「保険離れ」歯止めかかるか(画像は「日本生命保険」公式サイト)

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日本生命保険は2014年1月7日、主力商品を4月から値下げすると発表した。値下げ幅は若年層ほど大きく、20代で7%台となる。若い世代で進む保険離れに歯止めをかける狙い。生保最大手の日本生命が値下げに踏み切ることで、各社が追随し価格競争が激しくなる可能性もある。

日本生命の主力商品は2012年4月に発売した「みらいのカタチ」で、死亡や介護、医療、年金といった11種類の保障を必要に応じて組み合わせるタイプ。

バブル期の「負の遺産」が減り、「逆ざや」が解消

死亡保険金が2000万円で医療、介護の保障をつけた標準的な契約なら、月々の保険料は20代(同じ20代でも年齢、性別で違う)で8000円台後半から8000円ちょうど辺りに下がる。値下げ幅は7%台半ば程度だ。これが30代になると値下げ幅は7%前後、40代で5%台、50代で4%台と年齢が高まるにつれて圧縮される。

ただし、値下げは組み合わせる保障の保険料を割り引く制度を拡充する形をとる。保障によって割り引き率も違うため、組み合わせによっては20代でも月々の保険料が上がるケースもあるなど、契約者にとってやや分かりづらいのが難点ではある。

日本生命が値下げに踏み切る背景には、運用環境の改善で経営に余力が生まれていることがある。運用環境の改善とは、足元のアベノミクスによる株高もあるが、むしろバブル期の「負の遺産」が減り、「逆ざや」が解消したことが大きい。

生保各社は保険契約の際、あらかじめ想定する運用利回り「予定利率」を契約者に示す。バブル経済期には予定利率が5〜6%にまで高まったが、バブル崩壊で運用成績がとてもそんな予定利率には届かなくなった。予定利率に届かない部分=「逆ざや」は、生保側が穴埋めして保険金などを支払わなければならない。このため、1990年代後半以降、生保各社の経営が圧迫され、破綻する会社も出た。

他の主要生保にも影響

新規契約に対する予定利率は順次下がって現在は過去最低の1%程度。こうした中、さすがに2010年代に入ると、バブル期の高い予定利率の時代の契約も減り、保険各社は次々と「逆ざや」を解消。主要9社の2013年4〜9月期決算では、運用上の損益は2001年の数値公表以来、初めて9社全体として利益が出た(400億円超)。2000年前後には9社合計で1兆円を超える損失を出していたことを思えば、運用環境は劇的に改善したと言える。

個別に見れば2013年4〜9月期でも朝日生命や三井生命のように逆ざやを解消できていない社もあるが、総じて契約者に配当や保険料値下げで還元する余力が生まれているわけだ。実際、既に第一生命や住友生命は昨年4月に値下げに踏み切っている。今回、日本生命が値下げすることは、他の主要生保にも影響しそうだ。

ただ、若年層保険離れに「7%の値下げ」がどのくらいの効果を生むかは、未知数だ。少子高齢化が進むなか、死亡保険医療保険などを組み合わせる従来型の商品の需要が低くなっているという構造的な問題があるからだ。「掛け捨てではない医療保険」など特色ある商品で契約を伸ばす損保系生保が存在感を高めていることも、主要生保の構造転換の遅れを示していると言えそうだ。