エンスヘデにて。(Photo by Keisuke KOITO/PHOTO KISHIMOTO)

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 日本対オランダが行われたエンスヘデはドイツ国境にほど近い、オランダの東端に位置する小さな町だ。オランダのほぼ中央に位置するアムステルダム国際空港「スキポール」から、電車で2時間強の距離にある。

さっそく車内検札にやってきた係員にチケットを提示すれば、「フットボール!?」と素早い反応が返ってくる。エンスヘデ行きのチケットを持っている日本人とくれば、サッカー観戦者。それ以外の何者でもないと咄嗟に判断する係員に、オランダらしさの一面を垣間見る気がする。

「ヤーパンは強いのか?」の問いかけに「たぶん強くない」と僕。

世界にはサッカー好きがごまんといるが、僕の知る限りオランダ人は、スペインより、英国より、イタリアより上に見える。欧州では一番だと思う。人口わずか1600万。それでいて強豪国の座を長い間維持していられる理由だと思う。

呆れかえりそうなぐらい感心させられたのは、昨年のユーロ2008。オランダはスイスの首都ベルンでグループリーグの試合を行ったが、いずれの試合にもオレンジ色のサポーターは、現地に10万人以上駆けつけた。スタジアムで観戦できるファンはせいぜい2、3万。残りは市庁舎前広場に集まり、そこに設置された巨大なモニタースクリーンで観戦したのだ。広場は、そんな少し変わった人たちで溢れかえっていた。まさにオレンジ色の海と化した壮観さだった。

とはいえ、変に熱くない。暢気というか、緩いというか、笑いの要素さえ含んでいる。旅行気分を何より楽しんでいる。アウェー試合の観戦率は、この国がダントツのナンバーワンだろう。

応援グッズの充実にも目を見張る。種類はとてつもなく豊富だ。ダッチワイフを筆頭に笑えるもののオンパレードだ。

オレンジ色には人を和やかにさせる力があるらしいが、そのチームカラーと国民性は、そうした意味でとても良好な関係にある。

エンスヘデのスタジアムは、電車の駅の目の前にある。改札を抜けて100m歩けば、そこはもうスタンド。駅とスタジアムの近さは、リスボンのジョゼ・アルバラーデと双璧だ。快適に入場できる。スタンドは改装されたばかりでピカピカ。快適性にいっそう拍車がかかる。

日本人であるこちらに対して、敵対心を露わにしてくるファンはゼロ。笑顔で迎えてくれる。スタンドのムードもいたって和やかだ。殺気はほとんど感じられない。ウルトラス風の応援団もいない。弱小日本に、前半を0−0で折り返しても、ブーイングはほんのわずか。ほぼ全員が良いお客さんなのだ。

日本が弱すぎるから?
いや、この日に限った話ではない。

ユーロ2004のチェコ戦で、オランダは2−3で逆転負けを喫したが、ファンは試合後、チェコ人と肩を抱き合い健闘をたたえ合っていた。2002年W杯予選でオランダは、アイルランドに敗れ本大会出場を逃したにもかかわらず、ファンは試合後、ダブリンのパブで、アイルランドのファンと一緒に盛り上がっていた。「頑張れよ!アイルランド、応援しているからな」といって、アイルランド人の肩を抱き、祝福していた。

W杯で優勝できない理由だ。

もっとも、オランダ代表のファンマルバイク監督は、南アW杯の目標を「ベスト4」だと言ったという。「優勝」と言わないところに好感が持てる。過去、2度決勝で敗れているオランダにとって優勝は悲願であるはず。にもかかわらず、現実的な目標を立てている。

オランダと同じように「ベスト4」を目標にしてしまう岡田サンが、自分の小ささを必死に隠そうとしているのが見え見えの岡田サンが、僕にはいつにもまして痛々しく見えるのだった。

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