iPhone4s、iPhone5s、iPhone6plusを並べてみた写真。もちろん一番大きいのがiPhone6plus。かなりの大きさの差があることがわかる。

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9月19日に発売されたiPhone 6およびiPhone 6 Plus(以下、iPhone6+)。もうすでに手に入れた人もいるのではないでしょうか。

多くの人が気になっているのが、「大きさ以上に大きく進化」というコピーの元で、歴代最大の大きさになったiPhone6+は、果たして本当に便利なのかどうかだと思います。実機を購入して数日間使ってみたので、今買うべきなのか、買わない方がいいのかをレポートしたいと思います。早く結論を知りたいという人は最後のまとめだけ読んでください。

ちなみに機種変更をするときにバックアップを取って復元する人が多いと思いますが、iTunesでバックアップを取る際に「iPhoneのバックアップを暗号化」にチェックを入れて暗号化することで、キーチェーンも暗号化されて各種パスワードもそのままバックアップを取ることができます。いちいち復元した後にパスワードを入力をしていた人は是非やってみてください。

■まずは外見とかスペックとか

まずはiPhone6+の本体そのものから見ていきましょう。毎日持ち歩く電話なので、大きさや持ち心地とかは非常に大切です。

やはり、大きいです!
試しにiPhone5s(と、おまけにiPhone4s)の写真を載せてみました。iPhone6はさすがに購入できていないので持っていません。明らかに大きいです。いわゆるファブレットですね。Androidを使っている人は、GALAXY Note 3の大きさとほぼ同じというとわかりやすいでしょうか。iPhone6+の方が少しだけスリムに細長く、薄くなっています。

iPhone6+   :158.1mm × 77.8mm × 7.1mm (172g)
GALAXY Note3:151.2mm × 79.2mm × 8.3mm (168g)

ちなみに文庫本のサイズは148mm × 105mmです。早川文庫などのトールサイズが157mm × 105mmです。なので、薄くてちょっとスリム(横幅を4分の1ぐらい削った大きさ)なトールサイズの文庫本を持ち歩いていると思うといいかもしれません。

重さは、やっぱり重みを感じます。ただ、見た目よりも重さは感じません。薄さとバランスの良さのおかげでしょうか。でも、片手で扱うには重いとは思いますので、片方の手で支えながらもう片方の手で操作するのに向いています。手の大きい男性なら片手でも楽々と扱えるでしょう。

ただ大きくなっただけではなく、スリープボタンの位置も変わりました。今までは本体の上部右側にあったものが、右側面の上側に移りました。反対側のボリュームボタンの上側とほぼ同じ高さです。これにより、片手で握ったときに親指でスリープを押しやすくなりました。

これに関しては一点だけ不満があります。他のAndroidを使った時の癖のせいだとは思う(つまり個人差がある)のですが、カメラで横向きにして撮影するときです。横向きにしたiPhoneを、カメラが上にくるように持つと、ちょうどシャッターの位置にスリープボタンがきます。そうなると、つい押しちゃうんです。でも、もちろん写真は撮れず、スリープになります。せめてカメラが起動している間だけでもこのボタンにシャッターを押す機能を割り当てる設定にできませんでしょうか。

また、特筆すべきことは、iPhone4以降のシリーズが採用していた、角が立っている角張ったデザインではなく、端が丸みを帯びていることです。見た目にはかっこいいかも知れないのですが、力を込めて握ると痛かった従来とは違い、手に優しくなっています。これは、片手で操作する人にとっても両手で操作する人にとっても恩恵は大きいと思います。特にスマートフォンを片手で持ったときに小指で支える人はうれしい変更点でしょう。痛くないし、使いすぎで小指が変形するとか話題になりましたが、やや緩和するかもしれません。

バッテリーに関しては、起動していないときにも位置情報を取得したり通知をするアプリをまだそんなに多く入れていないだけあって、非常に長持ちをしています。この後、だんだん通知や位置情報を使うアプリが増えると、どんどん減っていくことと予想されます。

■液晶保護シートを貼るのに向いていない

端が丸くなったことに伴って、弊害もでてきています。それは、液晶保護シートを貼りにくいことです。

今までのiPhoneシリーズは、端に丸みをおびえていたiPhone3Gなども含めて、液晶面はフラットになっていました。ところが、iPhone6+は液晶面の端から丸みを帯びています。その結果、液晶保護シートを貼るのが今まで以上に難しくなりました。

特に横側が、液晶の表示領域を抜けるとすぐにガラスがカーブするので、普通のシリコン粘着シートだと端に隙間ができて浮いた状態になります。また、ほんの少しでもズレると液晶表示領域を完全にカバーした保護シートを貼り付けることができません。

液晶保護シートは貼らないという人は気にならないかもしれませんが、映り込みが気になったり、指紋が気になったりする人はアンチグレアシートを貼るでしょう。もちろん、高価な買い物ですし、傷がつくのが嫌だということで、クリア保護シートを貼るという人もいると思います。

そういう人は、綺麗に保護シートを貼るためにはとても苦労すると思います。友人には、長辺方向の塗装と表示部の境界に1辺まるごとテープ(メンディングテープとか)を貼ってガイドにするといいと教わりました。今までの機種以上に、保護シートを貼るのに神経を使うでしょう。

■壁紙周りでも工夫する必要あり

iPhone6+独自の機能としては、簡易アクセス(「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」→「簡易アクセス」でオンオフできる)があります。ホームボタンをダブルタップすることで、画面の上部を届く範囲に移動させるものです。

確かに画面の上には指が届くようになるのですが、横幅が大きくなっている分、親指を届かせるのには若干苦労しました。手が大きい人だと評価は変わると思います。ちなみにこれはTouch IDの部分をタップするのですが、指紋を登録していない指でも機能しました。あと、横画面では機能しません。

実際にやってみると、ホーム画面では壁紙はそのままにアイコンだけが下に移動(Dockはそのまま)。アプリの画面ではアプリの上ごと移動(空白部は真っ黒)という形でした。壁紙職人の方は、アイコンが下がることで面白い絵になるような壁紙を考えるチャンスかもしれません。

その壁紙は、設定するときに「視差効果をオン/オフ」を選ぶことができます。iPhoneの傾きによって壁紙が微妙に動く、視差効果をアクセシビリティでオフにしなくてもいいようになりました。きっちりとネタを仕込んだ壁紙を設定することは難しかったのですが、壁紙ごとに設定できるようになったので、壁紙職人も腕のふるいがいがあることでしょう。

ただし、横画面になると、正方形の画像でない限り、縦画面の真ん中部分を拡大した壁紙になります。これはiPadと同じだと考えればいいでしょう。従って、視差効果をオフにするのであれば1920×1920pxに……と言いたいところですが、iPhone6+は実際の液晶の1080×1920pxではなく、1242×2208pxを縮小して1080×1920pxで表示をしているようです。従って、2208×2208pxで作るといいのではないでしょうか。視差効果をオンにするのならば実際よりも大きいサイズの壁紙が必要になります。

■多くのアプリがiPhone6+の解像度に未対応!?

最大の問題は、各種アプリでしょう。iPhone6+にすることで画面が広く、高解像度になりました。ところが多くのアプリがその解像度に対応していません。

これは動作がしないという意味ではありません。画面がiPhone6+に最適化されていないのです。おそらくはiPhone5s用のものをそのまま拡大して表示しています。

こうなると、文字が大きく、ややぼんやりとした感じの画面になります。まるでらくらくフォンのような画面です。初期のiPadが出たばかりのときに、まだiPad用のアプリが充実していなく、iPhone用のアプリを拡大して使っていたような感じと言えばわかりやすいでしょうか。

また、文字が大きいだけではなく、キーボードも大きくなります。両手で動かす分には問題は少ないのですが、片手でフリック入力をするときには指が届きにくく、誤操作をします。というよりも、アプリによってキーボードの大きさが違うというのでは、あまりキーボードを見ないでフリック操作をする派には非常に厳しいのです。

こういう状態では、何のために高解像度で大画面なiPhone6+にしたのかわからないでしょう。Appleのアプリなど、一部のアプリ(ちなみにExciteNewsアプリも対応済でした)では対応しているのですが、大多数のアプリが対応していません。

ちなみに一番手元のアプリでひどかったのは、Ingressです。画面の左下に縮小したものしか描写されないで、さらにタップの位置がずれるという症状で、快適にゲームができるとは言いがたい状態です。これはつまり、iPhone5s用の描画がiPhone6+で拡大せずに行われているんだと思います。

他にもゲームでそういう症状が起きるものはあります。初回起動時に画面の縮小が発生して、再度起動するときに直るものもありました。

折しもiOS8になったときに描画周りが変わっている(UnityとかCocos2dとかのエンジンを使っているものが影響を受けたようです)ことと、iPhone6+の高解像度への対応が遅れていることが原因だと思われます。

というわけで、毎日のように使っているアプリがiPhone6+に対応しているのかどうかを確認してから購入した方がいいと思います。文字が拡大されて野暮ったい画面になっていたり、そもそもゲームにならなかったりするのでは意味がありません。

■まとめ

というわけでまとめるとこのようになります。

・大きいが、バランスは結構良いと思える。Androidで大きな端末を使っていたりする人は問題ない。
・周りが丸まっていて、思っている以上に手に優しいあたり方をする。
・液晶保護シートを貼るのは歴代で一番難易度が高い。テープでガイドを作るのが吉。
・壁紙はiPadのように正方形のものを作る必要がある
・多くのアプリがiPhone6+の解像度に対応していなく、ただ拡大しただけ。文字が大きくて野暮ったいし、ボタンも大きいし、キーボードも大きくなって操作しにくい
・アプリの対応を待つしかない。

というわけで、今の段階では大きな本体と大きな画面であっても、アプリ側が対応していないために100%その恩恵を受けることはできません。何台もスマートフォンに持っているのでなければ、メインをiPhone6+にするのはちょっと難しいのではないでしょうか。新しい機種に触れたいという人でなければ、自分が頻繁に使っているアプリが対応するまで待つ方がいいでしょう。
(杉村 啓)