『「意識高い系」という病 〜ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』(ベスト新書)。一見「意識高い系」を揶揄する「あるある本」に見えるが、働き方やそれを支える社会について考えさせられる本だ。

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「もっと意識を高く持ちなさい」
そう言われて育った人も少なくないだろうが、今「意識高い系」は揶揄の対象になっているという。それどころか「病」だという人までいる。

今月『「意識高い系」という病 〜ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』を上梓し、『現代用語の基礎知識 2013』の就活関連ページで「意識の高い学生」というタームの解説をしている人材コンサルタントの常見陽平さんに話を聞いてみた。

「『意識高い系』というのは数年前からネットスラングになっている言葉で、セルフブランディング、人脈作り、ソー活、自分磨きに前のめりになっている若者たちのことをいいます。彼らはやたらと自分を大きく見せたがり、SNS上で活動をアピールするという特徴があります。病気は言い過ぎかも知れませんが、かなり残念な存在ですね」

常見さんによると「意識高い系」の人はやたらと学生団体を立ち上げたり、SNS上のプロフィールを「盛っ」たり、意識の高い発言を繰り返したりするという。しかし、多少前のめりになるのは若者の特権なのでは?

「意識を高く持つこと自体は悪くありません。でも揶揄されるのはいわば『意識高い系(笑)』とでもいうような人たちで、彼らの行動はすべて自己アピールです。『こんな著名人とディスカッションをしたことのあるオレってすごくね?』ということをSNS上で言いたいがために、セミナーで本題とは関係のない自分本位な質問をしてきたりします。結局、就活のときにアピールする材料を集めるためだけにやっていたりするので、エゴのために平気で人のことを利用するんです」

常見さん自身も過去にそういう学生の「実績」作りのために利用され、嫌な思いをしてきたことがあるという。

では、学生に限らずどうすれば残念な(笑)に陥らなくて済むのだろうか。

「今の社会先行きが不透明で、将来の雇用や生活に対する不安が強い上に、ソーシャルメディア上で過剰に情報が流通しているので強迫観念から頑張り方を間違っちゃう人がでてくるんです。でも自分磨きや異業種交流会をいくら頑張ってもいざという時には全く役に立ちません。僕自身、体調を崩したことがあるんですけど、その時助けてくれたのは大親友や家族だけでした」

「『意識高い系(笑)』の人たちは、『世の中を変える』という風に大きなことを言いがちですが、もう少し地に足をつけて物ごとを考えた方がいいと思います。自分の周りの人を大切にして、地味でも目の前にある仕事をこなすスキルを確実につけていくというように」

地に足をつけるようにするにはどうすればいいのでしょうか?

「世の中全体のことや社会背景をきちんと理解することが大切ですよね。そのためには歴史や先人から学ぶことは大切です。また世の中を数字やデータでとらえることも必要です。そういう事情をきちんと理解しないで何かと『欧米ではこうだ』と言いたがるのはちゃんちゃらおかしいですよ」

「大上段に構えて『社会を変える』といっても変わらないんです。社会というのはみんなの総体ですから。それよりもきちんと社会や自分のお置かれている状況を理解した上で行動を起こすことが大事です。『ネット選挙の導入が必要だ』とSNS上で論を展開するヒマがあるなら、導入のために一番動いてくれそうな政治家を探してその人に投票するという行動レベルの話が大切なんです」

常見さんが『「意識高い系」という病』を執筆した背景には『意識高い系』に惑わされる人が出ていることを感じていたからだという。

「世の中の大部分の人は地道に自分の仕事をしている人です。でもSNSで『意識高い』発言を垂れ流しているような人がエライとするような風潮があり、自分磨きをしていかなければいけないという強迫観念にかられる社会はおかしいと思うんです。地に足のついた人が評価され、自分の仕事に誇りが持てる社会になればいいなと心から思っています」同書は挑発的なタイトルや前半の攻撃的な文章とは裏腹に、働くことをどう考えればいいかということを考えさせてくれる丁寧な作りになっている。キャリアや働き方に対して迷っているビジネスパーソンには是非一読して欲しい。
(鶴賀太郎)