■ 第17節

ウインターブレーク前の最後の試合。14勝1敗1分けで首位を独走するボルシア・ドルトムントがアウェーでアイントラハト・フランクフルトと対戦。フランクフルトは7勝7敗2分け。ギリシャ代表のFWゲカスが得点ランキングトップタイの13ゴールを奪っている。

アウェーのドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ゲッツェ、香川真司、グロスクロイツ。FWバリオス。ポーランド代表のMFブラスチコフスキがスタメンから外れて、ドイツ代表のMFグロスクロイツがスタメン出場。

■ 連勝ストップ

試合はヨーロッパリーグのセビージャ戦から中2日のドルトムントが劣勢。なかなか前線にいいボールが供給できない。MF香川は何度かサイドでいい形でボールを受けて仕掛けるが、シュートチャンスは作れず。前半は0対0で終了する。

後半開始からドルトムントはMFベンダーに代えてMFダ・シルバを投入し、攻撃的な布陣に変更するが、目立った効果は見られず。後半19分にMF香川も見せ場を作ることなく途中交代でピッチを去る。

0対0で進んだ試合は、試合終了間際にドルトムントは右サイドを崩して決定的なシュートチャンスを作るが、フリーのFWバリオスのシュートは枠外。その直後、フランクフルトも決定機を作ると、最後はFWゲカスが決めて先制に成功する。FWゲカスは14ゴール目。

結局、0対1で敗れたドルトムントは連勝がストップ。14勝2敗1分けで前半戦を終えることになった。

■ 7連勝で終了

リーグ戦は7連勝中。アウェーは今シーズン8戦全勝と記録的なシーズンを送っていたドルトムントであったが、前半戦のラストゲームを黒星で、2010年の戦いを終えることになった。ヨーロッパリーグのグループリーグを勝ち抜けなかったことによる心理的なダメージがあったのか、この日のドルトムントのイレブンは元気がなかった。

フランクフルトの出来もそれほど良くはなかったが、最後は好機を確実にものにしたか、そうでないかの差が出てしまった。ビッグチャンスで決められなかったドルトムントのFWバリオスと、しっかり決めたフランクフルトのFWゲカス。エースがきっちりと仕事をしたか、そうでなかったかが、分かれ目となった。

■ クロップの交代策は不発

ドルトムントは後半開始からMFベンダーに代えてMFダ・シルバを投入し、さらに後半19分にMF香川に代えてMFブラスチコフスキを投入し、流れを変えようとしたが、結果的にはうまくいかなかった。

途中出場で短い時間でも結果を残していたMFダ・シルバを投入すると、ボールが持てるのでポゼッション力は上がるが、同じ左利きでMFサヒンと重なってしまう部分がある。これがプラスに働くこともあるが、この日はマイナスに作用し、MFダ・シルバのパスは相手に引っかかる場面が多くて、リズムを作れなかった。

同じようにMF香川を外したこともマイナスに作用した。ここ最近のドルトムントはFWバリオスが怪我明けということもあって不調。MFグロスクロイツも調子が上がって来ず。ということで、ゴール前の迫力が出ていない。その中で、この試合のMF香川はうまくボールを受けてサイドを効果的に使えていたので、出来は悪くなかった。右サイドを活発にするためにMFブラスチコフスキを投入するのは間違いではないが、ミスが多く本来の動きとは、ほど遠かったMFグロスクロイツを下げるのが妥当ではなかったかと思う。

今年は最後の試合とはいえ、MF香川もタフなスケジュールとなっていて、クロップ監督が出来るだけ大事に使っていきたいと考える気持ちも分かるし、ウインターブレーク明けはアジアカップのため少なくとも3試合はMF香川を使うことが出来ないので、MF香川抜きの布陣を試しておきたかったというのも理解できるが、後半19分での交代というのは、もったいなかった。

■ 首位で折り返し

最後の2試合はつまづいたが、14勝2敗1分けという成績は文句なしの結果であり、2位以下を大きく引き離している。ドイツカップ、ヨーロッパリーグと、2つのカップ戦はすでに敗退しているので、リーグ戦に専念できるのも好都合であり、レバークーゼンやバイエルンが追い上げてくることも十分に考えられるが、余裕を持って戦えるだけの貯金を持って後半戦に入ることができる。

日本代表のMF香川は17試合に出場して8ゴールをマーク。カップ戦も含めて、すべて先発出場を果たしており、こちらも文句のつけようのない成績で前半戦を終了した。

ドルトムント自体は非常に若いチームで、成長途上の選手が多いとはいえ、メンバー的には5位だった昨シーズンと大きくは変わってはいない。変わったのは怪我人が出たポジションを除くと、MF香川とMFゲッツェくらいであり、いかにこの二人の存在が大きかったかが分かる。シーズン前は「フィジカル」が問題になるかと思われたが、相手につぶされることも少なく、圧倒的な技術でドイツ中を驚かせた。

■ 考えて走るサッカー

日本人も、ドイツ人も、MF香川がここまで活躍できるとは、誰も思っていなかったと思うが、MF香川がドイツで成功しつつあるというのは、日本サッカーにとっても大きなことである。

2006年のドイツW杯の後、「考えて走るサッカー」というお題目のもとで、小柄な日本人にもあったサッカーを追及する道を進んできた。体格には恵まれていないが、運動量があって、判断力があって、技術のあるMF香川のような選手は「考えて走るサッカー」に打ってつけの理想的な選手であり、ピタリとハマる人材である。

もちろん、プラスアルファとして、J2時代のC大阪で磨き上げた「得点力」を備えるいう点がMF香川の最大の武器になっていることは間違いないが、突然変異で現れたMF中田英寿のようなタイプとは違って、日本のサッカーの中でもモデルにしやすいタイプの選手である。



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