浦和レッズの無敗優勝で終わったJ1ファーストステージから2週間――。今週末の7月11日からは早くもセカンドステージが幕を開けるわけだが、今シーズンの前半戦を振り返ってみると、あいかわらず助っ人外国人の活躍が鳴りを潜めている印象は否めない。それは、得点ランキングを見れば一目瞭然。近年の傾向に大きな変化はなく、その上位は日本人で占められている。

 はたして、助っ人外国人が派手な活躍をしてリーグを引っ張る時代は終焉してしまったのか? そんな疑問が頭をかすめるところではあるが、毎年日本にやって来る個性豊かな助っ人に注目するのも、Jリーグ観戦の楽しみのひとつ。実際、今シーズンも日本人だけでは賄(まかな)えない部分をカバーすべく、Jの舞台で活躍する新助っ人外国人たちもいる。

 今回は、そんな大きな期待を背負って今シーズン来日した新外国人たちのプレーぶりにスポットを当て、ファーストステージにおける「あたり」と「はずれ」を整理してみたい。

 まず、「あたり助っ人」の筆頭は、ウワサにたがわぬ質の高いパフォーマンスで見る者をうならせた、横浜F・マリノスのFWアデミウソン(21歳)だ。

 開幕直前に加入したため、デビューは第2節・FC東京戦となったが、ドリブル、パス、スピード、センス......と、周囲とは別格のクオリティで存在感を示し、試合を重ねるごとに実力を発揮。意外と早い段階でチームに溶け込むこともできた。さすが、これまでブラジルで年代別代表(U−17、U−20、U−21)の10番を背負ってきたタレントである。

 本来のポジションは1.5列目もしくは2列目で、ワンタッチ、ツータッチで周りを生かしながらチャンスメイクするのが最大の特長。しかし、FWに故障者が続出したマリノスでは1トップを務めることもあり、ここまで4ゴールをマークするなど、得点能力も兼ね備えていることを証明している。

 後半戦からは大黒柱のMF中村俊輔との共演が待っているだけに、ふたりの創造力がどのように融合するかは、マリノスファンならずとも注目が集まるところ。ディエゴ・フォルラン(元セレッソ大阪・ウルグアイ代表)が去った今、タレント性という点において最も質の高い助っ人と言えるだろう。

 逆に、ブラジル時代はほとんど無名だったにもかかわらず、予想外のヒットとなっているのが、川崎フロンターレのDFエウシーニョ(25歳)だ。もともとは右サイドバックが主戦場で、プレースタイルは超攻撃的。足もとの技術に優れ、正確なキックを武器とするため、守備よりも攻撃で実力を発揮するタイプである。

 それもあってか、チームが3−4−3(または3−4−1−2)を採用するときはウイングバック、4バックを採用するときはサイドハーフを務めることもあり、攻撃における重要なアクセントとなっている。しかも、第15節〜第17節と、ファーストステージ終盤で3試合連続ゴールを決めるなど、得点力も上昇中。相手ペナルティエリア付近で「違い」を見せるようになってきたため、セカンドステージではDF登録ながら攻撃的MFとして活躍しそうな気配が漂っている。

 もうひとり、ここで取り上げておきたい助っ人新外国人は、湘南ベルマーレでセンターバックを務めているアンドレ・バイア(31歳)だ。

 アンドレ・バイアはブラジル時代、フラメンゴやパルメイラスといった名門クラブでプレーした経験を持ち、オランダの強豪フェイエノールトでも7シーズンにわたって活躍した、隠れたビッグネーム。ファーストステージでは的確なポジショニングと粘り強い守備を武器に、地味ながら安定したパフォーマンスを見せて高い評価を集めた。

 ここまでの出場時間も、チームトップ(GKのぞく)のMF菊池大介の1481分に次ぐ1440分と、早くもチームに欠かせない存在となっている。セカンドステージもこのベテラン助っ人DFのパフォーマンスが、ベルマーレの浮沈のカギを握っていることは間違いなさそうだ。

 その他、チームの不振によってその活躍ぶりにスポットが当たらないものの、清水エスパルスのFWピーター・ウタカ(31歳・ナイジェリア)、松本山雅FCのFWオビナ(32歳・ブラジル)も、いわゆる「あたり新外国人」に数えられる。いずれもセカンドステージでの巻き返しが期待されるチームだけに、今後の活躍が期待される。

 一方、わずか数ヶ月で期待外れの烙印を押された新助っ人外国人もいる。たとえば、開幕間もなく戦力外となってチームを去ったふたりのブラジル人、ヴァンフォーレ甲府のMFブルーノ・ジバウ(21歳)とFWウィリアム・エンリケ(23歳)がその典型だ。

 ブルーノ・ジバウはパルメイラス育ちで、すでにトップデビューも果たしていた期待のホープ。司令塔的ボランチとして大きな期待を寄せられたが、出場はわずか1試合で退団。また、テクニックとスピードに優れたFWとして注目されたウィリアム・エンリケも、チームに馴染めないまま帰国した。

 もっとも、「はずれ」に終わったのは彼らだけの問題とは言えず、むしろ開幕から白星が遠ざかり、2ヶ月足らずで樋口靖洋監督が退任するという事態に陥ったクラブ側の責任も大きい。そういう意味では、彼らにとっては不運な来日だったとも言える。

 同じく、ベルマーレに新加入したブラジル人FWブルーノ・セザル(29歳)も期待外れに終わった助っ人に数えられるだろう。7試合に出場しながら、1ゴールも挙げることなくファーストステージの途中で退団を余儀なくされている。また、ここまで8試合1ゴールのFWアリソン(19歳)も活躍できずに苦悩中。セカンドステージで巻き返せるかが注目される。

 そして、鹿島アントラーズに新加入したブラジル人FWジネイ(31歳)も、期待通りの活躍ができていない助っ人のひとりだ。

 スペインでプレーした経歴も持つベテランは、契約前のメディカルチェックで発覚した故障が完治するのを待って、満を持してデビューした期待のアタッカーだった。ところが、デビュー後も故障が度重なり、ここまでの出場はわずか4試合。プレー時間222分で1ゴールという数字は確率的には悪くないが、セカンドステージを万全の状態で戦い抜けるかは微妙なところだ。FWダヴィ復帰までの即戦力としては、「はずれ」の烙印を押されても仕方のない状況にある。

 その他、FC東京でもDFカニーニ(30歳・イタリア・契約満了)とFWラサッド(29歳・フランス/チュニジア)がファーストステージで退団するなど、フィットできずに終わった新助っ人は意外と多い。逆に言えば、浦和レッズやガンバ大阪のように、上位クラブはこのような「はずれ」を避けるべく、初めて来日する新外国人選手の獲得を避けるのが近年の傾向だ。限られた資金で良質な"初物"の助っ人を探さなければいけない中位以下のクラブにとっては、ますます厳しい環境と言える。

 いよいよ幕を開けるセカンドステージ、新助っ人外国人がどんな活躍を見せるのか、そっと見守りたい――。

中山淳●文 text by Nakayama Atsushi