消費税増税が国会で議論されるなか、「今、増税すると国家が破綻してしまう」と語る江田憲司氏。その数字的根拠を明かす

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「本人たちは“洗脳”されていることを認めない。なぜならそれがマインドコントロールだから――」。政と官、そのすべてを見てきたみんなの党・江田憲司衆議院議員が明かす。

「政治家もテレビや新聞も、『国の借金は1000兆円で、GDPの2倍』『子供や孫にツケを回していいのか』と財務省に迫られると、善人の日本人は罪悪感にかられ、『増税やむなし』とマインドコントロールされてしまうのです」

―著書『財務省のマインドコントロール』(幻冬舎)が話題です。今、なぜこの本を?

「今、増税すると国家が破綻してしまうからです。私も、将来の増税は否定しません。しかし景気が悪く、大震災と原発事故が追い打ちをかけているときに増税すれば、さらに景気が悪化し税収は逆に下がる。財政再建も社会保障のお金の調達もできません。野田さんと財務省は、消費税を5%上げたら1%が2.7兆円だから、2.7兆×5で13.5兆円税収が上がると単純に言いますが、その神経が信じられない。経済は生き物です。現に1997年、消費税を3%から5%に上げましたが、当時54兆円あった税収が、その後の景気悪化で最近は42兆円。今この日本で増税がいかに非常識か、訴えたかったんです」

―それにしても、なぜ政治家は財務省にそんなに弱いのでしょう。

「まず、予算の査定権です。政治家は自分の選挙区に『道路を』『新幹線を』と、わざわざ財務省に出向いてお願いをします。税の査察権もある。政治家はスネにきずをもっている人が多いですからね」

―官僚はどんな手口を使って政治家を操るのでしょう。

「見えない落とし穴を掘り、それに知らないうちに政治家がハマってしまうのです。例えば、ペーパーに自分たちのやりたいことをにおわせる文言を潜らせ、総理や大臣に記者会見でしゃべらせます。私が橋本内閣の首相秘書官として、大蔵省から金融行政を分離しようとしていたとき、反対していた大蔵省出身の秘書官が、総理の演説原稿に“共生”という文言を入れました。これ自体はたわいのない言葉ですが、首相がこれを口に出すと、今度は『共生』だから、『日本も国際的に協調すべき』となり、次に、だから役所の組織も『国際的な整合性をとるべき』となり、最後には『外国では金融は財政と一体だから分離はダメ』ということになる。そうしたペーパーを段階的に用意し、首相にしゃべらせるのです。こんなことは普通の人ではわかりません」

―自民党も増税を明言したり、小沢一郎氏が無罪になって反増税派が勢いづいたり、消費税増税法案の行方は不透明です。こんなときも財務省は動いている?

「もちろんです。今は財務省のパペット(操り人形)といわれる野田首相を支えていますが、野田さんで増税は無理だとなれば平気で捨てる。仮に小沢さんがまた力を持ち、9月に傀儡(かいらい)政権をつくるなら、小沢さんに取り入って増税法案を通そうとするでしょう。小沢さんも権力のためには財務省とも手を握れる人。それも財務官僚は先刻お見通しです。もちろん野田さん同様、財務省のパペット、自民党の谷垣総裁のところにも財務官僚は足繁く通っています。今度の選挙で自民党が勝ったときのリスクヘッジもしているんです」

●江田憲司(えだ・けんじ)
衆議院議員、みんなの党幹事長。東京大学卒業後、通産省に入省、橋本内閣で総理秘書官を務める。橋本内閣総辞職とともに退官。その後政界へ転身、2002年初当選

(取材・文/梶野佐智子、写真/五十嵐和博)

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