静電気で引っ付いています。ってことは、のり跡が残らないわけで!

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最近は、ドアを開けるだけでも気を使う。袖を伸ばし、手を覆った上でノブを触るよう気を使ったり。静電気のことを、私は言っているのです。もう、本当にジャマ! どっかに行ってくれないかしら?

……なんてグチるのは、どうも勇み足だった模様。静電気には、こんな有意義な使い道もあるみたいです。「ユポ・コーポレーション」は、今年の3月より『ユポ静電吸着(R)』の発売を開始している。
これは、いわゆる“静電気を用いて貼り付ける合成紙”。のりとか、全く使いません。

では、その原理について。まずこの合成紙は二枚構造になっており、中に静電気が閉じ込められている。そして表面に貼られた半透明のフィルムを剥がすと、その瞬間に静電気が“バチバチッ!”と発生するらしいのだ。
「印刷業界において、用紙が重なり合う要因となってしまう静電気は“天敵”と見なされています。当社では、印刷工程で発生する静電気を制御する表面技術の開発に長年取り組んできました。その過程で学んだ静電気の特性を逆に応用してみようと考え、考案した製品がこの『ユポ静電吸着(R)』です」(同社・担当者)
平らな面であればどんな場所でも貼ることができ、貼っているうちに紙と壁の間の電荷(プラスとマイナス)が安定してくっ付く仕組みだそう。

では、その吸着性の強度について。
「理論的には電荷(プラスとマイナス)が失くならなければ、半永久的に吸着していてもおかしくないんですよ」(担当者)
同社が行った屋内における実証実験でも、1年以上壁にくっ付いたままという結果が確認されている。貼り付けたものと壁との間に雨水が入ったりしなければ、そのままなのだ。同社では細心の注意を払い、短期間での使用をオススメしているようだけど。

ところで、素朴な疑問を。のりを使わないメリットって、何がある? 別に今まで通りでもいいじゃない……。
「まず、『貼り位置を動かせる』という利点があります」(担当者)
壁に貼って安定するまでに2〜3時間を要するため、貼った直後であればズラして位置を調整することができるようだ。
あと、もう一つ。ポスター等を貼った際、空気が入ってたるみができ、綺麗に貼り付け切れない時ってあるじゃないですか? あんな状態になったとしたら、完全に接着する前に上からこすってエアを逃してあげれば大丈夫。パリっと、美しい仕上がりになります。

そうなると、素朴な疑問があと一つ出てきてしまう。2〜3時間を経て貼り付きが万全となり、そこから剥がしたくなったたらどうすれば良いのか? 貼り付きっ放しというのも、それはそれで困ってしまうのですよ……。
「静電気だけの力で付いていますので、手で力を入れて剥がしたら、のり残りなくペロッと取れます」(担当者)
「吸着力」と「重力」の戦いでは「吸着力」の方が勝ってるのでくっついているが、それ以上の力を物理的に加えれば簡単に剥がすことができる。なるほど、単純な話である。

ところでこの技術、現在はどのような形で活用されているのだろうか?
「特に、海外のファーストフード店でご使用いただいているみたいです」(担当者)
細かく言うと、店内でメニューを掲示するスペースにおいての活用である。例えば定番のメニューは良いが、期間限定メニューの場合は写真を頻繁に取り替える必要があるだろう。その際、「パネルを取り外し、印刷物を入れ、パネルを再度取り付ける」という作業は、イチイチ手間がかかって面倒。なので初めからガラスプレートをそこに用意し、メニュー写真を印刷した『ユポ静電吸着(R)』を吸着させる。こうして、作業を効率化させているようだ。
また前述の「剥がしやすい」という特性を活かし、店舗におけるSALE告知ポップとして活用することもできる。SALE期間はペタペタっと貼り、時期が過ぎたらアッサリ剥がす。跡も残らないので、豪快に貼ってみせても大丈夫。

そんな『ユポ静電吸着(R)』の原料は、ポリプロピレンだそう。ということは、厳密に言うと性質的に「紙」よりも「フィルム」にカテゴライズした方が正しい。よって、コピー機での印刷は推奨されていなかった。
しかし、9月からは“家庭用インクジェットタイプ”の取り扱いもスタート。”静電気活用“は、より身近なものとなったわけだ。

……ってなわけで、今まで煩わしい存在でしかなかった「静電気」活用で“吸着の新境地”が開けていることがわかりました。
そういえば、我が家に貼りたくても貼れないポスターやカレンダーがあったっけ……。賃貸だけに、画鋲の跡を残したくなかった。これは、「静電気」の出番でしょうか? 今回のこの技術は、我々にとってもナイスアイデアです。
(寺西ジャジューカ)