『Hanako FOR MEN vol.13 男はBAR。』マガジンハウス

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NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』が始まった。
今回の主人公のモデルは「日本のウィスキーの父」と呼ばれるニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と妻のリタ。
近藤正高さんのレビューによると、関連書籍も大量に出版されているようだが、やはりどれもウィスキーの話題は外せない。
せっかくなので、これを機にウィスキーについてよく知ってみたい。そう考えている酒飲みも多いのではないだろうか。筆者もその一人だ。

そこで購入してみたのが、『Hanako FOR MEN vol.13 男はBAR。』(kindle版)。
『Hanako FOR MEN』はその名のとおり男性向け『Hanako』のムックシリーズ。今までに「寿司デビュー!」や「モテる日本酒。」などの特集を組んでいる。
で、今回のテーマはバーとウィスキーというわけ。表4には『マッサン』の広告がちゃんと入っている。

筆者もバーになら何度も行ったことがあるし、ウィスキーだって好きだ。
だけど、実際には何も知らないと言っていい。ウィスキーは麦から作り、バーボンはトウモロコシから作る。それぐらいは知っている。だから『マッサン』の主題歌は「麦の唄」なんだもんね。
それでも、やっぱりバーに入るときは怖気づく。いや、分厚いドアのあるバーは、一人では入れない。
『男はBAR。』とタイトルにあるが、こういうとき怖気づくのは男のほうだ。経験上、女性のほうが軽く一人でバーにやってきている。だから、男性たちをバーに向かわせるためのガイドブックなのだろう。

『男はBAR。』は、名店ガイドでもなければ、お酒の種類のガイドでもない。バーってのはカルチャーなんだと教えてくれる。
だから、まずはバーでのマナーについての講座が始まる。

バーでお酒を飲むとき、覚えておきたいマナーは3つ。

・騒がない。
・泥酔しない。
・長居しない。

その他にも「バーテンさん」と呼びかけるのは失礼だってのは初めて知った。ショートカクテルは短い時間で楽しむ“ショートタイムカクテル”の略だということも初めて知った。

バーの扉が重いのは、押し開けた先に非日常の空間が待っているから。そう語るのは、「BAR洋酒博物館」のマスターにして、バーテンダー歴38年の北村聡氏。バーテンダーは非日常空間の案内人だ。
「でも気の合うバーテンダーと巡り合うことは、運命の恋人を見つけるより難しいといわれます」
本書の中のBARガイドは、いずれもバーテンダーの写真がメインなのはそういう理由なのだろう。東京と関西、それぞれ合計37のバーが紹介されている。関西は女性バーテンダー、バーテンドレスの波が来ているのだそうだ。カッコいい。

ウィスキーもカルチャーだ。バーよりは間口が広いが、その奥は深い。
『マッサン』でウィスキー考証を担当するウィスキー評論家の土屋守氏は、「飲んで感じるおいしさは、ウィスキーの魅力の半分」と断言する。知りたいという知識欲にすべて応えてくれるのがウィスキーなのだと土屋氏は語る。だからウィスキーとは「知識でうまくなる酒」なのだと。
わかる。映画もドラマも、みんなそうなんだよね。

ウィスキーの世界的産地は、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズの5つ。なかでも竹鶴がウィスキー製造を学んだスコットランドのスコッチは“ウィスキーの王様”と称される。
スコッチの定義は厳格だ。スコットランドで蒸留し、容量700L以下のオーク樽に詰め、3年以上熟成されたウィスキーのことだけを言う。
シングルモルトとは、単一の蒸留所で造られたモルト(大麦麦芽)ウィスキーのみを瓶詰し、熟成させたものを言う。

筆者のように40歳を超えると、酒は好きでも、だんだん居酒屋でワイワイやるのが苦手になってくる。ワーンと音が響く作りの店は、目の前の相手の声さえ聞き取れない。だからこそ、ちょっと静かで楽しくお酒が飲めるバーに行きたいのだ。

580円で手軽にバーとウィスキーについて学ぶことができたから、この原稿が終わったらちょっと一杯行ってくることにします。
(大山くまお)