林譲治の長篇SFとしては『記憶汚染』以来、ひさかたぶりの近未来を舞台にした作品。203X年の日本では、各分野でAI利用が進んでいるものの、AIではこなせない業務については慢性的な人材不足となり、優秀な才能にはマルチタスクで仕事を割り当てざるをえない状況だった。いっぽうで、世界情勢はいっそう複雑になり、人口減少と経済力低下が顕著な日本の安全保障も見直しを迫られている。かくして、経済や軍事のみならず地理