不思議な楽器と出逢える「音系電子工作」には「おもしろいできるコトが残っている」

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3Dプリンターだ、マイコンだと、ものづくり系のニュースを見かけない日がないというこの頃だ。
そして、中には自分で楽器を作ってしまおうという人も、実は多い。
音系のマニアというと、いわゆるオーディオマニアの方たちを筆頭にかなり濃いコアな層がいるという印象だ。さらに、自分で楽器を作るなんて、どんな人なんだろうと、2月11日に開催された自作電子楽器の集いをのぞいてきた。

◎オトアソビという自作楽器の集い
今回おじゃましたのは「oto asobi vol2」。有志により行われている、自作楽器や音系のネタを発表しようという会だ。会場は東京大学本郷キャンパスの福武ホール。

真新しい建物の地下にある福武ホールに入ると、すでに展示が始まっており、『タモリ倶楽部』にも登場した「電子楽器ウダー」や、ポケミク(学研の『大人の科学マガジン』特別編「歌うキーボード ポケット・ミク」のこと)を音源にした「ショルキーボカロン」、パーツを自由に配置できるMIDIコントローラー、楽器の機能をミニマムに取り出した機材など、不思議な楽器が並んでいる。


薙刀商会(ノイズを発生する回路やコードを演奏することに特化した楽器などなど、不思議な機材がたくさん)


自作楽器について、お話を聞いてみると、いわゆるMakerブームとはちょっと違う印象だった。
ここ数年で広がってきている感のあるMakerブームだが、そこにはArduinoやRaspberryPiなどの扱いやすいマイコンボードであったり、普及版の3Dプリンターであったり、ツールが身近になってきたことが根底にある。

でも、ここにいる人たちは、どうもそんな感じじゃない。
確固たる「こだわり」や「ポリシー」があり、それを実現するために「ツールがあろうとなかろうと作り始めていた」という感じなのだ。もちろん、ツールが身近になってきたことや盛り上がっているブームの影響はあるのだろうけど。

◎自作楽器のいろいろ
展示されていた自作楽器を一部、ご紹介。
宇田道信さんが作る「ウダー」
すでに知る人ぞ知る自作楽器で、こうしたものづくり系のイベントでの展示やライブなど、多数行っている。なんと彼はすでに15年も、この「ウダー」を作っている(楽器として、より良いものにしたいと開発を続けている)。


ウダー4.5(本体)とウダーモバイルKiri(音源部)


「ショルキーボカロン」などを展示していたぼやさん
ぼやさん、ボーカロイドとの出会いは古いそうだ。現在のショルキーボカロンの筐体は、3Dプリンターやレーザーカッターを使って作ったという。しかし、スピーカー部分には雨どいが使われているなど、手作り感が大きく残っている。
ぼやさんはボーカロイド基板の制御に関するテクニックもウェブで公開している。ちなみに、この2月にヤマハリゾートつま恋で行われる「第01回 世界ボーカロイド大会」(!)にも参加されるとのことだ。


ショルキーボカロンを演奏するぼやさん


また、楽器や演奏の可能性を広げようという動きもある。

金箱淳一さん(女子美術大学)
金箱さんは、自身アーティストでもあるが、「楽器インタフェース」を研究している。耳に障害がある人でも音楽が楽しめるようなもの、演奏する人と演奏を聴く人が、もっと一緒に音楽を楽しめるようなものを作りたいという。


クラップ・ライト。手に装着すると、拍手に反応して光るデバイス


◎ これからがおもしろい「音系電子工作」
Maker系の展示会イベントがどんどん規模が大きくなる中、こうした有志による局所的な集いが起こるのは必然なのかもしれない.
そして、とてもおもしろい動きだ。
まだ小規模なこともあり、展示されているものを中心に出展者とゆっくりコミュニケーションが可能だし、「楽器はそもそも演奏するもの、音楽を奏でるためのもの」なので、作る側も「それが何か」を伝えやすいし、展示を観に来る側もわかりやすいからだ。

機会があれば、のぞいてみて欲しい。
また参加してみるのもオススメだ。音系電子工作には、まだまだおもしろいできるコトが残っている。
未知の分野。ぜひ、チャレンジを。

リンク:oto asobi vol2


大内孝子