フジテレビ開局55周年記念ドラマ「若者たち2014」。企画発案は「北の国から」の演出家として知られる杉田成道。妻夫木聡、瑛太、満島ひかりらが出演。7月9日(水)の初回放送に先駆け、Yahoo!テレビ上で1万人限定オンライン試写を実施した。

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“理屈じゃねえんだよ。
要するに婚姻届け出す前にガキ作っちゃったってことだろ。
だったら、できちゃった婚でいいじゃねえか。
それをなんだよ、おめでた婚って!
子どもを授かったからおめでとうってか。
そんな理屈がまかりとおると思ってんのか。
だいたいよ、親御さんの気持ちにでもなってみなさいよ。
手塩にかけて育てた大事な娘がよ、
結婚前に男と避妊もせずにガンガンやってますってご近所さんに吹聴してるようなもんじゃねえか。
男も女も節操がなさすぎんだよ!
冗談はな、その蝶ネクタイだけにしてくださいよ。軽部さんよ!”

のっけからバンバン長回しのセリフが飛び交うドラマ「若者たち2014」。
7月9日(水)の放送開始に先駆け、5日(土)・6日(日)に第一話オンライン試写が開催された。

このドラマは1966年にフジテレビ系列で放送された青春ドラマ「若者たち」をベースにした作品。66年の放送当時には田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二らが貧しいながらも懸命に生きる兄弟を演じ、世代を超えた支持を集めた。なぜ今、「若者たち」なのか。今回の企画の発案者である、チーフディレクターの杉田成道は、こう語っている。

「50年近くが経ち時代は変わりましたが、浮ついたところから地道なところへと移っている風土は当時に通じるものがあるんじゃないだろうか、と感じています。(中略)幸せの質も変化してきて、お金だけじゃないものを求めている状況も、当時に似ているとは言わないけれど通じるものがあるんじゃないだろうか、と」(「若者たち2014」公式サイトより)

2014年版で兄弟役を演じるのは妻夫木聡、瑛太、満島ひかり、柄本佑、野村周平。
長男の佐藤旭(あさひ/妻夫木聡)は二言目には
「親父が死んでから、誰がお前たちを養ってきたと思ってんだ」
と、べらんめぇ口調で説教。うっとうしく、デリカシーもない。
でも、誰よりも家族を思っている。
その不器用すぎる姿は「北の国から」の五郎さんをほうふつとさせる。
父さん!

次男の暁(さとる/瑛太)はどうも刑務所に入っていたらしい。
「もう来るなよ」と声をかけられながら、それらしき建物から出てくる。
そこへ、泥だらけの作業着でタバコを吸っていた女性(長澤まさみ)が声をかける。
「あなたが母を殺したんでしょう」
という謎めいたセリフ。
暁は一体何をしたのか。そして、この女性は何者なのか。
つなぎ姿×タバコのやさぐれ感がハンパない。
でも、じつによく似合っていて、見惚れる。

長女・ひかり(満島ひかり)は大学病院の新生児集中治療室(NICU)に勤務する看護師。
いい年をして取っ組み合いのケンカをする兄弟たちに「やるなら外でやってよ!」と一喝し、旭(妻夫木聡)にラリアットをお見舞いする。
でも、恋人の話になると、途端に表情が曇る。
「やっぱり、子供にはかなわないのか」
とポツンとつぶやく姿がハマリすぎていて泣ける。

三男・陽(はる/柄本佑)は旭に負けず劣らず、熱血漢で理屈っぽい。
内定を蹴って、留年し、劇団を旗揚げしたものの、他の劇団メンバーとの温度差に悩む。「君にとって芝居はその程度のものだったのか」
「このまま逃げてそれでいいのか」
「他人と傷つけあいながら生きていくのが人間なんじゃないのか」
なんて暑苦しいセリフもバンバン飛び出す。
兄弟のなかで、もっとも濃密な昭和の香りを身にまとっているのは、陽かもしれない。

四男・旦(ただし/野村周平)は兄たちに比べると、俄然おだやかでのんきな雰囲気。
高校を中退したため、高校認定試験の合格を目指し、予備校で勉強中。
「認定試験に合格し、国立大学に進学してほしい」という長兄の願いもむなしく、
予備校で知り合った女子高生・永原香澄(橋本愛)に夢中。

橋本愛演じる、香澄の魔性ぶりもすごいのだ。
ただでさえ、セーラー服(夏服)がまぶしい上、
「500mlって誰が決めたんだろうね。いつも飲みきれなくて微妙に残るんだよね……あげる」
なんて、ささやいたりする。
挙句
「その代わり、名前教えて」
だもん。反則だわー。
ささやきエロス選手権、優勝!

兄弟がそれぞれ抱える事情や五人五様の悩み、人間関係を丹念に描く青春群像劇。第一話は想像よりもずっとずっと濃厚なザ・昭和なテイストに驚かされた。ここからイマドキの若者像に舵を切るのか、昭和魂を貫くのか。今後の展開が楽しみだ。
(島影真奈美)