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●Fire Phoneのポイント米Amazon.comがスマートフォン事業に参入、端末として「Fire Phone」を発表した。Amazonがスマートフォン事業に参入する狙いとはなんだろうか。

Fire Phoneは、Androidベースの「Fire OS 3.5.0」を搭載するスマートフォンで、4.7インチ1,280×720ドットの液晶ディスプレイ、2.2GHz駆動のクアッドコアSnapdragon 800を搭載する。

ハードウェアスペック的には、目新しい機能は多くはない。前面の四隅にカメラが内蔵され、画面を見る人の顔を認識。視点を検出することで3Dに見えるように表示をコントロールする「Dynamic Perspective」が新しいが、正直なところ、このあたりはあくまでもFire Phoneの目新しさを演出する1機能に過ぎない。

重要な機能の1つ目が「Firefly」。これはカメラで写した物体や文字、スピーカーが捉えた音楽などを認識して解析。それに対する情報を表示してくれる機能だ。

つまり、目の前にある本やDVD、ゲーム、ポスターをFireflyで認識すると、その商品に関するAmazonの購入ページが表示される。流れる音楽を認識すれば、AmazonからCDを購入したり、音楽のダウンロードができる。テレビや映画を認識させれば、Amazonの映像配信サービスにアクセスできる。同様のアプリは、スマートフォン向けにこれまでもあったが、これをAmazon自身がやるというインパクトは大きい。

もう1つがAmazonのカスタマーサービスである「Mayday」に1ボタンでアクセスでき、相手の顔を見ながら画面を共有してサポートが受けられるというもの。携帯回線経由でも利用でき、15秒以内にヘルプが受けられる、とアピールしている。

そして、期間限定ながら、1年間の「Amazon Prime」権が付属する、というのも大きなポイント。Amazon Primeは年間99ドルのサービスなので、それが付属するのは1つのアピールポイントとなる。

●Amazonの狙い逆に言うと、このAmazon Primeへの誘導が、Fire Phoneの狙いだろう。米国では、携帯キャリアに2年契約することで端末代金を割り引く販売方法が一般的。Fire Phoneも、2年契約では32GBモデルで199ドルになるため、実質的には100ドルで購入できることになる。ただし、1年間のAmazon Primeでは、2年契約の途中で権利が消失する。 1年間は使えるので、この間に使っていたユーザーが継続してPrimeを利用することを狙っているのだろう。その意味では、Fireflyによって「すぐに購入できる」環境を整え、Primeの利用率を上げること狙っていると言える。

Primeには、無制限のビデオ配信、音楽ストリーミングサービスが利用でき、商品を購入するだけでなくデジタルコンテンツを用意しているのも、Primeの魅力を向上させ、契約数を増すための取り組みだろう。

基本的な戦略は、従来のタブレットのKindle Fireなどと変わらず、あくまでもAmazonの商品を購入するためのフロントエンドとしての役割が期待されている。もちろん、AmazonアプリはAndroidやiPhone向けにもリリースされており、わざわざFire Phoneを出す必要はない。

それでもAmazonがFire Phoneを作ったのは、やはりPrimeへの導線と考えるとしっくりくる。今まで、Primeを求めていたような層にはある程度行き渡っており、今後は新たな層を開拓するべきタイミングが来た、という言い方もできる。

Instant Videoのようなビデオ配信を考えれば、ある程度の端末スペックが必要で、低価格化は難しかったのかもしれないが、もう一段安い端末だと、インパクトはあったと思うし、よりライトユーザーの取り込みにつながったように感じる。それでも、2年契約で199ドル、1年間のPrime加入権付きで、実質的には100ドル端末となり、低価格をアピールすることもできるだろう。

キャリアがAT&T限定で、通信料金に特別なプランもないため、このあたりの評価も難しいところだが、今後は他キャリアからも登場することが見込まれ、それ以降が本番に思える。

Amazonの狙いであるPrimeへの誘導が成功するか。Fire Phoneは実際の端末の売上よりも、「結果としてPrimeが増加したか」が成功の指標と言えそうだ。

(小山安博)