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取材・文: 編集部

H&M (エイチ&エム) がこの秋、アウトドア・ファッションのメンズ・カプセルコレクション「Mauritz Archive (マウリッツ・アーカイブ)」を発表する。H&Mのメンズウエアの原型をつくったとされるアウトドア衣料品店「Mauritz Widforss (マウリッツ ウィドフォース)」にインスピレーションを受けたコレクションで、オーセンティックな質感を出すために British Millerain (ブリティッシュ ミラレイン) 社のワックスドコットンや Abraham Moon & Sons ( (エイブラハム ムーン&サンズ) 社のウールなどの生地を使用しているという。昔のアウトドアウエアの単なる再現ではなく、機能性とデザインを現代風にアップデートしたというデザイナーのPetter Klusell (ペテル・クルーセル) に、「Mauritz Archive」について語ってもらった。


Petter Klusell ©H&M

- まずは自己紹介からお願いします。

H&Mのカジュアル・スポートウエア部門のシニアデザイナーを務めています。何年も前のことですが、映画や劇のコスチュームをつくりたくて、スウェーデンの学校でテーラードを勉強していました。でもすぐにもっとファッションよりの方に興味があると気づいて、洋服作り、パターン、生地などにとても興味を持ちはじめました。そこでメンズのテーラードを学びにLondon College of Fashion (ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション) に留学をしたんです。

H&Mで働きはじめてもう11年になります。最初はデザインアシスタントだったのですが、それからスイムウエアとアンダーウエアの担当になって、さらにメンズカジュアル部門の配属になりました。いまはカジュアルとスポーツの部門のシニアポジションにいます。


Hennes store ©H&M

- 「Mauritz Archive」のプロジェクトがはじまった経緯について教えてください。

このイメージは1947年のモノになります。H&Mの創業者であるErling Persson (アーリン・パーソン) が立ち上げた「Hennes (ヘネス)」という会社です。彼は1960年代後半に、Hennesの隣にあった「Mauritz Widforss」というお店を、店舗拡大のために買収するんです。Mauritz Widforssはアウトドアのお店で、メンズウエアも扱っていました。その日ごとに売れた物を補充するというスタイルのお店だったそうです。当時Hennesはウィメンズウエアのみを扱っていたので、メンズウエアも販売したいということになり、HennesとMauritz Widforssの名前が合体して、いまのH&Mが誕生しました。

 

 

 


An advertisement for Mauritz Widforss ©H&M

Mauritz Widforssは19世紀の経営者でした。彼の話は本で読んだことはありましたが、あまり詳しくは知りませんでした。ある日、スウェーデンのアンティークショップで1914年に発行された雑誌を選集した本を見つけたんです。『From the Forest and the Lake』という本で、その中にMauritzの広告を見つけました。あのMauritzと同じかどうかインターネットで調べたところ、やはりH&MのMauritzだったんです。

とても興味がわきまして、この話をどうにかして伝えたいとおもいました。Mauritz Widforssのお店が1960年代やそれ以前にどういう商品を売っていたのか、リサーチをして、スウェーデンの国立図書館で昔のカタログを見つけることができました。貸し出しはできませんでしたが、コピーはとらせてもたいました。

そしてH&Mがどのようにメンズウエアを扱うようになり、“Hennes” と “Mauritz” の名前が合体したのかを伝えるための企画を考えだしたのです。ビンテージの洋服も同時に調べてかなりインスパイアされ、生地メーカーとコラボレーションもしたくなりました。アウトドア感がある生地をいくつか調べて、British Millerain (ブリティッシュ ミラレイン) にたどり着きました。彼らのワックスドコットンが気に入ったのです。ウールやツイードを生産するAbraham Moon & Sons (エイブラハム ムーン&サンズ) にも声をかけました。これらすべてを融合させて、アウトドアにインスピレーションを受けた現代的かつ都会的なメンズウエア・コレクションを制作したかったのです。


British Millerain


Abraham Moon & Sons

1/2 ページ:「Mauritz Archive」の現代風にアップデートされたアウトドアウエア

- そのキッカケをつくってくれた本を見つけたのはいつごろですか?

約2年前です。それからずっと考え続けていました。すぐに行動に移しませんでしたが、今回のプロジェクトには1年を費やしています。たくさんのリサーチをしてきました。


Mauritz Archive collection

-「Mauritz Archive」のコレクションは、Mauritz Widforssがつくっていたアウトドアウエアにかなり影響を受けているとのことですが、どのように現代風にアップデートしたのでしょうか?

仕事上、モダン・メンズウエアについては毎日考えているので、いつもの手法を今回のリサーチとリンクさせました。メンズウエアのなにが現代風でかっこう良いのか、長時間議論もしました。シルエットと色使い、そしてディテールが大事です。クラシックな生地を使ったとしても、シルエットがクラシック過ぎてはだめです。ポケットの付け方やディテールも現代風にしないといけませんでした。とてもおもしろい洋服をデザインできたとおもいます。

現代の男性に合うように、モダンでタイトなフィッティングを心がけることにとても気をつかいました。シェトランドウールのセーターをつくったのですが、それにはリサーチ中に見つけた本で見つけた柄を使いました。昔の地図のホルダーもiPadケースにつくり変えました。




Mauritz Archive ©H&M


Mauritz Archive ©H&M


Mauritz Archive ©H&M


Mauritz Archive ©H&M

- 今回のコレクションの価格設定は、H&Mのほかのコレクションより高いですか?

生地メーカーと共同で制作したアイテムなどは高くなります。でもH&Mのビジネスの基本は、ベストプライスでファッションとクオリティを両立させることです。最も高いアイテムでも149ユーロです。リーズナブルな価格だとおもいます。メンズウエアの価格としては平均的だとおもいますが、価格のわりにクオリティはかなり高いです。

 

※「Mauritz Archive」コレクションは9月19日より、H&M 渋谷店、新宿店、心斎橋店、梅田店にて展開。その他世界各地の約250店舗にて発売予定。