『ペテロの葬列』原作/宮部みゆき/集英社
 TBSの2014年7月期月曜ミステリーシアター。主演小泉孝太郎。

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いよいよ、7月7日、ドラマ「ペテロの葬列」がスタートする。
「月曜ミステリーシアター」よる7時、初回2時間スペシャルだ。
宮部みゆき原作“杉村三郎シリーズ”最新作、ドラマ化第二弾。

第一弾である「名もなき毒」、再放送されるから必見だよ!
って、お伝えした。
・小泉孝太郎がめっちゃハマり役。宮部みゆき映像化傑作「名もなき毒」再放送を見逃すな
・キレる女、江口のりこの鬼気迫る演技。ドラマ「名もなき毒」が朝っぱらから凄まじい
いま再放送中です、すごいでしょ。名作。
あさ10時5分からTBSテレビ放送。
(関東広域圏ね、地域によっては放送タイミングが微妙に違うかも)

露骨で凶暴な悪ではなく、誰のものでもないような、いや誰のものでもあるような悪意。
地味なところからはじまるけど、じわじわくる。
再放送中の「名もなき毒」編は、その悪意が次第に暴走していくさまを見せつける。
ストーカー原田いずみの猛毒は、第9話、第10話、第11話でいよいよクライマックスに到達する。
怖いです。
『名もなき毒』DVD-BOXのメイキングで、撮影が終わっても子役が、原田いずみ役の江口のりこにおびえてるのだが、そりゃ、しょうがない、おびえるよね、ってのが後半観ると納得の恐怖。

で、「ペテロの葬列」!
もし『名もなき毒』を観てなくても、第二弾の「ペテロの葬列」、だいじょうぶです。
原作の宮部みゆきの小説『ペテロの葬列』も単独作品として読める。

一応、前提となる設定だけ軽く紹介しておく。

小泉孝太郎演じる杉村三郎が主人公。
企業のちいさな広報室の副編集長。
2つの点を除けば、平凡なサラリーマンだ。
1つ。
今多コンツェルンのトップに君臨する重鎮である今多義親(平幹二朗)の娘が妻であること。
一大コンツェルンの「おむこさん」なのだ。
もう1つは。
「あなたばっかり、どうしてこんな目に遭うのかしら」
なんだか事件に首を突っ込むハメになってしまうこと。

もちろん『ペテロの葬列』でも、杉村はとんでもない事件に首を突っ込むことになる。
しかも、これまでの杉村三郎シリーズのように相談を持ちかけられたりするわけじゃなく、最初からとんでもない事件に巻き込まれる。
バスジャックである。

原作のバスジャックシーンを読みながら、ぼくは、山田太一脚本の傑作ドラマ『男たちの旅路』の「シルバー・シート」の回を思い出した。老人が電車ジャックするエピソードだ。

今回、『ペテロの葬列』でバスジャック犯を演じるのが、長塚京三。
これは、名キャスティングでしょう。
単純で凶暴な犯罪者ではない。
犯人の動機がじょじょに示されていく展開に、グッと引き込まれることになるだろう。

『ペテロの葬列』が2時間スペシャル拡張版でスタートするのは、このいきなり起こるバスジャックをガッツリ1話目でまるまる観せるためだろう。
最近のドラマは、初回時間拡張版がよくある。
だが、なんか、「あれ? 初回だから景気づけに拡張しただけ?」と思わせるような、
シナリオはそのつもりで書いてなかったんじゃないのって感じの薄味なこともあって、
理由のない拡張版はやめてほしい。
だが、『ペテロの葬列』が2時間スペシャル拡張版でスタートするのは、原作の構成をしっかりとドラマに落としこむための作戦だ(原作を読んでると、あれは1時間じゃなくて2時間で観たいよね、と思う)。

というわけで、再放送中の「名もなき毒」を観てるみなさん(観てない人もね)、
『ペテロの葬列』スタート、お楽しみに!
(米光一成)