大ヒット。全国で絶賛公開中

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10月26日から公開された「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」は、テレビ版本編のその後を描く全くの新作としてファンの期待も大きく、公開日には全国で最速レイトショーも行なわれメディアでも大きく報じられました。

待ちに待った新劇場版は、前半はファンサービスてんこ盛りのオールスター総登場! 後半はどんでん返しアリの内容で、ファンの間では喧々がくがくの大議論を巻き起こしています。

すでに一回目を鑑賞した後に「あのシーンはどういう意味なんだよ!?」と本編を見直して二回目に備えている人も多いハズの「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」。今回はそんな人のためにネタバレはできるだけ少なめに、劇場版ならではの演出について書いていきたい。

そもそも、「魔法少女まどか☆マギカ」は、劇団イヌカレーを起用してシュールレアリズムの影響を感じさせる大胆な演出と、ちりばめられた「不思議の国のアリス」や「マザーグース」のおとぎ話に、ゲーテの「ファウスト」などの意匠を取り込むことで、これまでの魔法少女アニメと違う独特な雰囲気を醸し出しています。すっかり有名になった「ワルプルギスの夜」もドイツ民話がもとで、ゲーテの「ファウスト」でも登場する魔女の夜会のこと。まどか☆マギカでは、複数の魔法少女の怨念が生んだ魔女とされており夜会の意味もいかされています。
映像では、白と黒の市松模様のタイルというチェスの盤を模したデザインは「不思議の国のアリス」が発祥と枚挙にいとまがありません。より深くそのあたりを知りたいかたは、「超解読 まどかマギカ」などを読んでいただくとして、テレビ版になく今回の新編劇場版から大きく扱われるようになった演出には新たにクラシックバレエの意匠が加わっています。冒頭シーンからバレエのポーズが影絵で何度も示され、それぞれの魔法少女たちの変身シーンでもバレエのポーズからスタート。このバレエの影絵は気になった人も多いはずです。

誰もが気付くバレエのポーズだけで無く、新編劇場版の戦闘シーンには、有名なクラシックバレエから題材をとったと思われるイメージカットが多数見ることができます。一点だけあげると、たくさんの戯画化されたミニチュアのほむららしき姿が行進するシーンなどが劇場版の要所要所に見て取ることできます。
これらのストーリーには直接関係ないように見える意味深なカットは、クラシックバレエの有名演目であり三大バレエと言われる『くるみ割り人形』や、『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』のチャイコフスキーの手がけたバレエのシーンを抽象化してつかっているように見えます。チャイコフスキーは生前はあまり報われず、遺した楽曲もも独特な不穏な印象を残すものが多くまどか☆マギカの世界観とマッチしています。
このバレエからの意匠の引用は“劇場で公開される”意味でもマッチしたものですが、実は引用されたであろう演目には共通の物語構成があるのです。
それは、主要人物が呪いによって幻想や眠りに誘われること。眠りから覚醒することで愛にたどり着くことです。すでに新編劇場版を観た人なら、ピンとくることがきっとあるはずです。これまでのまどか☆マドカでも、意味深に使われた演出モチーフは本編のストーリーを補強したり、連動していることが多かったことからも、新編劇場版が気に入った人は、チャイコフスキーの三大バレエについて調べてみると新しい発見があるかもしれません。

ちなみに、『くるみ割り人形』と『白鳥の湖』には結末が複数存在しています。『くるみ割り人形』では、おとぎの国に残って幸せに暮らす結末と、部屋に戻りすべてが夢だったという結末。『白鳥の湖』では、白鳥の姿に呪われたオデット姫と悪魔の娘オディールの確執を一人ニ役で演じますが、最終的に王子とオデットが身投げし来世で結ばれる結末と呪いが解けてハッピーエンド。新編劇場版のラストはさらなる新作を予感させる結末でしたが、これからどのように展開していくのか、ここにあげたバレエのあらすじなども調べながら想像すると楽しいかもしれません。

(久保内信行)