移籍交渉が難航している本田。強気のCSKA、財政難のミラン、ともに移籍金で一歩も引かないようだ

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ACミラン(イタリア)への移籍交渉が最終段階に入っている、サッカー日本代表の本田圭佑。本田自身が望んでいたビッグクラブへの移籍話であり、7月25日には所属するCSKAモスクワ(ロシア)のギネル会長に会い、移籍を直談判したとも報道された。

だが、今月初めにイタリアの大手スポーツ紙が「ミラン、本田と合意」と報じてから約1ヶ月、いまだ具体的な話は聞こえてこない。交渉が難航している理由は、移籍金だ。

今年末までCSKAとの契約が残っている本田を、ミランが今すぐ獲得するには、当然、移籍金(違約金)が発生する。だが、中心選手である本田をCSKAが安売りするつもりはなく、当初、700万ユーロ(約9億円)の移籍金を要求していた。一方、ミランが提示した金額は、200万ユーロ(約2億6000万円)だった。

「それでも、当初はお互いが歩み寄る格好で、すんなり決まると楽観視されていました。CSKAだって冬の移籍で一銭にもならないより得ですし、何より本田本人が移籍を望んでいるのだから、イタリア的な感覚でいえば“確定”です」(前出・イタリア人記者)

その後、400万ユーロで合意したとも報じられたが、CSKAが500万ユーロへの引き上げを要求。最新の報道でもギネル会長は、「秋のチャンピオンズリーグで、本田は600万ユーロの利益をもたらすかもしれない」と、強気の姿勢を見せている。

なぜ、ビッグクラブのミランがそこまで移籍金の支払いを渋るのか。その理由は、財政難にある。巨大な財閥を築き、欧州屈指の資産家であるベルルスコーニ(元イタリア首相)がオーナーを務めるミランだが、数年前から自転車操業に陥っているのだ。

「財閥のトップを娘に譲ったのですが、彼女はサッカーに無関心。ミランへの投資は損失と見なしているといわれています。UEFA(欧州サッカー連盟)の規約も厳しくなり、パトロンがクラブにお金をつぎ込めず、クラブは独立採算で健全経営を求められている。経済危機の影響もあり、誰かを売って元手を得ないと、払う金がない状態です」(イタリア人記者)

噂されたFWロビーニョの放出がうまくいかなかったミランだが、CSKAはそんな事情は知ったことではない。サッカーライターの中山淳氏が語る。

「経済的に余裕があるのはCSKAのほう。金額で譲歩するなら、現状で戦力になっている本田を冬まで使えばいいと考えています。本田の後釜として獲得した選手がケガで使えないという事情もある。しかも、ここで弱気の妥協をすれば、ほかの選手の移籍にも悪影響を与えます」

両者の交渉の間に挟まれた格好の本田側にも“弱み”がある。交渉は、主としてミランが移籍金を積み上げる形で進んだが、ミラン側がけしかけて、その一部ないし全額を、本田が契約するスポンサーに払わせようとしたのだ。

「ミランの本音は『払わずに済むものなら一銭も払いたくない』です。そもそも、今回の移籍は本田側がミランに持ちかけたもの。ミランがCSKAに持ちかけたものではない。しかも、相手は海千山千。その時点で『とにかくミランに入りたい』という本田は足元を見られている」(中山氏)

すでに開幕したロシアリーグでも、全試合フル出場し、ゴールも決めている本田。活躍すればするほど、移籍が難航する、それも一流選手の証明だ。

(写真/益田佑一)

■週刊プレイボーイ32号「本田圭佑、ACミラン移籍に待つ“最悪シナリオ”!!」より