A:30代「とりあえず賃貸」家計

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結婚、出産、マイホーム購入……人生にはいろいろな分岐点がある。その都度、「現在加入の保険がベストかどうか」不安──。そんな人に、家計再生コンサルタントの横山光昭氏がお届けする、世代別・家計別の保険の見直し術。

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A:「とりあえず賃貸」家計
年収:夫500万円(ボーナス年間80万円)妻206万円(同50万円)
貯蓄額:560万円
家族構成:夫37歳(公務員)、妻36歳(建設会社事務)、子2歳(男)

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「とりあえず賃貸」の家計は、夫が転勤族で単身赴任も多いため、家の購入の検討をしたことはない。貯金を月々10万円以上、ボーナスからも90万円するなど、もともと家計は手堅かったものの、保険見直しは一度もしないままだった。加入していたのは親戚から紹介されるままに入った定期保険特約付き終身保険で、夫婦とも「保険はどれも同じ」という考えの持ち主だ。

「定期保険特約付き終身保険は、アカウント型終身保険に似て、更新時に月の保険料が上がる商品です。30代前半の今は2万円弱ですが、40代、50代になると3万〜5万円になります。その代わりに提案したのが、収入保障保険です。もう一人子供がほしいということだったので2人の子供が独立するまで、つまりご主人が65歳になるまで収入保障が受けられる設計に」(横山さん)

■定期特約付き終身保険をやめて、保険料3割カット

【家計簿診断】

月収は世帯全体で50万円近く。ボーナスも年間130万円あるが、家族旅行などで貯金額が560万円と少なめ。そこで外出・買い物は自動車ではなく電車や自転車を利用して2000円縮減、外食やお取り寄せ食材のとりやめなどで食費を5000円カット。貯金は月12万円、ボーナスからも年間90万円していたが、保険見直しで浮いたお金も回すことができた。

【保険診断】

Beforeでは生命・医療保険の保険料は夫婦合計で月2.2万円。Afterでは保障額と保障内容を充実させたにもかかわらず、保険料を月1.6万円と約3割カットできた。働いている妻に万一があった場合の収入保障保険に加入したことが、この世帯の保険に対する価値観を象徴している。

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B:「背伸びマイホーム」家計
年収:夫384万円(ボーナス年間80万円)
貯蓄額:180万円
家族構成:夫34歳 会社員(中堅商社総務)、妻29歳(専業主婦)、子4歳(男)、1歳(女)

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「背伸びマイホーム」の家計は2年前に庭付きの一戸建てを購入。妻は、子供に英会話を習わせるなど教育熱心だが、その分、コストもかかって月々の預貯金額はゼロ。子供2人、妻は専業主婦ということで、夫の死亡保険には手厚く3つの商品に加入していた。

「以前入っていた収入保障の保険料は4400円(月15万円×60歳まで)でした。入り直した収入保障の保険料は8100円。高くなりましたが、月20万円で65歳まで保障してくれる。しかも、単に死亡時だけではなく、ケガ、病気などで寝たきりや介護が必要な状態になって働けない状態になったときにもお金が支払われる守備範囲の広いタイプ。住宅ローンを組んだときに加入する団体信用生命保険はそうした事態まではカバーされませんからね」(同)

AとBの世帯の保険見直し結果で共通しているのは、妻の死亡保障と同じく収入保障に加入している点だ。

「A世帯は共稼ぎ、B世帯は専業主婦と立場は違いますが、双方とも子供がまだ小さい。奥さんに何かあったとき困るのはご主人。仕事を辞めるわけにはいかないでしょう。そこで、ベビーシッターなどを依頼する費用として、月5万〜10万円の収入保障が得られる保険に入った。奥さんが亡くなったとき、100万や200万円のまとまった額が支払われる終身保険に入る家庭も多いですが、収入保障のほうが長期的に安心が得られる場合もあります」(同)

■保険料6000円減で、保障内容は充実!

【家計簿診断】

預貯金はボーナス80万円のうちの20万円を貯金するだけで、月々の預貯金は0円だったが、何とか2.45万円積み立てることに。削減したのは、やはり食費。妻が子育てのストレス発散でお菓子を大量購入(月5000円)する悪癖を解消すると宣言。日用品のまとめ買いもやめて、月3000円カット。また、夫婦ともスマホゆえ、プロバイダ代を解約。ボーナスの半分は住宅ローンの繰り上げ返済に。

【保険診断】

夫婦合わせて計2.9万円の保険料を払っていたが、6000円の削減に成功した。しかも、夫の死亡時の保障額はアップ。医療保険は、「60歳払い済み」から終身タイプへ。あとで、よりよい医療保険が登場したときに乗り換えやすい商品へ変更した。

■30代がかかりやすい保険の病気「とりあえず無料相談」症候群

20、30代の若い世代が、結婚や子供ができたタイミングで保険に入るとき、増えているのが街中の無料保険相談所の利用だ。

「利用するのは悪くはありません。ただ、1〜2軒だけ相談して、勧められた保険プランを疑わずにそのまま受け入れるケースが少なくありません」(同)

保険ショップは保険会社からの販売手数料で運営される。手数料が高い保険商品とそうでない商品があり、ショップが高い商品に誘導することもあるといわれる。

「相談料を払って、本当に中立を貫くファイナンシャルプランナーなどに聞くのが理想的です」(同)

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント・ファイナンシャルプランナー。
6000人以上の貯金ゼロの人々を再生させた実績を持つ。各世帯の収支バランスを見ながら適切な保険を選ぶ。

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(大塚常好=文)