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●業務時間内のシーンに合わせてBGMを流す
職場環境の改善を目指した取り組みとして、音楽を採り入れる方法を提案しているのがUSENだ。2013年2月より「Sound Design for OFFICE」(サウンドデザインフォーオフィス)というサービス名で、オフィスに合った楽曲を選曲・編成したチャンネルを「集中力向上」、「リラックス」、「リフレッシュ」、「気づき」という4機能にカテゴライズ。受付などパブリックスペースだけでなく、ワークスペースでも利用できるBGMとなっている。

「Sound Design for OFFICE」は2013年から提供されているが、USEN 法人営業統括部 オフィスサウンド営業部 部長 齋藤淳氏によれば、オフィス向けBGMをマスキング効果として利用しているケースもあるという。また、ストレスチェックの義務化以降は、職場環境の向上やメンタルケア対策として改めて着目されており、問い合わせ件数が大幅に増えているという。

この「Sound Design for OFFICE」(以下、SDO)を2014年10月から導入しているのが、三井ホームだ。本社が大きく南と北にフロアが分かれている中、まずは南側で採用された。

「80〜90人程度が1フロアで働いていますが、『以前は静かすぎて息がつまる』、『会話しづらい』というような意見がありました。そこで、前総務部長が以前のオフィスでBGMを利用して良かったという経験を持つことから導入を検討し、大学教授などが監修したオフィス向けの「SDO」を知りました」と語るのは、三井ホーム 総務部 総務グループ 主任の高橋航介氏だ。

一般のUSENとは違い、オフィスに特化していることが決め手となり、本社では「SDO」をシーンに合せて活用することにした。

具体的には、朝の始業前にあたる8時15分から始業時間の9時までの45分間には、小鳥のさえずりなどを含むヒーリング効果があるというインストゥルメンタルが流れる。その後の9時から10時の始業後1時間は、さわやかな音楽で雰囲気づくりをする。昼休みにあたる12時から13時は、カフェ風の音楽が流れリラックスを促す、終業に向けた15時から18時は、SDOでしか聞けない集中力アップ効果がある音楽が流れる。

「業務時間内全ての時間に流れるという使い方には抵抗があったので、音楽が流れる時間と流れない時間があるようにタイマー設定を行いました。午後の集中力アップに関しては、開始当初は週に一度だけ利用していましたが、その後毎日利用するようになりました。それ以外は、開始当初から同じ効果のあるチャンネル内で、多少の調整はあるものの、設定に変更はありません」と高橋氏は語る。

●「ロッキー」を合図に終礼実施で残業時間減を実現
もう1つ使われているのが「ロッキーのテーマ」だ。これは終業時刻の18時になると流れるが、音楽が流れるとフロアのあちらこちらで社員が一斉に立ち上がり、部署ごとに簡単な業務報告を行う終礼が実施されているのだ。この時点で自分の業務が終わっていれば、報告して終業となる。

「以前から終礼を行うことになっていましたが、業務を中断するタイミングが掴めないまま実施されないという事がよくありました。その結果、自分の業務は終わっていても、伝えづらく残業をしてしまうような状態がありました。それがロッキーのテーマを流すようになってからは、きっかけが掴みやすくなったお陰で終礼が定着しました」と、高橋氏は導入効果を語る。

実際にフロアで聞いてみると、BGMの音量は意外と小さい。天井にBGM用のスピーカーを埋め込んでいるため、場所によって聞こえ方は多少違うが、スピーカーの近くでも電話中に音楽が邪魔にならない音量だ。それでも、音楽が鳴ればはっきりとわかるという。

「利用開始後しばらくしてアンケートを行ったところ、USENを導入したフロア南側では8割が終礼を行っていたのに対して、北側では3割程度しか実施されていませんでした。終礼が残業減につながっているかというアンケートでも、南側が9割以上つながっていると回答したのに対して、北側は5割強でした」と高橋氏は説明する。結果として、南側の残業時間は前年比15%減という効果が出たという。

このアンケートでは別途音楽を流すことの効果、印象などについても意見を聞いており、中には、音が気になる、効果があるのかわからないというような否定的な意見もあるが、「朝気持ちよく仕事がスタートできるようになった」、「業務中も心地よく仕事ができるようになった」というような回答が6割を超えるなど、概ね好評な結果となった。一方、導入していなかった北側でも5割以上がBGMの導入を希望したという。

●音で仕事のメリハリ&コミュニケーション活性化を実現
「アンケートの中で、導入済の南側から未導入の北側部署へ異動した人が、ロッキーのテーマが流れないので終礼がなくなり残業が増えたと回答したのが印象的でした。また終礼以外にも、コミュニケーションが良くなった、会話がしやすくなったという声もあります。以前は静かすぎてちょっとした質問をするにも気が引けていたのが、今なら話しやすいという意見も有りました」(高橋氏)

業務時間中に音楽が流れない時間をつくることでメリハリも付きました。以前から始業・終業時間や昼休みの開始・終了を告げるようなチャイム等は鳴らしていなかったため、従業員は自分で時計を確認しながら仕事をしていたが、今は音楽が切り替わったり、鳴り始めや終わりで自然と時間を把握できるようになったという。

残業時間削減という目に見えるわかりやすい効果だけでなく、仕事のしやすさ、コミュニケーション改善といった副次効果も感じているようだ。

USENではBGMがオフィスにもたらす効果として、音の雰囲気が人に与える落ち着きや高揚感といった気分の変化をメンタルケアに活用する考え方のほかに、受付等で流すことによる企業の好感度アップといったイメージ効果や、オフィス内外からの騒音を感じづらくするマスキング効果なども挙げている。おもしろいところでは、女性向けの冷え対策のできるチャンネルや、涼感を持たせるチャンネルといったものもあるという。

80以上のチャンネルが用意されており、テーマごとにチャンネルが選択できる形になっているため、利用したいシーンや目的を伝えることでチャンネル選びのアドバイスを受けることも可能だ。スピーカーやチューナーの設置は必要となるが、オフィス環境に大きな変化を加えず、人や働き方へのよい影響を出しやすいサービスだけに、ストレスチェックが義務化された中で解決策の1つとして注目されそうだ。

(エースラッシュ)