『12月31日だけでできるおせち』太田静栄 (著)/エイ出版社

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大掃除、年賀状、帰省の準備など何かと忙しい時期になってきた。皆さんはお正月を迎える用意は順調に進んでいるだろうか?

さて、お正月料理といえばお雑煮とおせちが代表的だ。お雑煮は地域や家庭の味があるので楽しみにしている方は多いと思うが、おせちはどうだろう。

最近ではデパートやスーパー、インターネットでのお取り寄せなどを使って購入する家庭が増えていると聞く。実際、社内のスタッフ10人に聞いてみたところ、おせちを食べる人は8人(栗きんとんやなますのみなども含む)で、その中で購入しているのは3人、手作りで一部購入しているのは3人、手作りしているのは2人。ちゃんと手作りする家庭は2割という結果だった。

そんな中、あえて『12月31日だけでできるおせち』という料理本を出版した、エイ出版の担当編集の方にいろいろとお話を伺ってみた。

「出版社各社がそろって年末におせちの本を出すといった時代はもうかなり昔のことですが、一方で、年末になるとデパートやコンビニエンスストアで2段重や3段重のおせちの予約注文が盛んに行われているのを見て、少なくとも正月におせちを食べるという習慣は深く根づいているということを実感していました」

そうなのだ。先ほどの社内アンケートの結果で、購入・手作りに関わらず半数以上がおせちを食べると知って正直驚いていた。もっと少ないと思い込んでいたからだ。聞くと、おせちはお正月の風物詩なので、ないとさみしいという意見もあった。

おせちが生まれた時代と違って、今では食べたいものがすぐに手に入る時代である。冷たくてあまり美味しくないという声もあったが、それでもお正月らしさを演出するために、おせちは必要なアイテムなのかもしれない。

おせちを食べる習慣はなくならない。それなら、手作りする動機づけを本で工夫すればよいのではと担当編集の方は考えたそうだ。

「核家族化などで、おばあさんやお母さんに教わるといった環境面でのフォローがなくても、無理なく1日でおせちが作れるように工夫しました。具体的には、調理器具はごく一般の家庭にある二口コンロ、魚焼きグリル、オーブンに限定。これらを使って効率よく1日17品が作れるように手順を示したタイムスケジュール表をつけました。また、カバーの袖には、材料を買いに行く際に切り離して使える買い物リストをつけました」

本書を手にとって、これならおせちを作れそうと思ったポイントはこのタイムスケジュール。要領が悪い私でも同時進行でいくつかの品を作ることができそうな気がした。

「本を作る中で実感したのは、おせちには家庭料理のエッセンスがすべて含まれているということでした。一の重には、三つ肴や口取りといわれる前菜が詰められ、二の重には焼きものと酢のもの、三の重には煮ものが盛られ、3段重の中に家庭料理のすべての調理法が網羅されています。そのうえ、数の子には子孫繁栄、田作りには五穀豊穣の願いが込められているなど、日本人の食材や料理に対する思いや考え方が凝縮されています」

だからこそ、日本人の伝統食としてのおせちの大切さを伝えたいと編集担当の方は語ってくれた。

私はあまりおせちを食べたことがないので、もちろん作ったこともない。だから密かに手作りおせちに憧れていている。それはあたたかい家庭の象徴のような気がしているからかもしれない。いつか美味しいおせちを作れるようになりたいものだ。

「本書は1日に17品、3段重分のおせち料理が作れるようにまとめていますが、無理をせず、好みのものをチョイスして作っていただいても結構です。たくさん作ったら、身のまわりの方への差し入れや持ち寄りをするなど、思い思いの楽しみ方で作ってください」

年末年始は遠方にいる家族が帰ってきたり、親戚一同が集まったりする数少ない機会だ。新しい年を健康に、豊かに過ごせるようにと願いを込めて、たまには手作りおせちを振舞ってみるのもいいかもしれない。

毎年あわただしく過ぎてしまう大晦日だが、今年は前日までに大掃除を終わらせ、おせち作りのために一日にとっておいてはいかがだろう。
(上村逸美/boox)