹介した。例えば、慢性疲労に悩む人は腸内疾患のケースがあり、そこには腸内細菌も深く関わっている可能性を示すもの、硬水は乳幼児の湿疹リスクを高める、日光や紫外線だけでなく近赤外線も眼に影響することなどを示唆する論文だ。

そのほか、カロテノイドがたっぷり入ったスムージーが、アジア人の肌の色の黄色みや赤みを増やすというユニークな研究もあった。山田氏は、今後は運動すると肌が若返るのかということに注目したいが、現時点では評価できる論文がまだないとした。

見た目に有効な再生医療とは

近年、アンチエイジング医療で注目されているのが、自分の細胞を利用して組織を回復する「再生医療」だ。見た目に関わる形成外科や美容医療分野でも治療が行われている。医療提供機関として届け出されているのは、2016年6月30日現在で1099件だ。

研究会では、自治医科大学形成外科教授の吉村浩太郎氏が、再生医療のメリット・デメリットなど基礎知識から、最新の再生医療の手法までを紹介した。吉村氏は、脂肪吸引などから得られる脂肪幹細胞を用いた再生医療を専門としている。脂肪幹細胞を使って傷を早く治したり、炎症を抑えたりするほか、乳房再建、顔面の若返りなどにも使われる。

そのほか、日本で行われている再生医療についても講演があった。関西医科大学の形成外科学講座教授の楠本健司氏は、多血小板血漿治療(PRP)を用いたアンチエイジング法を紹介。PRPは、自分の血液を加工して、血小板を濃縮・活性化させ、治療したい箇所に注入する治療法だ。創傷治癒や関節炎、歯周病、骨折治癒、骨再建などのほか、顔のシワ、育毛などへの応用もあるとした。

湘南鎌倉総合病院の形成外科・美容外科部長を務める山下理絵医師は、熱傷治療で日本でも成果を上げている皮膚培養を取り上げた。また、現在日本では法律により治療できないが、技術的には、髪の毛のある男性から幹細胞を取り出して発毛させるところまで進んでいるという。

医師・専門家が監修「Aging Style」