一流は全員「下手な鉄砲」を撃っている

写真拡大

■じゃんけんの連続! やり続ければ必ず勝てる

「失敗をしてもいい!」
「失敗は成功の元だ!」

と言われても、やっぱり最初の一歩が踏み出せないのが、人間です。

何かに挑戦するとき、私たちはうまくいかないことが続くとめげそうになります。そんなとき、「じゃんけんの法則」で発想することが有効です。

▼じゃんけん、じゃんけん、またじゃんけん!

じゃんけんの法則は、もともと経済評論家の勝間和代さんの著書から気づきを得たものです。

『「有名人になる」ということ』という本で、次のように書かれています。

≪さまざまなチャレンジは全て確率論です。すなわち、確率が低い勝負であってもそれを繰り返し行っていけば、いつかは負ける確率が下がってどこかで勝てるのです。ただ、多くの人はそのような努力を50回、あるいは100回は続けません。しかし、もしチャレンジしてもとくに失うものがなければ、勝負をし続けることです。そうすれば必ず勝てます。私は多くの有名タレントや有名経営者にインタビューする機会を得ましたが、ほんとうに、すべての人に共通するのが、この「じゃんけん、じゃんけん、またじゃんけん」の精神です≫(勝間和代著『「有名人になる」ということ』ディスカヴァー・トゥエンティワンより)

じゃんけんのメタファーが良い理由は3つあります。

1つめは、負けても落ち込まない
2つめは、いつかやり続けると勝てると分かる
3つめは、何度も勝負すれば良い

ということがあらゆる目標達成にも当てはまるからです。
ささいな例ですが、私が実践したじゃんけんの法則をお話したいと思います。

■一流ほど「下手な鉄砲」を撃っている

私は新人時代、情報システムの営業部に配属されました。ここでは新規顧客開拓を専門とする部署です。まずは法人顧客に電話をするところから仕事をスタート。とにかく、電話をしても居留守を使われたり、素っ気ない態度で断られる連続です。「あー、こんなことやっても会ってくれるところなんでないよ」と思いながら電話をしていました。

ところが、15社目の情報システム担当者は「じゃあ、一度お話をお聞きしましょうか?」と言ってくれたのです。私は毎日午前中は電話アポを取りました。その経験で分かったことは、30件に1回はアポが取れるという確率です。つまり、30回じゃんけんをすれば1回はOKがもらえる。

このように考えれば、29回断られることのダメージが少なくなったのです。

▼なぜ初出版の企画に11社が殺到したか

私は、今でこそ10冊の本を書き、出版のご依頼をたくさんいただきますが、6年前の処女作を書く時には、出版界に一切人脈や知り合いはいませんでした。

そこで、私が構築した「続ける習慣メソッド」に興味を持ってくれる出版社を探すべく、じゃんけんの法則を適用しました。飛び込み企画の郵送物は、なかなか目を通してくれないのが業界の常。でも、見てくれる人もたまにいる。ならば、たくさん企画書を送ろうと、自分が大好きな本をリストアップし、33社の出版会社に企画書を郵送したのです。

結果は……。予想外の11社から連絡がありました。「一度お会いしましょう」という連絡が次から次に来て、処女作から出版社を選べる立場でスタートできたのです。

これも、1社送ってダメだから次と考えていたら、精神的ダメージが大きいものです。大切なことは確率論で考える。そして、大量行動する。

一定のクオリティを持つことができれば、ことわざの「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」は正しいと思います。

それが証拠に、私の体験を話して「本を出版したい」という人の相談に乗った際、「まずは30社に企画書を送ろう」とすすめました。すると、どんなに低い確率でも6%の返答率。つまり、2社からは返答があったのです。

何もしないと、「いつか本を出したい」という夢のまま終わるものが実際行動してみると、2社の出版社と直接話ができる現実が到来するのです(最終的に、全員、初出版であるにも関わらず10人中6人が書籍化にゴーサインが出ました)。

量を試さなければ、絶対に到達できない結果があります。このじゃんけんの法則は、恋愛でもスキルアップでも目標達成でも全てに当てはまることだと私は考えます。

■一流は第一歩目の「恐さ」をこう乗り越える

しかし、そうは言っても最初の一歩が出ないのが人情。。人間にとって「初動」ほど気が重たく力のいることはありません。

裏を返すと初動をコントロールできれば、圧倒的にそのあとはスイスイ進むものです。そこでやって頂きたいのが「ベビーステップで踏み出すこと」です。

先ほどの営業アポの例で言えば、毎日やれば行動ハードルは低くなるものの、最初の1件目で電話をするのは勇気が必要です。

その気持ちの重さに負けると行動はストップして、最初のじゃんけんができなくなります。

そこでベビーステップ。小さな一歩を考えることです。

私は、コーヒーを買ってきてぐいっと飲んだら、電話先リスト(エクセル)を立ち上げます。そして、その記録を見渡します。一定確率でアポが取れている経験則を噛み締めます。一瞬、弱気になる自分に「大丈夫」と言い聞かせます。

その次に、電話アポのトークメモを見ます。ここでは最も魅力的で、相手が思わず会いたくなるようなトークが書いてあります。一生懸命に磨き上げた文です。これを読むと電話で話すことが頭の中でイメージできます。そうするとエンジンがかかるので、最初の1件をスムーズにかけることができます。

ベビーステップは、電話リストとトークメモを見ること。これが全ての初動でした。

▼できること、簡単なことを最初にやる

出版の例で言えば、50社に企画書を郵送しようと考えた後、でもどうすればいいのかと途方に暮れました。

そこで、「自分が大好きな本を作っている出版社と編集者に送ればいいんだ」と喜楽に考えて、自宅本棚にある好きな本の出版社名をエクセルにタイピングするところからスタートしました。

33社リストアップできたところで、HPから住所をコピペしました。

次に郵送する封筒に宛先を書きました。送付状をつくり、企画書を入れて送る。

小さく行動ステップを分けていくと、実にシンプルなのです。ただ、このように小さく分解して初動を取ることに集中しないと、大きな作業項目をイメージしていては「初体験」を乗り切ることはできません。

別の方にも同じようにすすめました。郵送するところまで踏み切れない人には、「出版社のリストアップだけをやりましょう」とすすめます。次に、「封筒に宛先だけ全部書いてしまいましょう」と背中を押す。ここまでやれば、郵送までやらない人はほとんどいなくなります。

全てはエクセルに出版社をリストアップするという初動から始まっています。

じゃんけんの法則、初動を踏み出すためにベビーステップをお話してきました。ぜひあなたのケースに当てはめてみてください。

すべては確率論。大量行動という思考・行動習慣をお勧めします。

(習慣化コンサルタント 古川武士=文)