フランスのユーロ2008グループリーグ敗退から一夜明けた18日、メディアは“戦犯”探しに余念がないが、“A級”として集中攻撃を受けているのはやはりレイモン・ドメネク監督だ。

 主に世代交代の失敗、一貫性を欠いた選手起用などが槍玉に挙げられる中、“敗軍の将”が自ら認めた非は「コミュニケーションのミス」。これは、報道陣に対して説得力を欠いたことと、チーム内部の対立を統御できなかったことの両方が含まれると考えられる。

 チーム内部については、オランダに歴史的な大敗を喫した後、“新世代”と“旧世代”の間に深刻な亀裂が生じていたことがさかんに取り上げられていた。一方、外部に対しては、記者会見でしばしば報道陣からの質問に対して“煙に巻く”態度で応じてきたドメネク監督。試合後は、中継したM6局のインタビューに一転して穏やかな態度で応じ、視聴者の落胆を和らげようと努めた様子がうかがえたが、これがフランス代表サポーターの神経を逆撫でする結果となった。

 敗戦直後の監督インタビューとしては想像しがたいことだが、ドメネク監督はカメラを通じて、交際相手にプロポーズするという行為に出たのだった。監督の交際相手とは、このインタビューを伝えたM6局のサッカー番組で司会を務めるエステル・ドニ。すでに交際して長く、2人の子供もいる公認の仲だが、籍は入れていない。

 インタビュワーは、監督に引責辞任の意思があるかを訊ねるために「今後の計画は?」と質問したのだが、ドメネク流のユーモアか、あるいは視聴者へのサービスのつもりだったのか、「計画はたったひとつ。エステルと結婚すること。きょうがプロポーズの日だ。こういうときは、みんな誰かを必要としている。私には彼女が必要だ」と答えをはぐらかして“ノロケ”て見せた。

 これを報じたレキップ紙のサイトには、ユーザーから「とっとと新婚旅行に行ってくれ。そして二度と帰ってくるな」といったドメネク監督を辛辣に批判するコメントが、数十分の間におよそ200近く寄せられた。

 あとでレキップ紙にこの求婚の真意をたずねられたドメネク監督は、「暗い気分の夜には、明るい光が必要。誰かに愛していると伝えることは、いいことだ」と答えているが、同紙は「残念な公私混同、状況にそぐわない発言」と嘆いている。

 ドメネク監督は「自分が決めることではない」と辞任を否定したが、9月からはじまるW杯予選に向けてチームを再建するために更迭は不可避、との見方が大勢を占める。監督の去就は、7月3日のフランス・サッカー連盟の理事会で結論が出る見通し。後任には、98年W杯、ユーロ2000を連覇したときの主将で、前ユベントス監督のディディエ・デシャン氏を推す声が圧倒的に多い。