初日の好スタートが一転予選落ちを喫した石川 ここからどう立て直す?(撮影:福田文平)

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 ファーマーズインシュアランス・オープンで今季2戦目を迎えた石川遼は、またしても予選落ち。だが、層が厚くハイレベルな米ツアーで続けざまに予選落ちすることは、さほど珍しくない。それゆえ、正式メンバー1年生の石川が2週連続予選落ちしたという結果を必要以上に取り沙汰する必要はない。
遼、「ひどいゴルフ」大乱調“79”で2週連続予選落ち
 だが、問題は「落ち方」だ。初日68で20位発進しながら2日目は一転して79と崩れた。その発端はいろいろあった。雨で重くなった芝や空気。感触や抵抗が様変わりしてしまったラフやグリーン。天候によって変貌したコースに対応できず、1番、4番と続けざまにボギーを叩いた。とはいえ、5番のパーセーブは流れを変える好機になりえた。前半を終えた段階で予選通過の可能性は十分にあったはずなのだ。
 しかし、後半はずるずる崩れ、挽回の意欲も集中力も失い、「ひどいゴルフだった」と自虐的な言葉を吐く無残な落ち方だった。
 ノンメンバー時代なら「いい経験」「収穫あり」でも良かった。が、正式メンバーになり、来季シード権を目指す以上は、決勝に進まなければ意味がない。賞金はゼロ。フェデックスカップポイントもゼロ。経費と労力と虚しさだけを「出費」したに過ぎない。
 ぎりぎりでも予選さえ通過していれば、たとえ最下位でもフェデックスカップポイントは1ポイント入る。いや、最下位タイが数人いたら0.01ポイントなんてこともあるが、それだって、ベター・ザン・ナッシングだ。
 今季からシード獲得基準はフェデックスカップポイントに変わった。シーズンエンドに0.01ポイントで泣くことになったとき、「ひどいゴルフ」で予選落ちした日を後悔しても、後悔し切れない。だが、決勝進出さえすれば、必ず何かが得られる。石川はその意味をもっと噛み締め、苦しくても心をマネジメントし、1打1打にしがみつくべきだった。
 予選で石川と同組だったジェイソン・デイは初日に苦しみ、予選落ちの危機にあった。が、2日目にどうにか持ち直し、カットラインすれすれで予選を通過。最終ラウンドで66をマークし、終わってみれば9位へ浮上してトップ10入りした。
 通算75勝目を挙げたタイガー・ウッズの何が一番すごかったのか?そりゃあ世界のタイガーゆえ、技量レベルは限りなく高く、勝ち方を熟知していることは言うまでもない。だが、タイガーとて生身の人間だ。心が揺れることもあり、ショットやパットが乱れることもある。だからこそタイガーは、あらゆる面のマネジメントに努めているのだ。
 前週は欧州ツアーで思わぬ予選落ちを喫したが、自宅に戻って「素晴らしい練習ができた」という好感触と自信を抱き、トーリーパインズにやってきた。そこには筋道の立ったスケジュールのマネジメントがあった。
 初日は石川と並ぶ20位発進だったが、2日目はパー5でスコアを伸ばすゲームプランを遂行し、単独首位に立った。そこには緻密なゲームマネジメントが見て取れた。
 大差で圧勝と思われた最終ラウンドでは終盤の4ホールで4打を落とす波乱があり、それはスローな進行に「忍耐と集中力を失った」からだと振り返った。崩れかけたとき、タイガーの笑顔が消え、厳しい表情になった。目を閉じ、集中力を取り戻そうと必死だった。そして72ホール目を迎えると、きっちりパーで収めて優勝。そこには優れた心のマネジメントが見て取れた。
 タイガーの勝ち方。石川の落ち方。キャリア、年齢、技術等々、2人の間に差がありすぎるのは当たり前。けれど、誰にとっても心のマネジメントの重要性が限りなく高いことに変わりはない。そこを謙虚に真摯に受け止めなければ、優勝どころか決勝進出さえ、遠のいていく。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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