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●小さくて高音質、しかもハイレゾ対応ティアックのReferenceシリーズは、ひとことでいえば「凝縮感」が最大の特徴だ。たとえば2012年に発売された「UD-501」など多くの製品は、フルサイズコンポの半分近い、幅290mmというコンパクトさであり、そこにDSDネイティブ再生や非同期伝送対応のUSB入力など先端機能を詰め込んでいる。ラックマウント機器を思わせるハンドルなど個性的なデザインテイストも手伝い、ミニコンポ/デスクトップオーディオの分野に独自の存在感をもたらしている。

ここに紹介する「HR-S101」は、その系譜に連なる「マイクロコンポ」だ。アンプ/センターユニット「AI-101DA」は幅182×高さ53×奥行き191mmとより小さくまとめられ、設置性はさらに向上。密閉型のスピーカー部も幅116×高さ182×奥行き167mmと、ノートPCの横に設置しても違和感ない大きさとなっている。

小型化が進められたとはいえ、機能面は充実。AI-101DAのパワーアンプには高効率Class-Dアンプを採用、コンパクトなファンレス設計ながら26W+26Wという出力を提供。100mW+100mW(32Ω)の出力を持つヘッドホンアンプも搭載しており、インピーダンスが高めのヘッドホンも余裕でドライブできる。

もちろんハイレゾ再生も可能だ。搭載しているDACは実績豊富な「BurrBrown PCM1796」、DSDは非サポートながら最大192kHz/24bitの音源に対応する。非同期転送モードをサポートしており、ジッター低減の効果も期待できる。入力端子はUSB TypeB×1、光デジタル×2、アナログ×1を装備、PCのみならずテレビやビデオレコーダーも接続可能だ。

アップコンバート機能が装備されていることにも注目したい。リモコンの「UPCONVERT」ボタンを押せば、44.1kHzの音源が88.2kHz相当に、48kHzの音源が96kHz相当にと、デジタル入力(USB/光)した信号が拡張される。ハイレゾ音源を入力した場合、88.2kHzは176.4kHz、96kHzは192kHzへとそれぞれ拡張されるが、176.4kHzと192kHzは拡張処理されない。基本的にはCD品質の音源/圧縮音源をよりよく聴かせるための機能という認識でいいだろう。

スピーカーの「LS-101」はリアバスレフ方式で、20mmソフトドーム型ツイーターと70mmのコーン型ウーファーの2ウェイ構成となっている。高さはアンプ/センターユニット「AI-101DA」の幅と同じ182mm、並べたとき美しく揃うところがポイントだ。

天然木突板を使ったキャビネットの質感の高さも見逃せない。ウォールナット調というだけでなく、多層塗装光沢仕上げによりワンクラス上の高級感がある。スピーカー端子にはスクリュー式を採用し、ケーブルを確実に固定できる。

ところで、本機には「HRラウドネス」という機能が用意されている。DSP処理により、小音量時でも低域の迫力と高域のヌケを保ち、メリハリある再生を可能にしてくれるのだ。入力した信号は、デジタル/アナログを問わず96kHz/24bitのデジタル信号に変換して処理されるため(ただしハイレゾ音源は無変換)、音質改善効果も期待できる。小さなボリュームで音楽を楽しむときに活用したい機能だ。

●スマートフォンと相性良好HR-S101には再生装置が付属していないため、音源は必ず外部機器に頼ることになる。ステレオミニ端子からアナログ入力も可能だが、主要なソースはデジタル、特にスマートフォンに照準が当てられていると見てよさそうだ。

スマートフォン上の音源を再生する場合、入力経路はBluetoothかUSBということになる。アンプ/センターユニットのAI-101DAは、Bluetooth/A2DPのコーデックとして標準のSBCに加え、AACとaptXをサポートしており、iOSデバイス(SBC/AACに対応)とAndroidデバイス(機種によってはAACとaptXにも対応)のどちらでも良好な条件でワイヤレス再生できる。

USB入力でWindows PCやMacとも接続できるが、サイズ感や取り回しのよさからいうとスマートフォンのほうが好相性に思える。iOSデバイスであればカメラコネクションキットを使えばいいし、Androidも先日リリースされた「ONKYO HF Player」とUSB OTGケーブルを用意するだけだ(AOA 2.0対応の端末が必要)。

Bluetoothで聴いたときの印象だが、CDから取りこんだ無圧縮の同じ曲をiPhone 6とXperia Z Ultra sol24で再生すると、面白いほど音の違いが感じられた。Xperiaのほうが低域のリアリティがあるのだ。ベースの輪郭がぼやけず、バスドラムのキックも鈍らない。音場感や奥行き感もXperiaのほうが上だ。

一方のiPhone 6は、Xperiaと同一条件の楽曲ファイルであるにもかかわらず、一音一音の輪郭とツヤが若干色褪せたようで音場も狭く感じる。Bluetooth/A2DPの符合化手順を考えても、コーデックの違い(iPhone 6がAAC、XperiaがaptX)による音質差は大きいと言わざるをえない。

なお、Bluetooth入力ではアップコンバート機能を利用できないため(USB/光入力時のみ対応)、ワイヤレスを中心に楽しむならばaptX対応のデバイスを用意しておきたい。MacユーザーでもあるAppleファンであれば、iPhoneではなくMacBook AirなどaptX対応のMacとペアリングすれば、AACやSBCとの音の違いを確認できるはずだ。現行モデルのMac miniやMacBook Pro、MacBook AirはaptX対応のチップを搭載している。

より音質を追求するのであれば、USB接続を選ぶことになるだろう。非同期転送によるジッター低減のメリットを得られるうえ、前述したとおりアップコンバート機能を利用できる。有線接続のためBluetoothに比べると使い勝手は低下するが、解像感と音場感は格段に改善される。小粒ながらメリハリある音を出すスピーカーの地力もあるが、ベースやバスドラの印象は一変、ここまで低域の再現力があるのかという発見もあった。

このクラスのコンポが"ハイレゾ対応"を謳うと、そこまでの再生能力があるのかと訝しむ声も耳にするが、本機に関していえば十分満足できる素地があるといえる。壁からある程度離す、インシュレーターを置く、といったスピーカーセッティングを施せばきちんと音で応えてくれる。「HRラウドネス」を有効にすれば、小音量時でも解像感と低音の迫力を損なわずに再生できる。5万円を切るというプライシングも踏まえて、ハイレゾ入門機として好適だ。

(海上忍)