国内どこでも30秒10.5円の「楽天でんわ」はフュージョンが提供。スマホ通話料にメス

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フュージョン・コミュニケーションズは、今利用している携帯電話番号のまま、スマートフォン通話料を半額程度にできる通話アプリ「楽天でんわ」を開始しました。通話料は30秒で10.5円。携帯電話やPHSだけでなく、固定電話宛も同じ料金です。

高止まりしているスマートフォンの通話料にメスを入れた楽天でんわですが、実はこれ、誰しも提供できるようなサービスではありません。また、目新しいサービスですが、決して新しくもありません。今回、楽天でんわサービス概要とその仕組みなど、フュージョンの倉澤さんと大堀さん、二人の担当者に聞いてきました。

サービスの概要



楽天でんわは、電話する相手の電話番号の前に指定の番号を付けて電話すると、今利用している携帯電話番号のままで、通話料金が30秒10.5円になるサービスです。IP電話ではなく、新しい電話番号が振り出されるわけでもありません。携帯電話やPHSだけでなく、固定電話宛てにかけても同じ料金ですが、(今のところ)国際電話には対応していません。

利用する場合、相手の電話番号の頭に指定番号「0037-68-」を付けて発信します。相手側には発信者の従来の電話番号が表示されます。

相手の電話番号
楽天でんわを利用した場合の電話番号

090-XXXX-XXXX
0037-68-090-XXXX-XXXX

080-XXXX-XXXX
0037-68-080-XXXX-XXXX

070-XXXX-XXXX
0037-68-070-XXXX-XXXX

03-XXXX-XXXX
0037-68-03-XXXX-XXXX

スマートフォンだけでなく、携帯電話やPHSなどでも頭に指定の番号を付ければ利用可能です。iPhoneおよびAndroid端末向けの「楽天でんわ」アプリでは、端末の電話帳データと連携し、この指定番号「0037-68-」が自動的に付いた形で送信できるため、指定番号を付ける手間がかかりません。

料金は10.5円/30秒



楽天でんわを使った通話料は、携帯電話会社ではなくフュージョンに支払います。決済は現時点でクレジット払いのみ対応。携帯電話会社のまとめて決済払いや、コンビニで購入できるプリペイド払いなどには、残念ながら非対応。

国内のLTE対応スマートフォンの通話料は、おおむね30秒20円程度です。フィーチャーフォン時代にあった無料通話分は基本的にありません。これに、ドコモ同士、au同士、ソフトバンク同士、さらに家族や恋人ならば通話定額の範囲内で追加料金がかからない、そんな料金設計になっています。

つまり、同じ携帯会社同士や家族間の通話ならば、楽天でんわを使うと高くつく可能性があります。このため、楽天でんわのアプリには、「無料通話リスト」という項目あり、ここに家族や同じ携帯電話会社で無料になるユーザーを登録しておくと、アプリ上から「0037-68-」を付けない電話もかけられるようになります。楽天でんわを通話する際のポータルアプリに使えます。

ただし、相手が電話番号をそのままに、携帯電話会社を変更するMNP制度を利用していた場合、その判別はできません。通話定額の相手と思って長電話したら、携帯電話会社が変わっていた、なんてことがあるかもしれません。

楽天ポイントが付与、今後ポイント消費も可能に



なお、楽天でんわを使うと、100円につき楽天スーパーポイントが1ポイント貯まり、支払いクレジットカードを楽天カードにすれば、100円で2ポイント貯まります。

ただし、今のところ、貯めるのみで楽天でんわでポイント消費はできません。担当者によれば、近い将来、楽天スーパーポイントで支払えるようになる予定。楽天市場で買い物したポイントで、通話料金を払うといった楽天経済圏の恩恵を受けやすくなります。

楽天でんわの仕組み


さて、ここからは楽天電話の仕組みの話です。

楽天でんわは、サービス提供の背景こそ違えど、その仕組みは固定電話におけるマイラインのようなものです。指定番号を付けることで、Aの携帯電話会社からBの携帯電話会社宛に電話をかける際の間をフュージョンのネットワークが中継し、安い通話料を提供するというものです。

Aの電話会社の利用者がB電話会社の利用者宛てに電話をかける場合、どこかでAとBのネットワークを繋ぐ必要があります。その際、電話をかけた側の会社(この場合はA)がBに対して、接続した料金を払います。逆にBの利用者がAの利用者に電話した場合、Bの会社が同じように接続料(アクセスチャージ)を払います。

通信事業者間のこうしたやりとりをエンドエンド料金方式と呼び、日本や欧州で採用しています。同じ携帯電話会社同士の通話で定額サービスを提供しやすいのは、アクセスチャージが発生しないため、とも言えます。ちなみに、アクセスチャージは秒単位の課金で、参考までにドコモの2012年度の接続料は0.067円となっています。

楽天でんわの場合、携帯電話会社からフュージョンを中継して、相手先に電話がかかります。携帯会社からフュージョンへの接続料をフュージョン側が肩代わりした上で、フュージョンから電話をかけた相手先電話会社への接続料もフュージョンが支払います。

接続料を肩代わりしても採算とれる



仮に接続料を1秒0.07円として計算した場合、30秒では2.1円かかります。2.1円の接続料を肩代わりして、本来かかる接続料2.1円を支払ったとしても、計4.2円の接続料です。両方の接続料を支払っても、単純計算で、30秒10.5円の通話料では6円ほどの儲けが出ます。

こうした安い通話料への取り組みは、フュージョンがマイラインなどで手がけてきた手法です。しかし、マイラインは国の施策で、総務省のお膳立ての上で実施されました。楽天でんわは、フュージョンが自ら携帯電話会社と相互接続契約を結び、通話料の切り崩しを計っている点で異なります。

今でこそ、電気通信事業者に1種、2種の区別はなくなりましたが、フュージョンは通信設備を備える元第1種通信事業者です。自社設備で中継接続が可能な体力があり、NTTやKDDI、ソフトバンクの各グループ企業でもないため、通話料を安くしたところで、携帯電話会社のビジネスとのカニバリゼーションを気にする必要がありません。

目新しいが新しくないサービス。チャット機能、SMARTalk統合も



なお、フュージョン自身も050番号が降り出されるスマートフォン向けIP電話サービス「SMARTalk」を手がけています。

担当者によると、徹底的に通話料を安くしたい場合や、海外との連絡には050番号のSMARTalkを利用した方が良いとのこと。今後、楽天でんわアプリにSMARTalkの機能を持たせるといった、ポータル通話アプリ化も検討中です。さらにフュージョンは、アプリにメッセージチャット機能も盛り込む計画。

ちなみに、新サービスとして騒がれている一方で、楽天でんわのようなサービスはこれまでにもありました。今回サービスを開始したフュージョン自身も提供しているのですが、それは法人向けソリューションでした。

モバイルがスマートフォン中心になるとともに、無料通話分が料金内から消え、通話料金も高止まりしました。フュージョンではこのタイミングで、法人向けの中継接続サービスを、個人向けの「楽天でんわ」として開始した形です。