映画『喰女ークイメー』 (8月23日全国公開)
出演  市川海老蔵 柴咲コウ他
画像は公式サイトより http://www.kuime.jp/

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先日、8月23日公開予定のホラー映画『喰女ークイメー』の予告が公開された。
市川海老蔵と柴咲コウが主演、監督は鬼才の名を欲しいままにする三池崇史だ。

まずは映像を見てもらいたい。本当に怖いんだから!

開始して早々、なんかニュルッとする。
それがもうイヤだ。
血まみれの部屋にいる謎の女が、なんだか謝りながら起き上がって、ガクッとする。
なんかもう生理的にヤバい。
それがニチャニチャ音をたてながら、じわじわと這いよってくる。
怖い怖い怖い!
不快感と恐怖がないまぜになって迫ってくる感じがたまらない。

映画『喰女ークイメー』の物語のベースになっているのは、和製ホラーの元祖であり最高峰ともいえる「四谷怪談」だ。
名家のお嬢様であるお岩が浪人の伊右衛門と結婚するが、伊右衛門の心変わりと裏切りによってお岩は惨殺される。お岩の怨念が幽霊となり、伊右衛門らに復讐を遂げる。
これが「四谷怪談」の基本的なお話。
鶴屋南北による歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」や三遊亭圓朝の創作落語「四谷怪談」などをはじめ、映画化、舞台化などが本当に多い、怪談の古典中の古典である。
「うらめしや〜」という幽霊の定番フレーズも「四谷怪談」から生まれたものだ。
近年では京極夏彦の小説『嗤う伊右衛門』が有名だろう。

『喰女ークイメー』の舞台は現代。
舞台劇「真四谷怪談」でヒロインのお岩役を演じるのはスター女優・美雪(柴咲コウ)。
伊右衛門役には美雪の強い推薦で、恋人の俳優・浩介(市川海老蔵)が抜擢された。
舞台上で演じられるはずの愛と憎悪と裏切りが現実世界にも及び、やがて大きな怨念となって男女を覆い尽くす……。共演は伊藤英明、中西美帆ら。

主演の海老蔵は、本作では企画としてもクレジットされている。2010年に歌舞伎で伊右衛門を演じて以来、映画化を熱望していたのだという。
ヒロインを演じる柴咲コウにはホラー映画のイメージはあまりないかもしれないが、秋元康原作によるケータイホラー映画『着信アリ』では、殺人電話の謎を解く主人公……だと思わせつつ、ラストで殺人鬼に豹変するヒロインを血まみれで演じていたキャリアを持つ。
そもそもブレイク作の『バトル・ロワイヤル』からして血まみれであった。
また、デビュー直後に出演したホラー映画『案山子 KAKASHI』ではヒロインを追いつめるカカシ役を演じていたりする。

三池崇史の傑作サイコホラー『オーディション』

監督を務めるのは、海老蔵とは『一命』以来、柴咲コウとは『着信アリ』以来のタッグとなる三池崇史である。
近年は『ヤッターマン』『忍たま乱太郎』『逆転裁判』のようなおかしな原作モノ映画の印象が強いが、そもそもはVシネマの世界で大暴れしてきた武闘派監督だ。

三池によるホラー映画はそれほど多くはないが、特筆すべきはサイコホラー『オーディション』。
映画のオーディションにやってきた若い女性の中から再婚相手を見つけようとする不埒な中年男性・石橋凌が、選んだ相手の女性・椎名英姫から死ぬような目に遭わされるというお話なのだが、とにかく終盤は目を背けたくなるようなシーンの連続。椎名が放つ「キリキリキリ……」という奇声が耳から離れない。
この映画、日本ではほとんど話題にならなかったが、世界中の映画人から絶賛を浴びた。
クエンティン・タランティーノ監督が選んだ1992年〜2009年の映画ベスト20にランクインしたり、雑誌『TIME』が選んだ歴代ホラー映画ベスト25に邦画として唯一ランクインしたりと、海外ではもはやジャパニーズホラーの代名詞。また、『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督や『ホステル』のイーライ・ロス監督、イライジャ・ウッドにマリリン・マンソンと、この作品のファンは数えきれないほど。
一度機会があったら観てほしい。ホント怖くてイヤだから。

イヤな感じといえば、大森南朋のブレイク作『殺し屋1』も観客の痛覚を刺激するハチャメチャなスプラッター映画だった。
今回は脇にまわった伊藤英明がショットガンで生徒を惨殺しまくる血まみれ映画『悪の教典』も三池監督作品だ。
ホラーではないが、『一命』では瑛太の切腹シーンが観ているだけで痛辛いと話題を呼んだ。
そういえば、監督デビュー前はADとして『ザ・ハングマン』シリーズのモルモット小父さん・稲川淳二の拷問シーンを嬉々として演出していたという。

人が痛がったり嫌がったりする感じを知り尽くした三池監督とキャスト陣が送る、とにかく公開前から血の匂いしかしない映画、それが『喰女ークイメー』。
もう今から怖い!

(大山くまお)