【インタビュー】大塚博美 – パリのモード界と東京ブランドを繋ぐ、ファッション・コーディネーター (第2回/全2回)
取材・文: 姥山良子 写真: 奥山由之 英語翻訳: Oilman
パリを拠点にランウェイ、展示会、ロケ撮影をサポートするファッション・コーディネーターとして活躍している大塚博美氏。UNDERCOVER (アンダーカバー) 、JOHN LAWRENCE SULLIVAN (ジョン ローレンス サリバン)、kolor (カラー) といった名だたる東京ブランドのパリ進出成功の裏には、この人の功労があると言っても過言ではないだろう。パリと東京、2都市のファッション業界をパラレルな視点で捉え、双方を結ぶ経路を明確に形づくる大塚氏に、その仕事内容やパリでデザイナーが成功するための条件などについてお話をうかがった。
(第1回/全2回) 【インタビュー】大塚博美 – パリのモード界と東京ブランドを繋ぐ、ファッション・コーディネーター
- 閉鎖的と言われがちな東京コレクションですが、ブランドのパリ進出についてどのようにお考えでしょうか。
UNDERCOVER 2013-14AW
東コレを盛り上げていくことも大事ですが、進出してみたい人はトライすべきです。パリコレに集まるジャーナリストやバイヤーはお世辞を言わない。日本では耳にしないようなストレートな本音が聞けます。またヨーロッパのバイヤーは、1シーズン目には買いません。日本の場合はセレクトショップが多いのでエクスクルーシビティを取るために1シーズン目から飛びつかざるを得ないところもありますが、ヨーロッパでは1〜3シーズンは様子を見てデザイナーが成長するかどうかを見極めてから買う。日本から来たら初めはがっかりするかも知れないですね。でも、値段なり、サイズなり、1シーズン目で勉強したことを反映させて、コレクションが良い方向に変わっていくと買ってくれるし、一度買うとその後忠実に関係を続けてくれます。UNDERCOVER (アンダーカバー) もパリで展示会をしない時期があったんですけど、その時も L’ECLAIREUR (レクレルール) は絵型だけでオーダーしてくれました。大好きなブランドだから、と応援してくれた。デザイナーを育てる意識を持った、本当の意味でのバイヤーがいるんです。
Tweet L'ECLAIREUR Shopレクレルール Shop Information エリア: エティエンヌ・マルセル
住所: 10 rue Hérold, 75001, Paris, FR
営業時間: 11:00 - 19:00 (月 - 土)
定休日: 日曜日, 祝日
TEL: +33(0)1-40-41-09-89
HP: http://www.leclaireur.com
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- パリ進出のやり方に関して、どのような方法がありますか。
Hiromi Otsuka | Photography: Yoshiyuki Okuyama
合同展示会に出す、ショールームと契約するなどいろいろなやり方があるので、自分に合ったサイズで少しずつ展開すればいいのではないでしょうか。ただし、プレゼンテーションを行うだけでセールスを疎かにするのは NG。ファッションをビジネスとして捉えて、「見せたら売る」という形で完結しないと意味がありません。
- フランスにおける値付けのシステムや掛け率は日本と異なるのでしょうか。
フランスでは消費税が19.6%と割高で、それに通関税、通関手数料、送料などが計上されることを考えると、売り値は卸値の約3倍になります。安く出したつもりでも日本の値段よりかなり高くなります。
- それでも、良いものは売れるのでしょうか。
良いものから売れていきますね。UNDERCOVER の場合もコレクションのコアになる、作り込んだピースから売れていく。バイヤー達はコレクションテーマを打ち出した、クリエーションの濃い作品にすっと吸い寄せられます。そして気持ちいい位に、最も濃いものから買う。マーケティングのために足された売れそうなシンプルなモノには、あまり目を向けない。今はファストファッションがあり、ファッションが二極化しているので、折角お金を出すのであればブランドのオリジナリティに出したいと思うのではないでしょうか。
- 今シーズン、東京コレクションで面白かった新人ブランドがあれば教えてください。
今シーズンは仕事の都合で少数しか見られなかったのですが、その中で言えば MR.GENTLEMAN (ミスタージェントルマン)。ちょうどパリから知り合いのバイヤーが来ていて、「面白いデザイナーはいない?」と聞かれたので、展示会場である青山の THE CONTEMPORARY FIX (ザ・コンテンポラリー・フィックス) に案内しました。MR.GENTLEMAN は海外に持っていってもそんなに高くない価格帯で、デザイン性、クオリティと併せてバランスがいいと思っていたのですが、バイヤーは「まさに欲しいタイプのブランドだ」といって、すごく気に入っていました。
- 大塚さんご自身の着こなし、またパリのトレンドについて教えてください。
私自身はメンズのアイテムを着用することが多く、今日着ているジャケットも夫 (スタイリスト/ファッションディレクター・馬場圭介氏) のブランド GB のメンズジャケット。前出の MR.GENTLEMAN の展示会でもメンズのコートを購入しました。彼らはベーシックで少しヒネリのあるデザインが得意なのですが、そのコートはレディースのオーバーサイズ気味のドロップショルダーを、メンズにうまく転用した面白いシルエット。セールスの男性が着ていて良いなと思ったんですけど、私も買っちゃいました(笑)。最近パリでは、NIKE × UNDERCOVER によるランニングコレクション GYAKUSOU (ギャクソウ) を着ている人をよく見かけるようになりました。ナイトシーンでは最近カクテルバーがどんどん増えて流行っていますね。
Michèle Montagne (UNDERCOVER International PR) | Hiromi Otsuka | Christine Mazza (UNDERCOVER International Sales)
Photography: Taro Mizutani
2/2ページ: 大塚博美さんがお気に入りのパリのスポットを紹介。ご自宅も公開!
Hiromi Otsuka
- パリのお気に入りのスポットを教えてください。
1. SHINE (シャイン)
少しロックなテイストが入った、パリらしいセレクトショップ。ACNE (アクネ)、Alexander Wang (アレキサンダー ワン)、CARVEN (カルヴェン)、KENZO (ケンゾー)、OPENING CEREMONY (オープニング セレモニー) など旬のブランドの中でも、手頃な価格帯で普段使いできる服やアクセサリーがセレクトされてます。つい衝動買いしてしまうショップです。
住所: 15 Rue de Poitou, 75003, Paris
Tel: 01 48 05 80 10
Tweet SHINE Shopシャイン Shop Information エリア: マレ
住所: 15 Rue de Poitou, 75003, Paris, FR
営業時間: 11:00 - 19:30 (Mon - Sat) / 13:00 - 19:00 (Sun)
定休日: 祝日
TEL: +33(0)1-48-05-80-10
HP: http://www.shineparis.com
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2. SERGE LUTENS (セルジュ ルタンス)
モロッコをベースとするセルジュ ルタンスのエキゾティックでミステリアスな香りが大好きです。ここでしか入手できない釣鐘型のクラシカルなボトルが美しくて集めてしまいます。日本の知り合いにもファンが多くて、お土産に頼まれることも。
住所: 25 Rue de Vallois, 75001, Paris
Tel: 01 49 27 09 09
3. ANAHI (アナイ)
北マレにあるスペイン&アルゼンチン料理のレストラン。アルゼンチンのベビービーフのステーキで有名ですが、大型海老とオクラのプレートも美味しい。でも味よりも何よりもスペイン人の名物マダムカルミナに会うために通う店。
住所: 49 Rue Volta, 75003, Paris
Tel: 01 48 87 88 24
ANAHI
4. クリニャンクールの蚤の市 (マルシェ・ベルネゾン、マルシェ・ポールベールなど)
平均して2週間に一度くらいは通っています。商品が雑然と、かつセンスよく並べられていて、眺めながらひとりでぶらぶらと散歩するのが好きなのですが、昔から変わらないようでいて、実はインテリアのトレンドに合わせて敏感に変わって行きます。自宅の家具もほとんどがここで出会ったもの。
The flea market of Clignancourt
The flea market of Clignancourt
Hiromi Otsuka's house
Hiromi Otsuka's house
(第1回/全2回) 【インタビュー】大塚博美 – パリのモード界と東京ブランドを繋ぐ、ファッション・コーディネーター
Hiromi Otsuka | Photography: Yoshiyuki Okuyama
大塚博美 (おおつか・ひろみ)
在仏26年。フリーランスのファッションコンサルティング、コーディネーター、キャスティングとして活動中。パリで行われるファッションショー、展示会、イベント等で日本の才能溢れるクリエーターの海外進出をサポートするパリ母。世界各地での撮影では日本人フォトグラファーのサポートを始めとし、海外フォトグラファーとの撮影もアレンジするひとりプロダクション。
HP
URL: http://www.hiromiotsuka.com
Blog
URL: http://fatale.honeyee.com/blog/hotsuka